【皐月賞】稀に見る混戦もエフフォーリアは崩れない 東大HCが中山芝2000mを徹底検証

東大ホースメンクラブ

中山芝2000コースデータ,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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コース紹介

今週は中山芝2000mを舞台に牡馬クラシックの初戦、GⅠ・皐月賞が行われる。出世レースの共同通信杯を快勝したエフフォーリア、同コースのホープフルSを制したダノンザキッドが本命格だが、すみれSで能力の片鱗を見せたディープモンスター、スプリングS覇者ヴィクティファルスなども戴冠を狙える位置にある。確固たる主役不在の混戦ムード、予想しがいのある難易度の高いレースとなった。

2000mという王道の距離設定らしく、当該コースが舞台の重賞は中山では最多の6レース。グレード順に、GⅠは皐月賞と暮れの2歳中距離王決定戦・ホープフルS、GⅡは皐月賞トライアルの弥生賞ディープインパクト記念、GⅢは正月の伝統レース・中山金杯、その翌週に行われる3歳限定戦で、名種牡馬キングカメハメハが現役唯一の敗戦を喫した京成杯、秋華賞トライアルの紫苑Sが行われる。このコースがどのような特徴を持つのか、データで分析していく(使用するデータは2016年4月16日〜2021年4月11日)。

まずはコース形態。4コーナーの終わりに設定された地点からスタート、最初のコーナーまで400m程度続く直線で、1度目の登坂。その後2コーナー前まで上り、向正面の平坦な直線を走る。3・4コーナーのきついカーブを下ると310mの直線(直線距離は中央4場で最短)。2度目の急坂の先に栄光のゴールが待ち受ける。

好走に必要な「皐月賞ポジション」

中山芝2000m・過去5年の枠別成績ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の枠別成績>
1枠【24-28-41-261】勝率6.8%/連対率14.7%/複勝率26.3%
2枠【21-26-26-297】勝率5.7%/連対率12.7%/複勝率19.7%
3枠【23-24-26-309】勝率6.0%/連対率12.3%/複勝率19.1%
4枠【32-28-31-310】勝率8.0%/連対率15.0%/複勝率22.7%
5枠【37-31-29-321】勝率8.9%/連対率16.3%/複勝率23.2%
6枠【29-35-22-354】勝率6.6%/連対率14.5%/複勝率19.5%
7枠【26-40-37-388】勝率5.3%/連対率13.4%/複勝率21.0%
8枠【48-28-29-418】勝率9.2%/連対率14.5%/複勝率20.1%

枠別成績は横一線も、複勝率では1枠、勝率では8枠がトップ。馬券的に妙味があるのは8枠で、単勝回収率133%は2位の7枠:95%を大きく引き離している。枠による大きな有利不利はないにも関わらず、同距離で8枠が厳しい東京芝2000mなどのイメージに引きずられ、無意識的に外枠が嫌われているのかもしれない。重賞でも過去5年の30レース中最多の8勝(勝率も枠別1位)。8枠はむしろ買える枠だと納得していただけるだろう。

なお、皐月賞に限定すると好走例が多いのは4枠。過去9年では18年1着エポカドーロ(7番人気)を筆頭に6レースで馬券に絡んでおり、お目当ての馬が青帽を引けば自信を持って買いたいところ。また中山で行われた皐月賞は5枠が勝てないというジンクスがあり、最後に勝ったのは1985年のミホシンザン。二つ前の元号までさかのぼらなければならない。

過去5年の中山芝2000m・脚質別成績ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の脚質別成績>
逃げ【29-24-19-181】勝率11.5%/連対率20.9%/複勝率28.5%
先行【108-111-99-543】勝率12.5%/連対率25.4%/複勝率36.9%
差し【80-79-92-975】勝率6.5%/連対率13.0%/複勝率20.5%
追込【13-15-25-927】勝率1.3%/連対率2.9%/複勝率5.4%

脚質別成績ではセオリー通り先行が有利。近年の皐月賞には「前走先行組がほとんど馬券圏内を埋めてしまう」というダービーポジションならぬ「皐月賞ポジション」という概念が登場している。過去9年の皐月賞では前走初角4番手以内にいた馬が実に8勝。唯一勝てなかったのはリオンディーズが前半5F58.4秒で暴走した年で、ペースが壊れない限りは該当馬が好走している。

