【大阪杯】レイパパレ圧勝!在来牝系にディープインパクト、小柄な馬体に宿る近代競馬の底力

勝木淳

2021年大阪杯のレース結果ⒸSPAIA

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壮大なる血の物語

当日午後から降り出した雨は想像以上に強く、同舞台の9R明石特別は前後半1000m1分1秒8-59秒6、二ホンピロスクーロが2分1秒4で逃げ切った。それから75分後の大阪杯は、前後半59秒8-1分1秒8、2分1秒6。前後半が反転するような時計構成にもかかわらず、同じ逃げ切り。レイパパレは恵まれたわけではない。

レース直前、重馬場に変更。馬場は相当に悪く、コントレイルやグランアレグリアの能力を削いだ、それは事実。競馬は自然要因の影響を強く受ける競技。路面は一定に保たれず、条件は平等であっても能力を等しく発揮できない。問われる適性が、距離や路面の状態、ラップ構成で入れ替わる。馬券を成立させるには必要な要素だ。大阪杯は急速に悪化した馬場の内回り2000m、その適性が結果にあらわれた。

レイパパレは422キロの小柄な牝馬。6戦6勝、無敗での古馬GⅠ制覇は、グレード制導入以降、ファインモーション、クリソベリル以来3頭目。無敗三冠馬と最優秀短距離馬を相手に達成した。

その母シェルズレイは日本の在来牝系をつなぐ馬。その母オイスターチケットといえば、父はアニメやゲームで人気のウイニングチケット。その母パワフルレディから父系はマルゼンスキー、ニジンスキーへ。母系はテスコボーイからプリンスリーギフトへとたどる、オールドファンには懐かしいスピード血脈。オイスターチケットの母ナムラピアリスの父系もトウショウボーイ、テスコボーイを経て、プリンスリーギフトにつながる。またその母系をたどると、フロリースカツプへ行きつく。

フロリースカツプは明治40年に小岩井牧場が基礎牝馬として英国から輸入した一頭。日本近代競馬に枝葉を伸ばし、そこからスペシャルウィークやウオッカが誕生した。つまりレイパパレは、伝統ある牝系に日本競馬の歴史を彩った血が入り、その先端部分で、2000年代前半に活躍した母の父クロフネや父ディープインパクトの血が合わさった牝馬。小柄でも他馬が苦しむ泥んこ馬場を力強く走る姿は、在来牝系の底力とクロフネやディープインパクトの血の象徴だった。

川田将雅騎手も他馬の機先を制してハナへ行かせ、4コーナーで後続を引きつけつつも、直線入り口で馬場状態がいい外に持ちだす好プレー。グランアレグリアやコントレイルの脚色を測った、計算し尽くされた選択だった。3着コントレイルにつけた0.9差は、次走以降、また違う条件で縮まるだろうか。楽しみが増えた。

牝馬四強の時代へ

2着は伏兵6番人気のモズベッロ。極悪馬場だった宝塚記念3着に次ぐ、馬場を味方につけた再度の好走だった。宝塚記念を覚えていれば買えた。競馬は記憶のスポーツ、それを実感した。

父ディープブリランテは産駒デビューから3月28日まで通算で芝の重馬場【11-5-6-87】勝率10.1%、複勝率20.2%。良馬場だと【95-89-106-1042】勝率7.1%、複勝率21.8%なので、道悪だと勝率が上昇する雨血統。週末に雨が多い、この春に役立てたいところだ。しかしながら、相手はこの一頭、と的を絞ったときの池添謙一騎手はすばらしい。

3着コントレイル。道悪がマイナスに作用したことは確か。前半は中団の後ろと位置をとれなかった。グランアレグリアを相手と決め、残り800mから早めに同馬に外から並びかけに行った。道悪で早めに脚を使ったため、直線で伸びきれず、レイパパレに迫れなかった。ターゲットにしたグランアレグリアをゴール前で捕らえたあたりは三冠馬として意地を見せた。

とにかく勝たなければならない馬、そして必ずライバルに標的にされる馬。今日のような早めに脚を使わねばならない形はこれからもあるだろう。馬場の不運はあったにせよ、厳しい競馬に対応する余地はまだある。

4着グランアレグリアは最後に苦しくなったか。道中は中団を一頭で追走、ストレスなく、どこからでも動ける態勢をとっていたが、コントレイルのスパートに併せる形でロングスパートを仕掛けた。初の2000m戦だけにもっと待って仕掛けたかっただろうが、それでもレイパパレに並ぶところまでいけたかどうか。切れ味身上のグランアレグリアにとっては難しい競馬になってしまった。正直、この一戦では2000mへの適性は判断しようがない。

5着はサリオス。中距離戦に戻って以前の先行力がよみがえった。枠なりに終始インコースを通り、直線もイン。作戦は悪くなかったが、内側の馬場状態が想像以上にひどかった。陣営も道悪はマイナスとコメントしており、こちらもツキがなかった。

9Rの前後半ラップを反転させたラップで逃げ切りを決めたレイパパレの価値は高く、今後はこの価値を良馬場で改めて証明し、真の女王にのぼりつめてほしい。クロノジェネシス、デアリングタクト、そしてグランアレグリアとレイパパレ。この4頭が雌雄を決する舞台もまたぜひ見てみたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。

2021年大阪杯のレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA


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