【マイラーズC】まさかの乱ペースも順当な結果 安田記念でも狙いたくなる馬は

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よもやの乱ペース

阪神開催はこれで11週目。芝のレース数を抑えているとはいえ、マイラーズCの勝ち時計は1分31秒4。ソダシのレコードに0.3差だった。馬場管理の凄みすら感じる頑健な馬場だ。ソダシの記録は総合力の賜物だが、マイラーズCの記録は前半のハイペースが影響したもの、ここは忘れないでおきたい。

最内枠からブリンカー着用のベステンダンクが発馬を決め、すんなりハナへ。番手にボンセルヴィーソがつけて、隊列は決まったかと思ったところに、発馬で先行勢より遅れた外枠のフォックスクリークが強引にハナを主張した。藤岡佑介騎手は激しく手綱を動かし、なにがなんでもという構え。前走春興Sを逃げ切り、ハナに行けという指示が出ていたのか。騎乗の意図に疑問が残る。

一旦ハナに行ったベステンダンクも意地になって引かず、マイル戦にもかかわらず、序盤は両者ともに手綱をしごきっぱなし。前半600ｍ12.5-10.2-10.6で33.3。もはやスプリント戦レベルの猛ペース。前後半800ｍ44.5-46.9、2.4も速い前傾ラップは予想外の展開だった。

フォックスクリークを強引に退けたベステンダンクは後続をひたすら離し、そのリードをどこまで保てるかという捨て身の戦法。好位勢はひとたまりもない。15着に沈んだベステンダンク、14着フォックスクリーク、どちらも相手関係次第で今回とは正反対のペースで逃げる可能性も考えておきたい。12着ボンセルヴィーソも今回はリズムを乱された。ハイペース耐性もあり、こちらも巻き返しはある。

ケイデンスコールは安田記念で買いか

勝ったケイデンスコールは、岩田康誠騎手が前日に騎乗停止になり、乗り替わった古川吉洋騎手が冷静に乗った。京都金杯、中山記念とインにこだわったレースで好走、ここでも3枠を利してインに潜り、折り合いをつけ、脚を溜めようとしたが、前が相当速くなるとみるや、縦長になると読み、外からでも届くと判断、正攻法に切りかえた。

これまで左回り【3-2-0-8】、右回り【0-1-0-2】と徹底的に左回りで使われてきたサウスポーが、右回りの中山記念2着に続き、重賞V。本格化のサインといっていい。左回りに戻る安田記念は楽しみだが、マイラーズCはマイルGⅠを展望できるような馬は不在、実績最上位のケイデンスコールが勝ったのは順当な結果。安田記念は人気次第といったところか。

2着はアルジャンナ。やはりこのコースはディープインパクト産駒が走る。道中はケイデンスコールの背後のイン。早めに外に行ったケイデンスコールと対照的に内にいたことで、最後の直線でケイデンスコールに外をブロックされた。内で前が壁になり、一旦追い出しを待たされた。その分、末脚の迫力は勝ち馬もしのぐものだったが、ゴール前でケイデンスコールとエアロロノアの間に入り、狭くなってしまった。悔やまれるレース内容で、ケイデンスコールとの差はないに等しい。

3着は9番人気の伏兵カイザーミノル。ハイペースを4番手追走、先行勢で唯一残ったから価値はある。今年に入って1400、1200ｍと距離を詰めたことで、自身が持っていたハイペース耐性が開花したか。今回の競馬で目標とする形が定まったのではないか。

いつも買っておきたいダイワキャグニー

4着11番人気ダイワキャグニーは、あわや3着という場面もあった。7歳にして初の阪神出走、得意とは言えない右回りで、このハイペースをカイザーミノルと同位置で追走。頭がさがる。昨年はエプソムC9番人気1着、天皇賞（秋）10番人気6着。ベテランになっても人気以上に走るシーンの多い馬。いつ激走するかわからないので、つねに馬券のどこかに忍ばせておきたい。

5着は1番人気エアロロノア。昇級初戦でGⅡ1番人気はいくらなんでも荷が重かった。グレード制が導入された86年以降、マイラーズCで前走条件戦の馬が1番人気になったのはエアロロノアが初。それだけメンバーレベルが低かったということだ。レースは10番手追走から外目をスムーズに回る正攻法。5着は自分の力を出せた結果。昇級初戦でGⅡ5着ならば、悲観することはない。次走もマイル重賞で狙っていい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』（中央競馬ピーアール・センター）にて記事を執筆。

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