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【チャンピオンズC】チュウワウィザードはなぜ逆転できたのか? 勝負をわけた1角の攻防とは

2020/12/07 11:09
勝木淳
2020年チャンピオンズカップレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA

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1角で下がった昨年、控えた今年

2020年チャンピオンズCの結果は昨年の上位4頭がスライド、当時1着クリソベリルと4着チュウワウィザードが入れ替わった。そこで昨年の当欄の回顧を振り返る。

以下、19年チャンピオンズC回顧

『中京に移行して以来、前半1000mが1分1秒を切ると、差し追い込み勢に利があった。サウンドトゥルーが追い込みを決めた2016年が1000m通過1分0秒6だった。対して今年(19年)は1000m通過1分0秒8なので、展開が後方に向いてもおかしくない流れだったが、上位3着以内は4角4番手以内で独占と上位馬とそれ以下ではやや力の差があった印象。惜しむらくはスタート直後でクリソベリルに入られて位置を下げ、最後の直線で進路を切り替えざるを得なかったチュウワウィザードだろう。』

きちんと自分で分析できているではないか。今年の1000m通過は1分0秒3で19年よりさらに速かった。こうなると走れる馬は限られるわけだ。なかでも昨年スムーズに競馬できなかったチュウワウィザードは絶好の狙いだった。

終わってみればなんとでもいえる。昨年書いたように1000m通過1分1秒を切ると先行型に厳しい流れになる。4角通過順位は1着から順に4、7、2、3番手なのでこの4頭は今年も抜けた存在だった。

勝ったチュウワウィザードは昨年とは異なり1角手前でクリソベリルに位置を譲り、自ら一旦下がりつつ同馬の背後をキープした。同じ位置を取られるでも、欲しい位置に入られてしまった昨年とは全くちがう。向正面でしっかり脚を貯めた分、4角の脚色はクリソベリルを圧倒していた。

3戦全敗を覆した要因とは

それにしても競馬は面白い。チュウワウィザードはこれまでVS.クリソベリル3戦3敗。昨年のこのレースで0秒3差、帝王賞0秒6差、JBCクラシック0秒9差を逆転した。開くばかりだった差を今回で一気に0秒6差つけて圧倒した。しいて言えば中央のダートならばクリソベリルと互角以上に戦える力があるということだろう。

反対にクリソベリルは、昨年と比べると今回は明らかに力を出せなかった。ダートの猛者にしては間隔を詰めて使うことがなく、中4週はもっとも短いスパンでの出走だった。JBCクラシックを走った反動から立ち直り切っていなかったか。

まさかチャンピオンズC過去6年【0-0-0-11】の8枠だけが原因ではなかろう。だが、外枠から1角までに位置を取りに行った結果、最初の坂で脚を使い、かつ2角出口付近ではやや行きたがる仕草を見せた。道中も絶えず前に馬がいないまま、脚を溜めにくかったかもしれない。内に潜りこんだ昨年のような形がチャンピオンズCの理想形。チュウワウィザードや2着ゴールドドリームはスムーズにその形になっていた。

上位が昨年と1、4着が入れ替わっただけなので、比較しやすくチャンピオンズCの必勝パターンも分析しやすい。最後に急坂がある以上、道中、速いラップのなかでも脚をひと溜めできる形がいい。そう考えれば終始外を追走したクリソベリルはよく4着にきたといってよく、チュウワウィザードとの力関係が決して逆転したわけではない。

昨年と同着順だった2着ゴールドドリーム、3着インティ。ペースを考えれば厳しかったのはインティだろう。1000m通過は昨年よりさらに速く、それでいて着順は同じ。揉まれなければ力を出せる馬なので、外枠は好都合だった。内から行ってくれたエアアルマスを利用する競馬、武豊騎手のクレバーさが際立った。昨年同様に坂をあがってから脚色が若干衰えていたのでやはり1800mはほんの少しだけ長いだろう。大敗も多く、つかみにくい馬だが、外枠に入った際はほかの逃げ馬との枠の並びなどをよく考えて狙ってみたい。

5着はGⅠウイナーのモズアスコットが追い込んだ。ゴール前の脚色は際立っており、前が止まらなかっただけで16年サウンドトゥルーが届いたときのように差し切ってもおかしくなかった。この5着もやはり上位4頭が強かったことを示している。

チャンピオンズカップレース展開



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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