【AJCC】いよいよ充実期 アリストテレスはコントレイルを逆転できるか? 次走まで覚えておきたい馬は

勝木淳

2021年AJCCレース展開図ⒸSPAIA

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悪化の一途をたどる中山の芝

20年後半から中山の馬場は異変続きだった。例年、野芝のみで行われる秋開催は超がつく高速馬場だが、20年秋は長かった梅雨の影響と開幕週の土曜日、3週目の土曜日に降った雨の影響なのか、馬場は時計を要した。スプリンターズSの勝ち時計は1分8秒3。19年同レースは1分7秒1、同条件の競馬とは思えない差があった。

12月開催も芝が休眠期に入るため、秋の異変を引きずり、かつ開幕週土曜日の降雨が影響、開催が進むごとに時計がかなりかかるようになった。

実質連続開催の1回中山はCコースに変わって、時計が速くなったものの、これは芝の悪い部分がカバーされたというより、仮柵設置によってコーナーが緩くなったことでラップの落ち込みが減ったという側面が大きい。だから開催が進むとすぐに芝の状態は悪化、そこに最終週の雨が加わり、AJCCは相当悪い馬場で行われた。

さらに強くなるアリストテレス

86年以来、前走が菊花賞だった馬は【0-4-0-6】(フィエールマンが同ローテで19年2着)。菊花賞からAJCCというローテは過去34年間で10頭。今年はアリストテレス、サトノフラッグ、ヴェルトライゼンデと上位人気に押されそうな3頭がエントリー。データを調べて34年間でたった10頭だったのは意外であり、1着馬が出ていないというのも驚きだった。

ジンクスとして飛びつきたいところだが、一気に3頭、それもすべて上位人気であり、このデータが覆される予感はあった。結果はその予感通りで、菊花賞2着アリストテレスが勝利した。近年は競馬の使い方が完全に変化しており、ローテに関するデータは今後もアテにならなくなるだろう。

勝ったアリストテレスはコントレイルの三冠を阻止しかけた走りが、ホンモノだったことを改めて証明。コントレイルの株もあげたが、なによりサトノフラッグやヴェルトライゼンデより低い収得賞金3900万円を、重賞制覇で脱した点が大きい。

3歳秋から急上昇するのは父エピファネイア、父の父シンボリクリスエスから受け継ぐロベルト系の典型パターン。アリストテレスは父系、母系ともサドラーズウェルズの血が入っており、時計を要する馬場を苦にしない。血統背景からも成長曲線が早めに立ちあがるディープインパクト産駒コントレイルとの、菊花賞でのクビ差を逆転する余地は条件次第で十分ある。

覚えておきたい2着以下の馬とは

極めてタフな馬場状態だったため、レースは外枠各馬が主導権を握るも積極的に行けずスローペース。1000m通過が1分3秒3、後半1000mは1分2秒0、最後の600m12.4-12.2-13.3。2着ヴェルトライゼンデにとってこの展開は厳しかった。父はステイゴールド系ドリームジャーニー、中山芝2200mは願ってもない条件だったが、道悪のスローペースでは武器であるコーナーでの加速力が削がれてしまう。大外を動いたところでそれを察知したアリストテレスに先に動かれ、内に押し込むことができなかったことも痛かった。

良さを発揮できない条件でも2着確保は力の証。阪神芝2000mや2200mなど春は自身の武器をいかせるGⅠが多く、まだまだ見限れない。アリストテレスと同じく大仕事をする可能性は残されている。

3着ラストドラフトは昨年に続きこのレース3着。最後にアリストテレスに寄られ、ヴェルトライゼンデとの間で狭くなる不利は痛かった。2200m以上のGⅡ3、2、3着はスタミナ型の証であると同時に勝ちきれない面も併せ持つ。4歳勢同様に賞金加算が必須条件。同時に好走する条件はかなり見えてきた印象もあり、買い時も以前よりわかってきた。やや鈍いところがあるので、長距離か時計を要する条件で狙いたい。春ならば日経賞あたりがよさそうだ。

惜しかったのは7番人気5着モズベッロだ。道悪に強いディープブリランテ産駒らしく最後まで伸びてきたが、直線で狭くなって、進路を何度も切り替えるような場面があり、全力で加速できなかった。きれいに外に出せていればと悔やまれる。順調さを欠いた有馬記念から復調の兆しが見えた。こちらは昨年の日経賞2着馬、今年も引き続き出走するようであればぜひ狙いたい。

基本的に秋からはじまる中山の芝はこの1回中山でさらに傷みを増した。休眠期の2月に芝がどこまで回復するかは微妙であり、春開催前半はかなり影響が残るだろう。12、1月の中山芝で好走した馬は、春開催の前半までしっかり記憶にとどめておきたいところだ。

2021年アメリカジョッキークラブカップのレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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