【桜花賞】折り合い課題も、チューリップ賞の変則ラップが本番に生きるメイケイエールに注目!

高槻とおる

桜花賞の前走レース別成績ⒸSPAIA

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阪神JFは前めのポジションで好走した馬に注目

4月11日の阪神競馬場では、クラシック開幕戦の桜花賞GIが行われる。無敗の2歳女王ソダシの3歳初戦となる桜花賞だが、阪神JFが大接戦だったように、決してこの馬が実力的に抜けているという印象でもない。さまざまな路線から本番に向かってきた馬がいるだけに、どのステップレースのレベルが高かったのか、どの馬が厳しいレースを経験しているのかチェックしていきたいと思う。

まずはソダシが優勝した阪神JFを確認してみよう。

阪神芝1600mの平均ラップ比較 2011~2020ⒸSPAIA


阪神の外回りマイルは、古馬のレースになるとスローの瞬発力勝負が定番。2011年~2020年でクラス別に平均ラップをとると、古馬OPで前半3F35秒4、同2勝クラスでは36秒1となる。先行力のある馬か鋭い決め手を持つ馬でないと、なかなか勝ち切ることができないコースだ。チューリップ賞も古馬のレースに近い傾向といえそうだが、阪神JFや桜花賞は、極端に前半のペースが遅くなることは少ない。

桜花賞ではレッツゴードンキの勝った2015年、グランアレグリアの勝った2019年のようなスローもあるのだが、前半3Fの入りは34秒台後半になることが多く、平均は35秒0。桜花賞が3歳春のレースであることを考えると、2歳にして平均34秒7を刻んでいる阪神JFの流れは、かなり厳しいといっていいのではないか。ここで好走した実績を持つ先行馬は、その経験が後々生きてくるはずだ。

昨年の阪神JFは例年と同様のラップでありながら、上がりも速かったことが特徴。時計の出やすい馬場だったと考えられるが、結果、先行馬も追い込み馬も力を発揮できる馬場コンディションだった。その後、3着ユーバーレーベンがフラワーカップで3着、4着メイケイエールがチューリップ賞で1着、5着ヨカヨカがフィリーズレビューで2着に好走しており、レースのレベルとしても十分。

終い勝負で伸びてきたオパールムーン、ジェラルディーナが年明けのレースを人気で大敗しており、やはり早目に動いて頑張り抜いた馬を評価すべきレースだ。4角4番手からしぶとく勝ち切ったソダシのレースぶりは高く評価できる。阪神JFからのぶっつけで連対したのは、過去10年で2014年2着のレッドリヴェールだけ。ローテーション的な不安はあるが、レース内容からやはり軽視はできない。

トライアルの王道はチューリップ賞

前走レースとして注目の好成績を残しているのがチューリップ賞だ。過去10年で45頭の出走があり【5-7-6-27】で12連対、連対率26.6%の素晴らしい成績。再びラップを比較してみよう。

阪神芝1600mの平均ラップ比較 2011~2020ⒸSPAIA


今年のチューリップ賞も例年通りのスローではあるのだが、非常に気になるのが前半3Fのラップ。この36秒3はとにかく遅いし、メイケイエールが頭を上げて行きたがっていたシーンは印象的だった。その後、急激にラップが上がり、5F通過では例年より速い59秒0。3F通過後はメイケイエールが先頭に立ってペースを上げており、例年12秒台が続く4、5F目でメイケイエールは11秒4~11秒3というとんでもないラップを記録している。

最初の600mが楽すぎたともいえるのだが、前半掛かって、いきなりペースを上げ、それでもラスト3Fで34秒8の脚を使って同着1着。桜花賞が例年並みのペースで折り合いがつくなら、果たしてどんな走りを見せてくれるのだろうか。対照的に、前半で上手く脚を溜め後半はメイケイエールという格好の目標を前に置いてレースができた同1着エリザベスタワー、3着ストゥーティは少々物足りない。

好成績のチューリップ賞組だが、桜花賞3着以内馬の18頭を調べると、チューリップ賞の前走で阪神JFに出走していた馬が9頭(1着3頭、2着4頭、着外2頭)、残る9頭は前走で1着、または重賞で2着に好走していた。エリザベスタワーとストゥーティはこの好走パターンにも当てはまらず、評価は割り引きたい。

フィリーズレビュー組は今年も厳しい

続いてはフィリーズレビュー。10年間でフィリーズレビューからの出走馬は56頭いるのだが、その成績は【1-0-2-53】と冴えない。

阪神芝1400mの平均ラップ比較 2011~2020ⒸSPAIA


過去10年の平均ラップを見ても前後半34秒3-35秒7。決して緩い内容のレースをしているわけではなく、内回りの短距離戦らしい前傾ラップになっている。では、どうして不振なのか。これはもう、フィリーズレビュー組の出走成績を1頭ずつ見ていけば一目瞭然で、1200~1400mに適性を持つ短距離馬が多いのだ。

フィリーズレビュー組で2歳時に阪神JFに出走し、掲示板を確保していた馬が過去10年で7頭いるのだが、この7頭から2017年にレーヌミノルが優勝、2016年アットザシーサイド、2012年アイムユアーズが3着に好走している。狙うなら阪神JF5着以内馬ということになりそうで、今年はヨカヨカが当てはまる。だが、距離面で過去の出走メンバー同様に不安は感じさせる。

最後に東京のクイーンCを。長い直線のマイル戦ということで、好走馬の注目度は高くなるが、過去10年では18頭の出走で【0-2-1-15】と優勝馬は出ていない。好走した3頭は2019年3着クロノジェネシス、2012年2着ヴィルシーナ、2011年2着ホエールキャプチャで、3頭ともにクイーンカップの優勝馬。桜花賞では3・4・1番人気の高い支持を受けていた。

この3頭にはもう1つ共通点があり、2歳時に阪神芝の連対実績がある。クロノジェネシスとホエールキャプチャは阪神JF2着、ヴィルシーナはエリカ賞での1着。今年のクイーンC1着馬のアカイトリノムスメには阪神経験がなく、この点はマイナス材料といえそうだ。

ここまでステップレースをチェックしてきたが、変則ラップでチューリップ賞を勝ったメイケイエールの本番での走りに注目している。勝ったとはいえ折り合いの課題を露呈し、本番での評価は厳しいものになりそうだが、あれだけの遅い流れを本番前に経験できたことは大きかったはず。ここで折り合えなければ、今後、マイル以上の距離では厳しくなるだろうが、その分岐点となる桜花賞。能力全開のレースを期待したい。

強敵は阪神JF上位組のソダシとサトノレイナス。阪神経験はないが、クイーンC優勝馬アカイトリノムスメの決め手も侮れない。

ライタープロフィール
高槻とおる
グリーンチャンネルで結果分析、レース分析番組の構成作家を担当していた。現在は経営者取材などライターとして幅広く活躍中。ラップを長年研究しているが、実は馬券はパドック派。

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