【皐月賞】1、2着は日本ダービーの未来予想図か 完勝エフフォーリアが2冠に王手

勝木淳

2021年皐月賞のレース結果ⒸSPAIA

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レースを左右したダノンザキッド

日本ダービーで皐月賞組は【8-7-5-68】(過去10年)。皐月賞での着順別成績をみると、1着【3-2-1-4】をはじめ、5着以内が【7-6-2-28】。皐月賞好走はすなわち日本ダービーへの登竜門。皐月賞の予想は「皐月賞であれば」という馬ではなく、日本ダービーまで展望できる馬を考える、これが鉄則だ。そう考えれば、2番人気1着エフフォーリアは、スケール感という意味では合格ラインにあった。共同通信杯の回顧でかなり高評価を与えてしまい、言い過ぎてしまったかもしれないと反省したわけだが、ひとまず皐月賞を勝ってくれてよかった。

そもそもこの世代、弥生賞ディープインパクト記念(以下、弥生賞)までは群雄割拠ではなかった。サートゥルナーリア、コントレイルと似た道程を歩むダノンザキッドが、先輩2頭と同じ道をたどるものと思われていたからだ。ぶっつけではなく、トライアルに出走、それも3着に敗れ、一気に混戦になった。その間に登場したエフフォーリアが勝った共同通信杯は、勝ち時計、最後の600mタイムともに秀逸、負かした馬たちが次走で重賞を勝ったことでその評価は上昇。それでも最終的には1番人気はダノンザキッドだった。この世代の中心はまだこの馬ということか。

レースを左右したのもダノンザキッドだった。田辺騎手らしくスローに落とそうと、しれっとハナを主張したタイトルホルダー。その内からワールドリバイバルが先頭を奪い、1コーナー。ダノンザキッドは外目で折り合えずにコーナーを迎えた。これは弥生賞で残した宿題だった。12.1-11.7-12.5-11.9-12.1、前半1000m通過1分0秒3はタイトルホルダーが弥生賞で作った1分2秒6より厳しく、折り合いが難しいダノンザキッドには幸いした。

ところが、3コーナー手前から逃げたワールドリバイバルがペースを上げられず、タイトルホルダーがそれを利用して動き、福永騎手のレッドベルオーブがさらに動いた。外からタイトルホルダーの直後につけたことで、ダノンザキッドの進路を塞ぐ形になった。ダノンザキッドは包まれることを嫌い、外にいたアサマノイタズラと接触しながらも進路を作りにいった。ここで馬にスイッチが入ってしまった。弥生賞で仕掛けがやや遅れ、タイトルホルダーの逃げ切りを許した経験から仕掛けざるを得なかった。外のアサマノイタズラも呼応、結果としてレースを早めに動かした。

ラップをみると、残り1000m標識通過後から3コーナーにかけて11.4-11.9。力のいる馬場でこのラップを刻み、コーナーも外からまくる形では厳しかった。ダノンザキッド15着、アサマノイタズラ16着。そう考えると、真っ先に番手からレースを動かしたタイトルホルダーの2着は特筆もの。スタミナや高次元での持続力を証明しており、弥生賞勝ちをフロック視された8番人気という評価は、日本ダービーでは大きく改めなければいけない。

父エピファネイア、父の父シンボリクリスエス、母の父ハーツクライ

ダノンザキッドら外の攻防に一切動じなかったエフフォーリアの横山武史騎手、本当に5年目の若武者なのか。

ダノンザキッドを意識しつつ、先行態勢をとり、インコースに潜んだ。包まれて動けないという不安はなかっただろうか。実際、進路がなく、仕掛けを待たされる場面もあったが、必ずインが開くというどこか確信めいたものすら感じる。無駄のないコーナーリングでガラ空きのインに飛び込んで、一気に抜け出した。無駄なことを一切しないエフフォーリアの操縦性を信じ切った騎乗だった。距離延長で折り合いを欠く可能性など微塵も感じず、タイトルホルダーにつけた3馬身は決定的な差ではないか。

父エピファネイアは春2冠ともに2着。その父シンボリクリスエスは日本ダービー2着。初年度から牝馬3冠馬デアリングタクトが出たように、産駒はクラシックに強い。これはエピファネイアの母シーザリオの影響も大きい。

シーザリオの父は、横山武史騎手が生まれた98年の日本ダービー馬スペシャルウィーク。父・典弘騎手が皐月賞を勝ったセイウンスカイのライバルだ。母シーザリオも05年オークスをとてつもない瞬発力で制した。エフフォーリアの母の父ハーツクライは、04年横山典弘騎手が乗って日本ダービー2着。これ以上ないほどクラシック向きの血統であると同時に、日本ダービー2着の血でもある。時代は移り、血を重ね、一族の無念を晴らすときがきた。

3着ステラヴェローチェ、4着アドマイヤハダル、5着ヨーホーレイクまでが日本ダービーの優先出走権を獲得したが、これらはダノンザキッドの仕掛けに付き合わず、流れが向いた組でもある。皐月賞の1、2着が日本ダービーで再びというシーンまで考えたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。

2021年皐月賞のレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA


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