【京都2歳S】勝敗を分けた阪神の坂 結果から見えてくる2歳牡馬の力関係

勝木淳

2020年ラジオNIKKEI杯京都2歳ステークスレース展開インフォグラフィックⒸSPAIA

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2度の急坂が勝敗を分ける

13年ワンアンドオンリーの勝利を最後に阪神から京都に移ったラジオNIKKEI杯が7年ぶりに阪神に戻った。レース名はラジオNIKKEI杯京都2歳Sではあるが、阪神芝2000mで行われる2歳重賞という意味では里帰りともいえる。同じ内回り2000mながら最初と最後に急坂があるため京都と阪神は大きく異なる。勝敗は阪神の急坂が分けたといっていい。

発馬を決めたバスラットレオンを制して大外枠のタガノカイが勢いよくハナを奪いに行く。最初の急坂を通過する1角を回りきるまでのラップは11秒3。タガノカイが外から内に切れ込むところでバスラットレオンとビップランバン、グラティトゥーが接触する場面があり、先行勢は折り合いを欠くような仕草。それでもタガノカイ以下はギリギリ抑え込み、前半1000m1分1秒5と遅めの流れを作る。

最後の600mは11.7-11.6-12.2と上がり勝負。直線入り口で先頭に立ったバスラットレオン、グラティトゥーが粘れるかと思いきや、最後の急坂で完全に脚を失くし、背後にいたラーゴムや外を追い上げたワンダフルタウンらが逆転した。一旦先頭のバスラットレオンは急坂で明らかに脚勢を失っていた。敗因は前半スムーズさを欠いたこと、もしくは距離ないし坂適性だろう。

1、2着馬が示す2歳牡馬の力関係

勝ったワンダフルタウンは最初の急坂で無理せず後方に待機。インコースへの意識が強い和田竜二騎手が残り800mからの下りを利用して一気にスパート、勢いそのままに差し切った。緩い流れで密集した展開だったので、意識的に外に進路をとった作戦が当たった。最後の直線では馬がずっと内にササっており、必ずしも能力全開というわけではなかったか。

新馬戦は東京スポーツ杯2歳Sを勝ったダノンザキッドの2着。前走萩Sで接戦を演じたジュンブルースカイは東京スポーツ杯3着。今回で力関係がなんとなく見えてきた。ワンダフルタウンが京都2歳Sを勝ったことでダノンザキッドの強さも推し量りやすくなった。

2着ラーゴムは道中ワンダフルタウンの目前に位置し、マークされる形となってしまった。下り坂を利用した仕掛けもワンダフルタウンに利用された。こちらはアイビーSでオーソクレースのタイム差なし2着。ラーゴムの2着はオーソクレースとダノンザキッドの力関係へのヒントになりそうだ。

マカオンドールは最後の直線でグラティトゥーとラーゴムの間で進路が狭くなり、一旦ブレーキをかけるシーンがありながら3着。不利を考えれば、次走以降も狙ってみたくなる。ただクラシックはこういった不利によって着順を落としたことが後のちに響く。3着は賞金加算できないので、収得賞金400万円にとどまったマカオンドールは、翌年のことを考えれば1勝クラスを早く突破しなければならなくなった。

1人気グロリアムンディは緩い流れで密集した馬群のインに入ってしまい、4角で明らかに踏み遅れ、一旦は最後尾まで下がる形となった。先行馬がばらけ、目前に進路ができると最後に伸びて4着。もったいなかったが、最後の急坂での伸びは目立っており、バスラットレオンらとは対照的に坂適性を感じる。阪神や中山で次走あっさりというシーンまでありそうだ。

ラジオNIKKEI杯京都2歳ステークスレース展開図


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。


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