勝ち馬の条件をさらに精査していくと、前述の勝ち馬8頭全てが前走重賞で3番人気以内に支持され、皐月賞までに3戦以上走っていた。今年の該当馬はラーゴムただ1頭。オーソクレースやワンダフルタウンといった骨のあるメンバーと戦って着実に経験を積んできたこの馬が波乱を起こす可能性に賭けたい。

ルメール騎手が異次元の数字も……

過去5年の中山芝2000m・種牡馬別成績ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の種牡馬別成績>
ディープインパクト【34-28-28-158】勝率13.7%/連対率25.0%/複勝率36.3%
ハーツクライ【24-20-20-148】勝率11.3%/連対率20.8%/複勝率30.2%
エピファネイア【5-7-5-32】勝率10.2%/連対率24.5%/複勝率34.7%

種牡馬別成績ではディープインパクトが貫禄の数字。今年も複数の産駒が一冠目にエントリーしてきたが、中山の皐月賞で馬券になった9頭のうち8頭が前走重賞で連対していた。今年の該当馬はヨーホーレイクのみ。終わってみれば2週続けて同じ勝負服、競馬は金子真人HDということになるかもしれない。

ハーツクライ産駒は全体成績は上々も、同じく中山の皐月賞で【0-1-0-10】(馬券になったのは去年のサリオスのみ)と苦戦。スワーヴリチャードやワンアンドオンリーなど、のちに格の高いGⅠを勝った馬も馬券外に沈んでおり過信は禁物。

評価を上げたいのは出走頭数の少ないエピファネイア産駒で、3番人気以内ならば【4-4-3-4】複勝率73.3%ととにかく崩れない。このうち前走4着以内に限ると目下出走機会7戦連続馬券圏内なので、上位人気で信頼するならばエフフォーリアだろう。

過去5年の中山芝2000m・騎手別成績ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の騎手別成績>
ルメール【30-13-9-25】勝率39.0%/連対率55.8%/複勝率67.5%
戸崎圭太【16-25-18-78】勝率11.7%/連対率29.9%/複勝率43.1%
田辺裕信【19-21-12-83】勝率14.1%/連対率29.6%/複勝率38.5%
横山武史【5-7-3-44】勝率8.5%/連対率20.3%/複勝率25.4%

騎手別成績ではルメール騎手がただ一人、無人の荒野を行くがごとくの好成績。単勝回収率113%、複勝回収率94%と馬券妙味も兼ね備えている。ただしルメール騎手は過去5年の77鞍が全て5番人気以内(凄い話である)かつ好走例がほとんど2番人気以内に集中しており、アドマイヤハダルが鉄板とは言い切れない。

関東の総大将・戸崎圭太騎手は4割超えの複勝率をマーク。今年に入って同コースでは【2-0-5-3】複勝率70.0%。11番人気のウインイクシードを3着に激走させた中山金杯など、1番人気の騎乗はわずか1回しかない中でこの安定感を誇る。田辺裕信騎手もその戸崎騎手を上回る勝率、4割に迫る複勝率をマークしており、タイトルホルダーも怖い存在となる。

エフフォーリアに騎乗する横山武史騎手は上位2人には遠く及ばないものの、4番人気以内では【4-5-2-7】複勝率61.1%と堅実。素直に信頼したい。

重賞で走る手塚厩舎

過去5年の中山芝2000m・調教師別成績ⒸSPAIA


<中山芝2000m・過去5年の調教師別成績>
手塚貴久【10-6-9-35】勝率16.7%/連対率26.7%/複勝率41.7%
鹿戸雄一【9-5-10-61】勝率10.6%/連対率16.5%/複勝率28.2%
友道康夫【1-4-2-11】勝率5.6%/連対率27.8%/複勝率38.9%

皐月賞に出走馬がいる調教師別成績では手塚貴久調教師が群を抜いている。重賞では【2-5-2-3】複勝率75.0%、単複回収率100%以上と結果が出ており、人気薄であろうアサマノイタズラは100円くらい握っておきたい。

エフフォーリアを管理する鹿戸雄一調教師は美浦所属の騎手に継続で依頼した際が買い時で、該当馬は複勝率4割を超える。複勝回収率112%と馬券的にもありがたい存在で、やはり人気馬で買うならエフフォーリアだろう。

栗東のトレーナーからは友道康夫調教師をピックアップ。出走例は少ないものの4割に迫る複勝率、単勝回収率117%は十分威張れる数字だ。金子真人HD所有馬ではマカヒキで惜しい2着があり、ヨーホーレイクにも追い風が吹いている。

中山芝2000コースデータ,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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