【皐月賞】「キャリア3戦」「前走1着」「共同通信杯組」 データも後押しエフフォーリア

門田光生

皐月賞の前走着順別成績(過去10年)ⒸSPAIA

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今年も3戦3勝馬に注目

皐月は旧暦の5月を指す言葉だが、今年の皐月賞は2021年4月18日に行われる。というか、自分の中では4月以外の皐月賞は記憶にない。気になって調べてみると、設立当初は「横浜農林省賞典4歳呼馬競走」という名前で施行されており、皐月賞という名前で定着したのは1949年から。

この頃は5月に行われていたのだが、1952年から4月に繰り上がり、現在に至っている。もし施行月の変更とともに名称も変わっていれば「卯月賞」となっていたのかもしれない。

そんな皐月賞は、ご存じ牡馬クラシックの第一弾。「速い馬が勝つ」といわれるこのレースだが、データ的にはどのような傾向が出ているのだろうか。今回も過去10年の成績を基にして好走馬を探し出してみたい。

その前に、皐月賞全体の傾向を見てみよう。1番人気が3勝、2017年には9番人気の馬が勝っている。1番人気の勝利数が少ないように思えるが、馬単が万馬券だったのは3回だけ。比較的堅く収まることが多いレースといえるが、9番人気が勝った2017年だけ3連単が100万を超える大波乱。

果たしてこの年が例外なのかどうか。馬単万馬券の3回はここ5年で出たもので、もしかすると傾向が変わりつつあるのかもしれない。

皐月賞出走馬の所属ⒸSPAIA


まずは東西の所属別から。美浦所属馬が4勝、栗東所属馬は6勝。ほぼ互角だが、2着馬は美浦所属が1頭に対して栗東は9頭。出走頭数が栗東の方が多いのもあるが、ここでは栗東所属がやや有利と結論づけたい。

ちなみに美浦所属馬の4勝だが、2013年から2016年に4連勝の固め打ちをしている。2017年から栗東勢のワンツーが3年続いたが、昨年は久しぶりに美浦勢が連対。これが反攻に転じるきっかけになるかどうか、注目である。

皐月賞出走馬の脚質ⒸSPAIA


脚質に関しては面白いデータが出ている。逃げ馬と追い込み馬はともに勝利なし。先行馬と差し馬の争いとなっているのだが、先行馬2勝に対して差し馬が8勝。ただし2着は先行馬の方が多い。

筆者が専門紙に入社した頃は、皐月賞当週に仮柵が外され、インコースに「グリーンベルト」と呼ばれたゾーンが発生。そこを通った先行馬が圧倒的有利だった。新人の記者から見ても、さすがにおかしいと思ったものだが、今は開催が進むと柵を外へ出すことがほとんど。皐月賞は連続開催の最終日に行われることもあり、差し馬有利の傾向となっているのだろう。

また、ここ10年間で1000メートル通過が60秒以上かかったのは2回だけ。「速い馬が勝つ」ことを意識しすぎている…とは思えないが、前がかりなレースになりやすいのも要因の一つかもしれない。

皐月賞出走馬のキャリアⒸSPAIA
皐月賞出走馬の前走クラスⒸSPAIA
皐月賞出走馬の前走ⒸSPAIA


一昨年のサートゥルナーリア、そして昨年のコントレイルは3戦3勝のキャリアで挑んで皐月賞を制した。この2年は特殊だったのかどうか。まずキャリアだが、この10年でキャリア3戦の馬が勝ったのは2回だけ。つまり、上記の2頭だ。ただ、2、3着馬もそれぞれ3頭ずついる。勝率、連対率ともトップという事実からも、キャリア3戦の馬が好走する確率は高いと考えていいだろう。

6連対のキャリア4戦、そして7連対のキャリア5戦も遜色ない数字で、これもプラス要素とみていい。逆にキャリア2戦以内、そしてキャリア8戦以上の馬から連対馬は出ていない。

また、サートゥルナーリア、コントレイルの2頭はともにホープフルSからの参戦だった。GIに昇格したホープフルSから直接参戦したのはこの2頭だけで、やはりこれも勝率100%。それ以外で有力なステップレースは共同通信杯。16頭が出走して4勝。勝率25%は優秀な数字だ。続いてスプリングSの3勝、毎日杯の1勝(今回出走馬なし)と続く。ほかの重賞やオープン、条件組から勝ち馬は出ていない。

