前年10位のオルフェーヴルが大躍進 2020年種牡馬リーディングに見られた変化

門田光生

2020年種牡馬リーディングインフォグラフィックⒸSPAIA

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2020年中央リーディング1位 ディープインパクト(2019年中央1位)

2020年は世界中を巻き込む大事件が起こったが、それが競馬界に与えた影響も大きかった。JRAとなってから初の無観客レースもそのひとつだが、そんな中で2頭の無敗の三冠馬が誕生し、さらに史上最多の芝GI9勝の記録も達成された。

さかのぼって2019年はというと、何といってもディープインパクト、キングカメハメハの2大種牡馬が死亡したことだろう。ともに2021年も産駒がデビュー予定なので、リーディングに大きな変化が起こるのはまだ先だろうが、近い将来に世代交代が起きることは確実。昨年、一気に台頭した種牡馬はいるのか、また一昨年の上位種牡馬の成績はどうだったのか。2019年と2020年の比較を中心に見ていこう。

2019年種牡馬リーディング(中央)ⒸSPAIA
2020年種牡馬リーディング(中央)ⒸSPAIA


1位はディープインパクト。2012年から9年連続での戴冠となった。父サンデーサイレンスの13年連続には及ばないものの、これもまた立派な記録である。

2020年もたくさんの活躍馬が出現したが、まずは無敗で牡馬三冠を達成したコントレイルだろう。これまでディープの成功パターンと違い、母系を米血で固めた馬から誕生したことに衝撃を受けた。あらためて配合の奥深さを思い知らされた思いなのだが、ディープインパクト、ゴールドアリュールという、芝とダートの両方で最強クラスを出したサンデーサイレンスが母系のよさを引き出すタイプとすれば、ディープインパクトはほとんどの産駒が芝馬に出るという、いわば父系優先の種牡馬。母系には質のいい血さえ入っていれば、米血だろうが欧血だろうが全く関係ないのかもしれない。

牝馬ではグランアレグリアが安田記念、スプリンターズS、そしてマイルCと短距離GIを3勝。もし高松宮記念(2着)も勝っていたら、年度代表馬の声が聞こえてきてもおかしくなかったはず。そう思えるぐらい2020年に見せたパフォーマンスは圧巻だった。

牝馬が大活躍する中で気を吐いたのはフィエールマン。天皇賞・春を勝ち、天皇賞・秋で2着、有馬記念で3着と、出走した3走全てで馬券に絡んだのはさすがだ。ただ、天皇賞・秋、有馬記念とも先着を許したのは牝馬。コントレイルも唯一先着を許したのが牝馬。やはり2020年はディープの年というより、牝馬の年だったのだろう。

2020年中央リーディング2位 ロードカナロア(2019年中央3位)

2位はロードカナロア。2019年の3位から順位を一つ上げてきた。芝GI9勝の大記録を打ち立てたアーモンドアイの活躍はもちろんだが、単純に出走回数が200以上増えたのが大きいのだろう。二枚看板のもう1頭サートゥルナーリアは2走のみで終わったが、香港でダノンスマッシュが香港スプリントを、そしてオーストラリアではTagaloaがMRCブルーダイアモンドS(芝1200m)を勝って海外GI制覇を達成している。

2017年生まれ(現4歳)からバーナードループが兵庫チャンピオンシップ(交流重賞・園田)を勝利。3世代目で初のダート重賞馬が誕生した。配合相手にもよるが、Kingmambo×Storm Catという自身の血統を考えると、今後もダートで活躍する馬が増えておかしくないはずだ。

そのダートだが、地方競馬ではサロルン(楠賞)、ジンギ(園田金盃など)が重賞勝ちしているが、バーナードループを含め全て園田競馬場で挙げたもの。ほかの地方競馬場での重賞勝ちはまだない。

2020年中央リーディング3位 ハーツクライ(2019年中央2位)

