【京成杯】実力と人気が異なるレースで波乱の可能性も 人気馬グラティアスの評価は?

山崎エリカ

2021年京成杯 PP指数インフォグラフィック

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タイムトゥヘヴンの強さは本物だが……

中距離路線のトップクラスは、前年の暮れに行われるホープフルS(旧ラジオNIKKEI杯2歳S)を大目標にするため、そこから約半月後に行われる京成杯は、クラシックにあまり縁がない。直近では2007年の優勝馬サンツェペリンや2010年の優勝馬エイシンフラッシュがクラシックで連対した程度だ。

特にホープフルSが2014年度にGⅡに昇格してからは、このレースの出走馬からクラシックで連対馬は皆無。2017年度にホープフルSがGⅠに昇格すると、昨年のこのレースをでワン、ツーを決めたクリスタルブラックやスカイグルーヴのように、1戦1勝馬の活躍も目立つようになった。つまり、出走馬全体の質が低下したということを意味する。

2021年京成杯 PP指数インフォグラフィック


今年も出走馬の全てが1勝馬とはいえ、1戦1勝馬のタイソウやヴァイスメテオールともに能力値5位にランクインしている。また能力値1位も、デビュー3戦目でやっと未勝利を勝ち上がったタイムトゥヘヴンだ。しかし、同馬は前走で未勝利を勝ってこのレースを連対した2017年のガンサリュートや2018年のコズミックフォースとは異なり、確かな実力の裏付けがある。

タイムトゥヘヴンはデビューからの2戦は4着だったが、前走はまさに一変。好位からレースを進め、4コーナーでは早々と先頭に立って、そのまま独走。8馬身差の圧勝を収めた。同馬が前走で記録した指数は、重賞でも通用するレベル。走破タイムも同日に行われたホープフルSと遜色なく、指数もホープフルS出走していたならば、3着のヨーホーレイクに匹敵するものだ。

前走と同じだけ走れれば今回も当然有力だが、初めて着用したチークピーシーズが効いたようで、それまでとは違う集中力を見せて激走。ただ、激走すると疲れを残してしまいがちだ。

実際にこの中間、ポリトラック調整で楽をさせているだけに、状態面がカギとなるだろう。タイムトゥヘヴンが本来の能力を出し切れなければ、次点の馬はもちろん、1戦1勝馬にもチャンスが巡ってくるだろう。

その他の能力値上位馬は?

【能力値2位 タケルジャック】
新馬戦は好位で折り合い、直線では内から外に、外から内にと進路を切り替えるロスがあったが、前が開いてからは最後まで加速して勝利した。前走は逃げる形の競馬。結果勝ち馬の目標となる苦しい展開だったが、直線では抜け出しを図った勝ち馬を差し返すシーンを見せ、最後まで粘った。順調な成長ぶりを見せ、今回のメンバーでは能力値2位となる。人気はあまりないが、チャンスは十分にあるだろう。

【能力値3位 プラチナトレジャー】
新馬戦は4着だったが、次走の未勝利戦では道悪にしっかり対応して勝利。続く前走の東京スポーツ杯2歳Sでは後方から直線の内を突いたこともよかったが、4着と好走している。ただ、近2走は上手く脚をためる競馬で好走しているだけに、勝ちに行く競馬となってスタミナが問われるようだと不安を感じる。

【能力値4位 エイカイファントム】
前々走の未勝利戦を好位から伸びて快勝した。前走は1コーナーまでに折り合いを欠くシーンがあったこともあり、最後に伸びず7着敗退。勝ち馬とは0.4秒差と大きな差があったわけではないが、成長比べの3歳戦でレース中に致命傷と言えるまでの不利があったわけでもない。底を見せるような競馬になってしまったのはマイナス。

【能力値5位 タイソウ】
新馬戦では2番手からレースを運び、直線序盤で逃げ馬を交わすと、そこからど派手なフットワークで最後まで伸びての勝利。大物感がかなりある馬と言える。またいい脚を長く使って、2着に3馬身、3着馬に5馬身半差もつけたあたりから、スタミナもかなりありそう。ここでも十分に勝ち負けになる。

【能力値5位 ヴァイスメテオール】
新馬戦では大外からハナを主張するロックオンエイムに行かせて、しっかり2番手をキープ。直線では外から早め先頭に立って、後続の目標になりながらも押し切った。馬場のいい外目を通ったにせよ、早めの競馬で強い内容だった。タフな馬場を考慮しても、レースが後半勝負となった中で、ビュンと切れる感じはなかったが、最後まで減速しなかった点も評価できる。同馬もここでいきなり通用する可能性は十分にある。

人気馬の評価は?

レシステンシアの半弟ということで、グラティアスの1番人気が濃厚。同馬も1戦1勝馬だが、タイソウやヴァイスメテオールらとは、能力値が1pt見劣る。

前走、東京芝2000mで押し出されるようにして逃げて、メンバー最速の上がりを駆使して勝利。しかし、ややタフな馬場だったことを考慮しても、前半5F66秒1-後半5F60秒1のスーパースローペース。走破タイム2分06秒2と遅く、1F平均13秒0を下回る。例えるなら通常のレースがマラソンとするならば、グラティアスの新馬戦は競歩のようなもの。

近年のノーザンFは、期待の高い馬はデビュー2戦目を目標に挑んでくるところがあり、鞍上にルメールを配してきたあたりからも、陣営は自信を持って挑んでいると推測される。ただ、新馬戦を見ただけでは本命馬にするにはリスクが伴う。

その他、ホープフルSを勝利したダノンザキッドが制した新馬戦で3着だったテンバガーも上位人気に支持されるだろう。同新馬戦の2着馬ものちの京都2歳Sの覇者ワンダフルタウンである。

テンバガーは次走の小倉未勝利戦では、ひとつ内の枠の逃げ馬を見ながらの2番手から、3コーナー手前で前に並びかけて行き、4コーナーで先頭に立つと馬場のいい所を通って勝利。指数も2歳8月の時点でのものと考えれば悪くない。今回はそれ以来の一戦となるが、休養中の成長力次第では通用して不思議ない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)タイムトゥヘヴンの前走指数「-12」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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