皐月賞出走馬の前走着順ⒸSPAIA
皐月賞出走馬の前走人気ⒸSPAIA


前走着順、そして前走人気に関しては顕著なデータが出ている。まず前走着順だが、前走1、2着馬が10勝、2着8回、3着7回。特に前走1着馬は8勝、2着7回とかなり強力。勝った8頭のうち、7頭がコンマ1~2秒差の勝利で、これも満たしていれば心強い。

また、コンマ6秒以上の楽勝から挑んだ馬から連対馬は出ていない。前走人気もよく似た傾向が出ており、前走1、2番人気に支持された馬は8勝、2着が9回。これも前走1番人気に支持された馬は14連対。前走1着と合わせてクリアすれば心強い。

皐月賞出走馬の前走着差ⒸSPAIA
5月生まれの皐月賞出走ⒸSPAIA


前走1着馬が強いのは分かったが、負けている馬に救済データはないのだろうか。着順にかかわらず、コンマ2秒差以内の負けなら過去に4連対しているので、この条件に当てはまれば可能性はありそうだ。ただし、コンマ3秒以上となると連対率が1%台となり、かなり厳しくなってくる。

最後に皐月賞ということで5月生まれの成績を。1頭しかいない6月生まれに次いで少ない出走頭数ながら、勝利数は2位(3勝)、勝率と連対率は堂々のトップだ。フェブラリーSは2月生まれが振るわなかったのと対照的である。

無傷で戴冠、エフフォーリア

データが出そろったところで、皐月賞における好走・凡走パターンをまとめてみる。まず好走パターンはA「理想はキャリア3戦、次いで4~5戦」B「ホープフルSか共同通信杯組」C「前走1着馬、さらに着差がコンマ1~2秒差ならなおよし」D「前走1番人気」、そしてE「5月生まれ」。

マイナスデータはF「逃げ、追い込み馬」G「若葉Sを除くオープン、または条件戦を経由」H「前走コンマ3秒以上の負け」となる。

今回、好データをすべて満たしている馬はいない。それどころか、最も多い馬で3つと、かつてない混戦模様だ。3つクリアして、かつマイナスデータがないのはヴィクティファルス(ACE)と、エフフォーリア(ABC)の2頭だけとなった。

今回、最も強いデータはBで、特にGI昇格後のホープフル経由組は特注。今回、これに該当するのはオーソクレースただ1頭だけだったのだが、早々に回避を表明。オーソクレースはサートゥルナーリアやコントレイルと違ってホープフルSを勝っていなかったので、結果がどうなるか注目していただけに残念である。

ホープフルSほどでなくても、共同通信杯組も好相性。ホープフルS組がいないなら、今年はここがキーになるとみてエフフォーリアを本命に指名したい。もちろん、2年連続で3戦3勝馬が勝っているのも後押しとなる。好データの数で同じヴィクティファルスもキャリア3戦で、3戦3連対。今回、登録馬の中で2頭しかいない「5月生まれ」でもある。これが対抗。

あとは個人的な好みの問題となってくるのだが、相手候補に推したいのはシュヴァリエローズ。◎〇と同じく3つの好データを満たしているが、Hの「前走がコンマ3秒差以上の負け」で引っかかっている。とはいえ、コンマ3秒以上負けていても連対した例は全くないわけではなく、連候補としてなら問題ないだろう。

グラティアスは【0-0-0-4】のキャリア2戦がネック。昨年のクリスタルブラックも新馬→京成杯と連勝して皐月賞に挑んだが、5番人気で16着に沈んでしまった。ただ、クリスタルブラックは京成杯を7番人気で勝ったのに対し、グラティアスは好データにあった1番人気での勝利。このあたりにすがりたい。あと1頭挙げるならアドマイヤハダル。好データはキャリアと前走着順だけだが、マイナスデータがないのには好感が持てる。

人気が予想されるダノンザキッドだが、シュヴァリエローズと同様に前走でコンマ3秒差に負けているのが痛い。しかも、シュヴァリエローズより好データを満たしている数が少ないこともあり、ここでは見送りとする。

◎エフフォーリア
◯ヴィクティファルス
▲シュヴァリエローズ
△グラティアス
×アドマイヤハダル

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
気温が上がってきて花粉が飛びまくっている、らしいです。田舎育ちのせいか、今のところ筆者には全く関係ありませんが、嫁さんは気の毒なくらい苦しんでます。好奇心の有無にかかわらず、こればかりは経験したくありませんね。

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