【京都金杯】中京競馬場が呼び寄せた大波乱決着 勝負を分けたポイントとは

勝木淳

京都金杯レース展開インフォグラフィックⒸSPAIA

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1、2着は左回りにこだわった馬

京都金杯ながら中京競馬場で行われた一戦は12番人気ケイデンスコール、2番人気ピースワンパラディ、14番人気エントシャイデンと波乱決着。中京競馬場改装後に芝1600mで行われた3勝クラス以上の高額条件レースはたった12。サンプル数が少なくデータ党泣かせの条件だったことも予想を狂わせただろうか。また勝敗のポイントも中京競馬場という舞台設定にあった。

勝ったケイデンスコールと2着ピースワンパラディはどちらも徹底して左回りの競馬場に出走させていた。ケイデンスコールが最後に右回りに出走したのは3歳毎日杯で10走連続左回り出走中、ピースワンパラディにいたってはデビュー以来右回りの出走経験がない。例年通りの京都金杯であれば出走しなかった可能性が高い馬たちの1、2着。変則日程が重なる2021年の関西圏攻略のヒントになるのではないか。

中山金杯と同じく飛ばす馬がいない組み合わせ、前で競馬するボンセルヴィーソあたりが主導権を握るかと予想されたが、先手を奪ったのは意表をついたエントシャイデンだった。追い込みのイメージだが、ここ2走は徐々に前で競馬しており、馬柱をよく見れば先手も納得。

予想外の馬が逃げたことで、かえって追いかける馬が少なく、先行勢はボンセルヴィーソ、タイセイビジョンがバラける形。前後半800m46秒9-46秒2で後半が早く、先行勢に有利な流れになった。

冷静だった岩田康誠騎手

勝ったケイデンスコールは先行勢がまばらになった直後のインコースという理想的な位置で流れに乗った。ケイデンスコールが恵まれたのは3角ですぐ外にいたシュリがさらに外からきたピースワンパラディを意識、この攻防によって十分すぎるスペースができた点にあった。

ただし恵まれただけではなく、最後の直線で前にいるエントシャイデンとボンセルヴィーソの間をうかがい、ボンセルヴィーソの鮫島克駿騎手が右ムチを入れた瞬間に間の進路を捨て、その外へスイッチした。スペースを消しに行く動作を冷静に見定めた岩田康誠騎手のファインプレーだ。

かつてイン突きでならした岩田康誠騎手だが、しばしば強引な騎乗も目立ったものだ。イン突きはいまだ健在もこういった進路を見定める冷静さも光る。最後の600mは11.3-11.3-12.0。もっとも厳しい場面で求められる一瞬の判断は見事だった。あそこでスムーズさを欠けば、馬が最後まで踏ん張れなかっただろう。

1800mで見直したいレッドガラン

2着ピースワンパラディは左回りだけでここまで出世してきた馬らしく、中京の金杯で結果を出した。道中でインに入ってきたシュリの厳しいマークに遭い、3角はかなり外を回った。流れを考えればこのロスが響いた形だろう。インから抜けたケイデンスコールとは通ったコースが対照的で、評価は同等といってもいい。ただしこうした大味な競馬しかできない面もあり、力差がない重賞では今後も左回りであってもあと一歩足りない可能性はある。

3着エントシャイデンは毎回そこそこの着順を拾うも少し足りない馬で、狙いにくいタイプ。先手を奪うことで新味を見せたが、これでますます戦法を含め狙いどころが難しくなった。先行することで安定するようになればと願うも、流れに恵まれたことは確かで、次走過剰に評価されるようなら慎重に検討したい。

1番人気で5着だったシュリはこのコースで2、3勝クラスを勝ちあがり、昇級緒戦で京都金杯と相性がいいリゲルS1着。勝ちを意識してピースワンパラディへのマークに徹しすぎたか。もう少し前で流れに乗りたかっただろう。

3番人気6着レッドガランは流れ不向き。4角13番手から上がり600mメンバー最速33秒6で追い込んだ。掲示板は前でレースを運んだ組が独占。物理的に厳しかったものの、本来はもう少し前で競馬できる馬。2角までの攻防で下げてしまった点が痛恨もベストは1800mなので、距離延長で見直したい。

中京マイルで3勝以上の高額条件レースはこの京都金杯含めたった13レース。そのうちケイデンスコールを合わせロードカナロア産駒が4勝(4-0-0-5)。関西圏の開催日程がイレギュラーになり、これまで少なかった高額条件が増える可能性がある。今後も中京マイルのロードカナロア産駒は勝ち切る傾向が強いので、忘れないようにしたい。

京都金杯のレース展開図



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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