【スプリングS】タフな一戦で権利をとった3頭 皐月賞でもっとも注目すべき馬は

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厳しいロングスパート合戦
皐月賞への出走権、最後の3枚の切符をかけたスプリングS。舞台は3歳の若駒には厳しい重馬場。試練は重なった。レースは小倉のあすなろ賞を逃げたワールドリバイバルが内枠から先手を奪う。最初の600~800mで13.0を記録したものの、1000m通過1分2秒5は時計以上に厳しかった。
後半800mも12.5-12.4-12.1-12.5というラップ以上に厳しいロングスパート合戦だった。皐月賞を目指すアールバロンが3コーナー手前で動き、ワールドリバイバルの外から先頭へ。当然ながらワールドリバイバルも引くわけにはいかない。だが、アールロッソを競り落とすまでが精いっぱい。背後にいたボーデンや一発狙いで外をまくったアサマノイタズラが襲いかかる。その動きをいったん待って仕掛けたヴィクティファルスが、最後にこの2頭を差し切った。最終トライアルらしい激しく、見応えある競馬だった。
3勝クラスと比較してもそん色なく
勝ったヴィクティファルスは前走共同通信杯2着。前走共同通信杯組は中山で行われた過去9年【0-2-0-15】、案外つながらない。まして共同通信杯で中団から競馬した馬は【0-0-0-5】。勝ち馬は厳しいデータを覆した。池添謙一騎手らしいひとタイミング遅らせた仕掛けが当たったことも事実だが、共同通信杯がハイレベルだった可能性も残る。毎日杯にも共同通信杯組が出走予定で、引き続き注目したい。エフフォーリアを評価する上でヴィクティファルスの勝利の意味は大きい。
ではスプリングS自体の評価はどうだろうか。スプリングS当日に同舞台の3勝クラス・スピカSがあった。このレースと比較しよう。スピカSはアガラスが逃げ、12秒台前半のラップを繰り返し、1000m通過1分0秒9、これはハイペースに近い。後半800mはアガラスが早めにペースダウンしたため、12.6-12.7-12.2-12.7。最後の600mは37.6だった。ゴール前はスプリングS以上に二転三転、先行勢が苦しくなり、後方にいたミスニューヨークとモンブランテソーロが差して、ワンツーフィニッシュ。勝ち時計は1分51秒1。スプリングSより0.9早い記録だった。
しかし、スプリングSは前半1000mで1.6遅く、後半で0.9差まで詰めた形だった。3勝クラスと比較してもそこまで見劣らない記録であり、皐月賞でも侮れない。問題は各馬、どのぐらい消耗が残ったかどうかだろう。そういった意味ではレースを使ったダメージは気になるが、自力で早めに動いて勝ちに行ったアサマノイタズラは評価していい。ヴィクティファルスに仕掛けのタイミングを狙われながらも0.1差は力の証だ。追加登録料を支払い、皐月賞に挑戦するらしいが、当日、馬場が悪化していれば、通用してもおかしくない。
3着1番人気ボーデンは、高速馬場の東京で好記録勝ちした直後に中山の道悪と舞台は正反対、ここに対応できなかったようだ。好位にいた組で好走したのはボーデンだけなので、3着の価値は高い。母ボージェストの母はアドマイヤグルーヴ、ボーデンはダイナカール一族エアグルーヴ牝系の末裔にあたる。日本を代表する超良血馬だけにここで権利をとったことがポイントになる。父ハービンジャーの産駒には皐月賞2着ペルシアンナイトがおり、中山を経験したことで皐月賞に対応できる余地はある。

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ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。
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