【皐月賞】今週も無敗馬、新たなスター誕生か エフフォーリアと横山武史騎手にかかる期待とは?
緒方きしん
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今週も"無敗馬"か?
早くも、面白いGⅠが連発している2021年。先週は白毛馬ソダシが桜花賞でレコード勝ちを収めた。阪神JFと同じコースでありながらも全く違う能力が求められた一戦となったが、美しい白い馬体は貫禄すらある勝ちっぷりを披露した。馬名の由来は、サンスクリット語で「純粋、輝き」。まさに輝かしい勝利であった。
さて、今週も引き続きクラシックレース。大阪杯・桜花賞と2週連続で"無敗馬"が勝利しているが、皐月賞にも"無敗馬"が出走を予定している。昨年もデアリングタクト・コントレイルらが"無敗の三冠"を達成したが、今年も様々な想像が膨らむ。3週連続で無敗馬がGⅠを制することになれば、しばらくの間は破られない記録となるだろう。
今年はディープインパクト産駒が苦戦していることもあり、3歳になってから重賞を制したディープ産駒は未参戦。かわりに、オルフェーヴル産駒、ドゥラメンテ産駒、エピファネイア産駒らが参戦し、多彩な血統を楽しむレースとなりそうだ。
ハーツクライは種牡馬としても大器晩成?
昨年、無敗でホープフルSを制覇したダノンザキッドは、弥生賞で3着に敗北。かわりに、2頭の重賞馬が無敗を貫いたまま本番を迎える。
1頭は、共同通信杯勝ち馬エフフォーリア。もう1頭は、京成杯勝ち馬グラティアス。エフフォーリアは母父がハーツクライ、グラティアスは父がハーツクライという血統だ。他にも、スプリングS勝ち馬ヴィクティファルスも父がハーツクライで、さらにダノンザキッドは父の父がハーツクライ。ここにきて俄然、種牡馬ハーツクライの存在感が増している。
ハーツクライは、ご存知の通り、日本国内で唯一ディープインパクトを破った名馬である。そんなハーツクライは、3歳1月にデビューした遅咲きの馬だった。翌月にはきさらぎ賞で3着、さらに3月には若葉Sを勝利。デビューが遅かったものの、なんとかクラシックに間に合わせ、皐月賞に出走するも14着──。ならばと京都新聞杯を勝利して挑んだダービーでは、キングカメハメハの前に2着と惜敗した。1〜5月までの間に6戦。そのタフさも魅力だった。
その年のクラシックに出走した馬たちは、上述のキングカメハメハのほか、ダイワメジャー、スズカマンボ、ブラックタイド、メイショウボーラーと、不思議なほどに種牡馬として活躍した馬が多い。中でも三冠牝馬を輩出したキングカメハメハの勢いは絶大で、ひとつ歳下であるディープインパクトと互角以上の戦いを繰り広げた。ハーツクライも、ジャスタウェイ・リスグラシューらを輩出、その二大巨頭と十分過ぎるほどやり合ってきた名種牡馬であるが、種牡馬リーディングでは2位が最高だ。
しかしディープ亡き今、年齢的な問題から種付け数を制限しつつも、彼の元に名繁殖が集まってきている。遅咲きの血が騒ぐか。もしかすると彼の黄金時代は、まだ先にあるのかもしれない。仮にそうであれば、昨年サリオスが届かなかったクラシックを制して時代の到来を待ちたいところだろう。
トライアル組は苦戦?
時代の変化は、もう一つ。桜花賞は1,2着馬が阪神JFからの直行組だった。3着ファインルージュも1月フェアリーS以来の実戦。桜花賞トライアル組は最先着が7着ストゥーティと、壊滅状態となった。技術の向上などによる参戦過程の変化から「桜花賞はチューリップ賞組から買っておけば……」という時代は終焉を迎えたのだろう。そんな潮流は皐月賞にも例外でなく、昨年、一昨年は年明け初戦のコントレイル、サートゥルナーリアが勝利を収めている。
今年、皐月賞が年明け初戦となるのは、朝日杯FSで3着のレッドベルオーブ。朝日杯FSを制したグレナディアガーズはファルコンSで敗れNHKマイルCへと向かい、2着馬ステラヴェローチェは共同通信杯で5着に敗れている。しかしぶっつけ本番という意味では、レッドベルオーブは流れのきている1頭。桜花賞のように、弥生賞・スプリングS組が苦戦するのであれば十分に出番はある。果たして、レース間隔はどこまで結果に影響を及ぼすのだろうか?
ステラヴェローチェが敗れた共同通信杯では、2着のヴィクティファルスがスプリングSを制覇、3着馬シャフリヤールが毎日杯を制覇。相対的にエフフォーリアの評価も高まっている。逆に言えば、共同通信杯2,3着馬は別路線で出走を果たしているが、エフフォーリア自身はそれ以来の実戦となる。
年明けではあるが、出世レースとして知られる共同通信杯。ここ5年は連続して、共同通信杯の勝ち馬は皐月賞へ直行している。しかも、ディーマジェスティはそのまま皐月賞を制覇。ゴールドシップも、イスラボニータも、共同通信杯→皐月賞と連勝した名馬だ。
皐月賞までの間隔も少し開くレースであり、そういう意味では桜花賞とは違い、皐月賞に関しては「トライアルが絶対ではない」ということは、昔からあったように感じる。フラットな視線で、純粋な実力を比較して良いだろう。また、ダノンキングリー・フサイチホウオーと、無敗で共同通信杯を制した馬は皐月賞で敗れているというジンクスがある。エフフォーリアがそれを克服できるかどうかにも期待がかかる。
騎手にもスター誕生か?
有力馬エフフォーリアの鞍上は、横山武史騎手。1998年生まれ、父はレジェンド横山典弘騎手だ。
さらに、きさらぎ賞2着馬ヨーホーレイクには岩田望来騎手が騎乗。こちらはなんと2000年生まれで、父は岩田康誠騎手だ。他にも、1996年生まれの木幡巧也騎手、1993年生まれの嶋田純次騎手、1992年生まれの菱田裕二騎手と、平成生まれ騎手が多数参戦を予定する。
特に横山武史騎手は今年絶好調。共同通信杯のほか、弥生賞・日経賞を制覇している。さらに桜花賞でもアパパネの仔・アカイトリノムスメに騎乗して4着。新女王2頭が話題をかっさらった次の週は、もしかすると新しいGⅠ騎手の誕生が話題になるかもしれない。少なくとも実力は十分に備わっていて、さらには大舞台にも強そうな印象を受ける。このまま、父に並ぶような名手を目指したい。
種牡馬たちの戦い、臨戦過程の流行り廃り、新興勢力の騎手たちの戦い。今年の皐月賞も、見所十分な一戦になりそうだ。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。レオダーバンの菊花賞をみて競馬の魅力に取り憑かれ、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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