【桜花賞】5戦5勝、一点の曇りなき女王ソダシ その血の強さと逆転を狙える候補とは

勝木淳

2021年桜花賞のレース結果ⒸSPAIA

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かつて「白毛は成功しない」と

往年のアイドルホースたちがアニメやゲームの世界を賑わせるが、リアルな競馬もその流れに応えるようにアイドルホース・白毛のソダシが出現した。ベテランの競馬ファンに芦毛フリークが多いのは、80年代終わりの元祖アイドルホース・オグリキャップの影響だろう。やたらと目立つ芦毛は人を和ませる愛くるしさがある。

ゴールドシップのように年を重ねて白さが増すのは芦毛の特徴だが、白毛は最初から純白で神々しさすらまとう。桜花賞の週に発売されたソダシのぬいぐるみは、競馬場のターフィーショップでまたたく間に売り切れた。入場制限がなければソダシのぬいぐるみは争奪戦になり、さらに盛り上がったにちがいない。5戦5勝、無敗で桜の女王に輝いたソダシのクラシックロードは多くの人を魅了するだろう。

白毛は成功しない。かつて競馬界ではそれが定説だった。1979年日本初の白毛として血統登録されたハクタイユー以降、勝利をあげた馬はいなかった。この流れを断ち切ったのがサンデーサイレンスとウェイブウインドの間に生まれたシラユキヒメだ。現役生活で勝利こそあげられなかったが、父クロフネの2番仔ホワイトベッセルがJRA3勝をあげた。その全妹ユキチャンは交流重賞3勝。白毛は走らないという定説を覆した。

シラユキヒメの交配相手をクロフネからキングカメハメハに変更、その2番目に生まれた馬が、白毛に鹿毛のブチ柄をあしらったブチコ。JRA4勝をあげ、繁殖入りしたブチコの最初の相手が母シラユキヒメと好相性だったクロフネ。それが第81代桜の女王・純白のソダシだ。

リアルアイドル馬・ソダシの物語は父、母、母の父、母の母すべてを所有する金子真人氏の愛情にたどり着く。これもまたゲームの世界のような話だ。当時、競馬界にあった白毛は走らないという風潮に負けず、この血統の繁栄を願ったオーナーの祈りがソダシを誕生させたといっていい。

オークスでの逆転候補は

桜花賞当日は超がつくほど高速馬場だった。7R2勝クラスのマイル戦が1分32秒2。前日の阪神牝馬Sと0.2差。桜花賞は極限に近いスピードトラックで迎えた。勝ち時計1分31秒1はグランアレグリアの桜花賞レコードも阪神マイルのコースレコードも大きく更新する快時計。

こういった馬場状態では従来の外枠有利、内枠不利は通用しない。この時計で走って上位に来るには、ロスを消せる内枠がかえって優位になり、外枠はタイムロスが大きすぎた。ソダシは課題のスタートを決め、ハナに行くほどの勢いで好位のイン。絶好のポジションにおさまり、直線に向いて抜群の手応え、進路もクリア、言うことなしの内容だった。スタート直後の12.1を除き、すべて11秒9以下を記録する高速レースだったので最後は少し苦しくなったものの、父クロフネから受け継いだ、好位からスピードの持続力で押し切る競馬でしのいだ。

2着のサトノレイナスは桜花賞では有利な外枠が高速馬場によってアダになってしまった。外を回るロスを極力減らそうと馬群に入れたため、最後の直線で前が壁になり、エリザベスタワーとの間のスペースを抜けるまで待たされてしまった。末脚の破壊力はソダシも上回ったが、結果は及ばず。外枠で好走したのはサトノレイナスしかおらず、この条件でもっとも強い競馬をしたといっていい。こちらは瞬発力と緩急に強い父ディープインパクト。全兄はサトノフラッグ、距離が延び、ゆったりとした流れになれば逆転の目もある。

3着はファインルージュ。内枠からソダシの背後につけ、一発を狙った騎乗だった。高速決着をロスなく立ち回った結果ではあるが、フェアリーS直行組の好走は驚いた。振り返れば、4着アカイトリノムスメ、5着アールドヴィーヴルはともにクイーンC直行。掲示板はトライアル不出走馬が占めた。時代は刻一刻と変化する。

その4、5着は距離が延びるオークスで楽しみが広がる。アカイトリノムスメは関西圏での競馬で入れ込み気味、世代上位馬と初対戦という状況を考えれば上々だろう。ソダシやサトノレイナスには迫力負けしたが、5着以下は離しており、血統通りまだまだクラシック戦線で見せ場はある。アールドヴィーヴルは高速マイル戦に対応できず、遅れて伸びてきた印象。裏を返せば、東京の2400mなら可能性はある。父キングカメハメハ、母の父ディープインパクトはアカイトリノムスメの血統を裏返したようなもの。見限るのは早い。

3番人気18着メイケイエールは、出遅れて前に馬がいる状態になり、以前から指摘された前の馬を追い抜きに行く難しさを見せ、暴走気味。最悪な状況だった。矯正馬具を外し、マジシャン横山典弘に託すという陣営の賭けは裏目に出たものの、そのトライはメイケイエールの未来にとってプラスになるはずだ。桜花賞でこの馬を狙う以上、これまでの戦歴からこうなる可能性も十分予見できた。これはいわば究極のギャンブルだったわけで、結果を受け入れてほしい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。

2021年桜花賞のレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA


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