【シルクロードS】善戦マンを脱却したシヴァ―ジ 高松宮記念好走の必須条件とは

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もどかしかったこれまでのシヴァ―ジ
シヴァ―ジはデビューから13戦すべてダートを走り、4勝をあげてオープン入りした。ところが19年10月神無月Sで4勝目をあげた直後から芝に転向。そこからダート戦に出走せず、芝1200~1400m戦を9戦。1秒以上負けたのは転向緒戦の19年阪神C(1秒3差7着)1回。あれはグランアレグリアがちぎって勝ったためであり、シヴァ―ジが走らなかったわけではない。
20年冬の小倉で芝初勝利をあげ、そこから重賞ばかりに出走、6戦して5着4回。4度の5着はすべて後半600m最速を記録。最後に猛然と追い込んで掲示板確保という競馬を繰り返してきた。どのレースも堅実に強い競馬をしているものの、結果が出せない。そのもどかしさをシルクロードSで一辺に晴らした。
これまで4角10番手以降から追い込む競馬を続けていた馬が勝つにはどうすべきか。これが福永祐一騎手に託された課題だった。
シルクロードSでの4角通過は9番手とこれまでより何頭か前、そこから後半600m最速を記録すれば当然ながら勝てる。これは誰しもが考えること。どの騎手もそうしたかった。しかし、前半に位置を取りに行った場合、今度は後半にいい脚を使えない場合もある。競走馬の脚力は無限ではない。どこでどれだけの脚を使い、どこまでどれほどの脚を溜められるか、乗り手はそれに苦心する。
中京で差して勝つためには
シヴァ―ジは今回も飛びあがり気味にゲートを出た。出遅れとは言わないが、抜群のスタートも切っていない。7枠13番という枠順を利して後方の外目に早めにポジションを定め、モズスーパーフレア、クリノガウディー、トゥラヴェスーラ、ラウダシオンら外目から先行する馬たちをやり過ごした。こういった枠の並びもシヴァ―ジに味方した。
外の馬たちが前に行ったために後方の外目はガラガラで、押し込められる場面もなかった。3角から4角で早めに追撃態勢に入り、脚を一気に使わぬよう、バンクを利用してまるでゆっくりアクセルを踏み込むような助走を入れた。このため最後の直線まで脚を使わず、かつ最短でトップスピードに乗ることができた。
Bコース替わりでも内側の状態が思わしくない中京の馬場で末脚を繰り出して勝つコツのようなものを凝縮させたレース。今年これまで16勝すべてを中京競馬場であげた福永騎手だからこその競馬だった。
待望の重賞タイトルを獲得したシヴァ―ジの次なる目標はシルクロードSと同舞台の高松宮記念。芝の状態が3月も外有利のまま、外枠、活気ある先行勢が外枠にいることなど、条件は色々とつくものの、確実に繰り出せる最速の末脚は混戦の際に必ず武器になる。そしてそれを最大限に発揮できる騎手が乗るかどうかも大きいだろう。福永祐一騎手が示した、ただ脚を使うだけでなく、勝つための脚の使い方を今後も実践したい。
ライトオンキューの最後のピース
外が有利な馬場状態を考えると、2番枠から終始インを通って2着にきたライトオンキューは強い競馬だった。極悪馬場のキーンランドCで一旦先頭の場面があるように荒れ馬場を苦にしない。ある程度前につけたことで最後の直線では本当に悪い部分を避けられた。
決着時計が1分8秒台よりかかると好走できるタイプであることは知られているが、スプリンターズSのような前半600m32秒台の猛ペースだと最後は伸びない。昨年GⅠ以外で崩れた函館SSも前半600mは33秒4だった。この馬の好走条件は、全体時計1分8秒台以上、かつ前半600mは33秒後半以上のイーブンペースである。
モズスーパーフレアが作った前半600m33秒7はライトオンキューにとって絶好だった。このレースのように前半のペースが予想以上にあがりにくい中京芝1200m、冬開催の影響から全体時計がかかるようなら、ライトオンキューにもGⅠ制覇のチャンスはまだある。
2歳夏以来の1200m戦で3着だったラウダシオンは注意したい。前にいたモズスーパーフレアやクリノガウディーが大敗したものの、3番手にいたセイウンコウセイは5着、前後半600mは33秒7-34秒6で展開利は先行勢にあった。追い込んだシヴァ―ジや荒れたインを立ち回ったライトオンキューと比べると展開と馬場に恵まれた印象もあり、評価は難しい。この一戦で即スプリントGⅠに王手という評価を受けるようならば、慎重に考えたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
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