【高松宮記念】不利な馬場バイアスを跳ねのけて好走 前哨戦の内容から評価できるのは?

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内不利のバイアス
春の芝スプリント最強馬決定戦・高松宮記念。昨年から芝1200m重賞を2勝以上したのはダノンスマッシュのみという混戦模様であり、昨年の最優秀短距離馬グランアレグリアも不在。まずはステップレースから現状の力関係を把握していきたい。
【シルクロードS】
京都競馬場が改修工事中のため中京芝1200mでの開催。Bコース替わり2日目だったが前週の雨開催の影響により馬場が痛んでおり、特に直線の内目はその影響が大きかった。トラックバイアスは内不利と評価。レースはモズスーパーフレアが引っ張り前後半3F33.7-34.6の前傾0.9秒。ただ、当時は西北西方向からの風により向正面は追い風、直線は向かい風を受ける形。ラップほど先行勢に厳しい流れでは無かっただろう。
2着馬ライトオンキューは1枠2番から内々を追走し、直線も内目から伸びて一旦は先頭に立つ。ゴール前でシヴァージに捉えられはしたが、馬場の悪い内目を走り切っての2着は高く評価できる。勝ち馬と1.5キロの斤量差があったことも考慮すれば、十分に好走可能な力関係だろう。
3着馬ラウダシオンは久々の1200mでも4番手を追走し、高いスピード性能を見せた。ただ、内外の通過位置を考慮するとライトオンキューを上位に見るべきか。
17着馬モズスーパーフレアは前哨戦仕上げで、斤量も実質トップハンデの56.5キロ。負け過ぎではあるが、昨年同様大幅にパフォーマンスを上げてくる可能性は高い。
2歳女王復活

【阪急杯】
馬場は金曜に小雨が降った程度で乾燥しており、含水率は10%を切るほど。Aコース4週目でも綺麗な馬場を保っており、時計の出やすい状態が続いた。レースは最初の200mをロードアクアが引っ張ったが、200~400mはレシステンシアが一気にマクッて先頭に立つ形。
ただ、それでも前半3Fは34.0と阪神芝1400mとしては速くなく、手綱を絞っている馬が多いことからも重賞のペースとしては楽だった。前後半3F34.0-33.8の後傾0.2秒はレシステンシアの強さがあってこそではあるが、2着馬でも前傾0.1秒ならやはり先行馬には楽な前有利の展開であったと見るべきだろう。
1着馬レシステンシアは逃げ馬としては理想的なラップを刻みレコード勝ち。今回は展開にも恵まれたが、後続の脚を削ぐ逃げも得意としている馬だけに、特にケチをつけることなく評価したい勝利であった。ただ、この持ち味がスプリント戦で活きるかは少々疑問符がつくところ。1200mなら道悪の方が勝率は上がるだろう。
2着馬ミッキーブリランテは展開が向いたとはいえ、予想以上のパフォーマンスアップ。不調期は完全に脱したか。G3なら今後も上位争い可能だろう。
4着馬インディチャンプは前哨戦仕上げのうえ、中団から外々を回す競馬で展開が向かず。ただ、超高速ピッチ走法の馬だけに脚の使いどころが非常に難しく、ポジションを取りづらい1400m以下では展開頼みになってしまうか。
5着馬ダノンファンタジーはゲートで落ち着きがなく出遅れて、発馬直後にはヨレてメイケイダイハードと接触。直線でもやや窮屈なところがあり、ラスト1F最速の時計からも不完全燃焼の一戦であった。
内前有利のトラックバイアス
【オーシャンS】
終日稍重での開催となったが、馬場状態は非常に良く、前週同様に内有利のトラックバイアスが続いた。レースはビアンフェがハナを切って前後半3F33.7-34.7の前傾1.0秒ではあったが、前半下り坂の中山芝1200mのG3としては大して速い流れではなく、むしろ前傾1.0秒は過去10年のオーシャンSで2番目に遅い。
ビアンフェと2番手とが2馬身程あいていたこと、内有利の馬場状態が続いていたこと、弱めではあるが直線向かい風方向の風が吹いていたことなどを考慮すると、内前有利と判断するのが妥当だろう。掲示板は「最内~中、逃げ~先行馬」が独占した。
上位馬はすべて回避となったが、外差しの馬の巻き返しには注意が必要。特にアウィルアウェイはハイペースならスプリンターズS同様にチャンスがあるだろう。シヴァージの回避によって滑り込みで出走枠に入ったことで、楽しみな1頭だ。
無冠の大器に期待
シルクロードSでは負けて強しの競馬を見せたライトオンキュー。リズム重視の横山典弘騎手への乗り替わりも合いそうで、道悪ならさらに期待値も上がる。短距離王者に輝いても不思議ないポテンシャルは秘めている一頭だ。
今回は触れられなかったが、香港スプリントを制したダノンスマッシュも地力上位。ただ、同馬は良馬場の方が合うだろう。
注目馬:ライトオンキュー、ダノンスマッシュ
※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。
ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者45000人強)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、走法、ラップなどからサラブレッドの本質を追求する。
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