【中山記念】好記録を演出したウインイクシード　各馬今後に向けて覚えておきたいポイントとは

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戦前の下馬評一変、好内容を演出したのは

中央競馬で２月といえば別れの季節。中山記念でゴーフォザサミットに騎乗した蛯名正義騎手はこのレースでステッキを置き、34年間の騎手生活に終止符を打った。そのゴーフォザサミットは4着。蛯名騎手は、ひとつ前の10RブラッドストーンSでは9番人気スマートアルタイルで豪快な追い込みを決めるなど、この日2勝を挙げ、自らの門出を飾った。

さて中山記念は近年、GⅠ馬が複数出走する華やかなイメージがある。直近10年で前走GⅠ出走馬は47頭。これは毎年4頭ほど出走する計算。しかし、その前の10年間（2001～10年）は、前走GⅠ出走馬が11頭。1年1頭程度しかいなかった。今年、該当する馬はバビットのみ。GⅠウイナーは不在で、ひと昔前の中山記念のようなメンバー構成だった。

戦前はそういった面から低調なメンバーとされた中山記念だが、レース内容は下馬評を覆すハイレベルなものだった。演出したのは3着ウインイクシードだろう。単騎逃げ希望の2番人気バビットに対して、終始外からプレッシャーをかけ続けた。バビットにとってこれは誤算だった。1、2コーナーから向正面でペースダウンを許されず、11秒台のラップを刻まされた形になり、前半1000ｍは57.8の厳しい流れ。自身は4コーナー手前で脚を失った。

ウインイクシードはバビットを自力で競りつぶし、最後まで粘り中山金杯に続き3着。よどみない流れを先行した時のウインイクシードは実にしぶとい。横山武史騎手の強気な騎乗がマッチした。3歳夏から4歳夏まで1年ほど休養があり、7歳でもキャリアは今回29戦目。目標になる馬がいるようなレースではまだまだ注目だろう。

対照的な流れで連勝したヒシイグアスの可能性

ウインイクシードの演出を離れた中団で冷静に狙っていたのがヒシイグアスだった。残り400ｍ、先頭に立ったウインイクシードを捕らえられる位置まで差を詰め、測ったようにゴール前で差した。道中の間合い、勝負どころでの差、全てが計算しつくされた騎乗。松山弘平騎手、恐ろしいほどに完ぺきだった。中山金杯の再現のようなレースだったが、同レースは1000ｍ通過62.0の遅い流れで今回はハイペース。求められるものが異なるレースにフィットしたヒシイグアスの対応力も見逃せない。もうひとつ上の舞台でも楽しみがありそうだ。

2着はインをさばいてきたケイデンスコール。こちらは京都金杯の再現を狙った。勝負どころまでヒシイグアスの内側を追走。4コーナーでヒシイグアスより先に鞍上の手が動いたように、右回りのコーナリングで若干もたついたものの、最後はウインイクシードとトーセンスーリヤの間にできたスペースに突っ込んできた。京都金杯の回顧で触れたが、コーナリングをみてもサウスポーであることに異論はないが、右回りがダメなわけではなかった。これは今後の選択肢が広がる好材料だろう。

ちなみに中山金杯の勝ち馬と京都金杯勝ち馬が、中山記念にそろって出走するのは34年ぶり。1993年の中山記念、セキテイリュウオー（中山金杯）とエルカーサリバー（京都金杯）が出走、結果はエルカーサリバー3着、セキテイリュウオーが5着だった。当時は京都金杯も芝2000ｍ戦だったので、京都金杯がマイル戦になってからはじめての組み合わせ、それも中山記念1、2着は珍しく、近年とは異なるメンバー構成らしい結末だった。

勝ち時計1分44秒9はサクラプレジデントが2004年中山記念で記録したコースレコードに並ぶ好時計。土曜日メイン幕張Sも1分31秒8と早い時計が出た。どちらもハイペースだったことがアシストしたものだが、前開催の悪馬場からわずか一カ月での回復は今後も注意したい。

CコースからAコースに変わっただけではなく、おそらく2月に暖かい日が多かったことも影響しただろう。中山記念は中山金杯がヒントになった形だが、来週以降、1回中山開催の成績を安易に評価しない方がよさそうだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』（中央競馬ピーアール・センター）にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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