3位はハーツクライ。ロードカナロアに抜かれて2→3位にランクダウン。2019年は高額賞金レースを勝ったリスグラシューの貢献が大きかったし、重賞勝ちが10勝→4勝に減ってしまったので仕方がないところ。

飛躍が期待されたサリオスはマイルCSで5着だったせいか尻すぼみに終わった印象だが、皐月賞、ダービーではコントレイルに続く2着で、秋には古馬相手に毎日王冠を勝っている。マイルから2400mまで守備範囲の広い馬だが、いまだベストの距離がよく分からない。来年はどの路線を進むのかにも注目だ。

ダート路線ではスワーヴアラミス(マーチS)、タイムフライヤー(エルムS)、ロードゴラッソ(名古屋大賞典)など、例年以上に活躍が目立った。ハーツクライも今年で20歳。年齢を重ねるにつれて産駒がダート寄りに変化するのはよくあることで、ハーツクライも今後は芝以上にダートで活躍する産駒が増えてもおかしくない。

また、孫のダノンザキッド(父ジャスタウェイ)がGIホープフルSを勝ったが、これは父系を伸ばすという点で大きな1勝といえるだろう。

2020年中央リーディング4位 オルフェーヴル(2019年中央10位)

4位はオルフェーヴル。2019年の10位から一気にジャンプアップとなった。大阪杯とエリザベス女王杯を制したラッキーライラックの存在はもちろん大きいが、それ以外にも長距離でオーソリティ(青葉賞、アルゼンチン共和国杯)とオセアグレイト(ステイヤーズS)、短距離ではシャインガーネット(ファルコンS)、そしてダートではジャスティン(東京盃)、マルシュロレーヌ(レディスプレリュード)と幅広いカテゴリで活躍馬が出たのは、今後の種牡馬生活において大きなプラスとなるはず。

何せ、最盛期は256頭あった種付け頭数が、2019年にはわずか52頭まで減少していたのだ。しかし、ラッキーライラックなどの活躍により2020年は一気に3倍増。ステイゴールド系の枝を伸ばしていく意味でも、GI級の牡馬をコンスタントに輩出したいところだ。

2020年中央リーディング5位 キングカメハメハ(2019年中央6位)

5位はキングカメハメハ。2019年は6位だったが、直仔ルーラーシップと入れ替わる形でベスト5入り。上位5頭の中では最も出走頭数が少なくてのランクイン。晩年になっても産駒の質がさほど落ちないのはさすがである。

GI勝ちはチャンピオンズCを勝ったチュウワウィザード。5歳でのチャンピオンズC制覇というのは、同産駒のホッコータルマエと同じ。2021年以降も活躍を期待していいだろう。ほかにもユーキャンスマイル(アルゼンチン共和国杯)など、合計6頭が重賞勝ちを収めた。

産駒のロードカナロア、ルーラーシップがトップ10に入り、ドゥラメンテは2020年のファーストシーズンサイアーを獲得。キングカメハメハ系の確立に関しても万全の体制を築きつつある。

なお、2019年4位のステイゴールド(2015年死亡)は産駒数の減少もあって14位にランクダウン。同5位のルーラーシップは6位と1つ順を落としている。

トップ3は2年連続で同じ顔触れだったが、昨年以上に出走回数を増やしてくるであろうロードカナロアが、どこまでディープの牙城に迫れるのか。またデアリングタクトを出したエピファネイアのような新星が現れるのか。2021年の競馬も面白いこと間違いなしだ。

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
今後はポスト・ディープインパクトは誰なのかが焦点となってきます。内国産種牡馬の充実ですっかり影が薄い輸入種牡馬ですが、昨年に社台ファームに輸入されたシスキンという馬に注目。欧州のGIを制したUnbridled系の短距離馬とういうことで、日本でどんなタイプの産駒が出るのか楽しみ。ディープの肌につけやすいのも魅力ですね。

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