【マイルCS】グランアレグリア、サリオス、インディチャンプの死角は?4頭の穴馬に注目
山崎エリカ
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グランアレグリア、サリオス、インディチャンプの死角は?
来週の三冠馬対決に注目が集まるが、マイルチャンピオンシップも出走馬17頭中GⅠ馬が8頭、GⅠ・GⅡの未連対馬がわずか2頭という、かなり豪華なメンバー構成となった。これは香港遠征を見据えていた馬たちが、国際情勢で白紙となり、ここに出走して来ることになったため。まさにコロナ禍のプレゼントだ。
その中でも最有力とされているのは、春の安田記念でアーモンドアイを撃破し、今秋のスプリンターズSも優勝したグランアレグリアだが、ここまでライバルが集うと、勝つのは決して楽ではない。何せ、昨春の桜花賞を休養明けで優勝した後のNHKマイルCでは、緩みない流れを早仕掛けをしたのもあるが、アドマイヤマーズと0.3秒差の4着(5着降着)に敗れている。それからさらに地力をつけてはいるが、今回も休養明けでスプリンターズCを制した後の一戦となる。ローテーションに不安が残るのも事実か。
また、これまでコントレイルにしか先着を許したことがない3歳馬サリオスは、昨年のマイルCSで2番人気に支持されたダノンキングリーと同じローテーション。皐月賞まで無敗、皐月賞では3頭大接戦の3着、日本ダービーでもロジャーバローズにクビ差の2着まで迫った実績馬で、サリオスとよく似ている。さらに休養明けの毎日王冠で、メンバー最速の上がりで突き抜けた辺りもそっくりだ。
しかし、ダノンキングリーはマイルCSでは、しまいが甘くなっての5着に敗れた。いわゆる「二走ボケ」だ。サリオスだって同じようにならないとは言い切れない。
では、昨年の安田記念とマイルCSを制して、春秋統一マイル王となったインディチャンプは、今春3着の安田記念の雪辱を果たせるか?これもこの秋の始動を予定したスプリンターズSを右トモを痛めたことで回避。今回ぶっつけ本番となった不安はあるだろう。このように人気馬に何らかの不安はある。
能力値1位、最高値1位はグランアレグリア
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【能力値1位、最高値1位 グランアレグリア】
グランアレグリアは、芝1200mの高松宮記念で2着、スプリンターズS、安田記念で完勝、さらにマイルCSも勝てば、歴史に残る名馬になるのではないか?あのタイキシャトルも同年の安田記念とマイルCSを制しているが、その次走のスプリンターズSで3着に敗れている。過去にさかのぼっても、同年の安田記念、スプリンターズS、マイルCSを制してスプリントとマイルの二部門の頂点に立った馬はいない。
また、過去にスプリンターズS優勝後に同年のマイルCSに出走した馬が3頭いるが、連勝できたのは2003年のデュランダルだけ。2002年のトロットスター、2013年のレッドファルクスは、マイルCSで掲示板にも載れずに大敗している。
芝1200mはある程度スピードで押し切れる距離だが、芝1600mは芝1200mほどスピードが問われないぶん、折り合いや持久力が必要になる。2F延長で、折り合いをつけさせるとなると簡単ではない。
ただ、グランアレグリアは前走のスプリンターズSでは、実質マイル戦のレース運びで優勝している。スピード不足で序盤で置かれて後方からの競馬になったが、モズスーパーフレアがペースを引き上げたことで差し切ることができた。
そこは前記のデュランダルのスプリンターズSのレース運びとよく似ていて、距離が長くなることは問題ないのだが、トロットスターやレッドファルクスと同様に、休養明けでスプリンターズSを制した後の一戦となることが不安である。前走はここを見据えて太めの仕上げだったが、ある程度走ってしまった以上、ここをピークに持ってくるのは難しい。
その他の能力値上位馬
【能力値2位 インディチャンプ】
この馬は昨年、休養明けのマイラーズCで4着→安田記念優勝、休養明けの毎日王冠で3着→マイルCSで優勝しているように、叩き2走目がピーク。つまり、今年の安田記念は中山記念から始動し、マイラーズCを目標としたのが敗戦の理由のひとつであるということ。
確かに今春の安田記念は、昨年の安田記念やマイルCSと比べるとレベルが高かっただけに、安田記念に照準を合わせたとしても勝てなかった可能性は高い。しかし、自在性があって、どのような展開になっても大崩れしないのがこの馬の魅力である。スプリンターズSから始動できなかったのは誤算だが、ここも善戦する可能性が高い。昨年の安田記念を1分30秒9で優勝したように、高速馬場適性が高いだけに、今の高速馬場も合うだろう。
【能力値3位 サリオス】
皐月賞ではコントレイルと半馬身だった着差が、日本ダービーでは3馬身差に広げられた。それがマイル路線に駒を進める後押しとなったのだが、日本ダービーでは4コーナーの大外から早仕掛けながらも、しぶとく伸びていたあたりから、菊花賞に出走しても悪くなかった気がしている。結果はまたコントレイルの2着、あるいはコントレイルとアリストテレスの次の3着かもしれないが、距離がこたえるような馬ならば、昨年のサートゥルナーリアのような失速をしているはず。
逆にここに出走したことで相手が手強くなったし、ゲートも二の脚も速くはないので、レシステンシアがテンのペースを引き上げた場合には置かれ気味になる可能性もある。また、前記したように休養明けの前走、毎日王冠で好走したリスクも小さくない。まだ底を見せ切ってはいないが、現状ではグランアレグリアやインディチャンプよりも狙い下げたい馬ではある。
【能力値4位 アドマイヤマーズ】
昨秋の香港マイルでは、ノームコア、ペルシアンナイト、インディチャンプを撃破して優勝した。ぶっつけ本番だった前々走の安田記念では6着に敗れているが、これは緩みない流れを先行したために、息が持たなかったもの。また1分31秒台の決着では、この馬のスピードでは勝ち負けまで持ち込むのは苦しいものもあった。
また、休養明けの前走、スワンSは明確に距離が短く、ペースが上がったところで置かれて追走に苦労している場面があったが、逃げ馬不在で各馬が他馬の出方をうかがいながらの競馬になった中、前半で前の位置を取ったことで3着に粘れた。
前走で合っていない距離のスワンSを選択したのは、今回に向けての叩き台が目的だったと推測されるが、前走である程度走ってしまったことで、昨秋の香港マイルのように、大幅に変われるかは微妙。それでもマイル戦がベストの馬なので、前走以上は走れるだろう。
【能力値5位 ヴァンドギャルド】
昨年までは先行してしまいの甘さを見せていたが、出遅れた今年の東京新聞杯で2着と大接戦の6着、その次走のマイラーズCでも立ち遅れて3着に好走した。脚をためて後半にかけたこともあり、鋭い脚が使えるようになり、指数を上昇させた。
休養明けの前走、富士Sでは初重賞制覇を果たしてはいるが、スマイルカナにシーズンズギフトが競りかけて、激流になったことで展開に恵まれたもの。また、馬場の良い外から差し切っており、さらに相手強化となるここでは狙いにくい。
【能力値5位 サウンドキアラ】
京都金杯、京都牝馬S、阪神牝馬Sと重賞3連勝を果たし、前走のGⅠ・ヴィクトリアマイルでも2着好走と、今年に入って急上昇した。しかし、この秋の始動戦の前走、スワンSでは10着凡退。しかし、勝ち馬カツジと0.5秒差と大きく負けてもいない。
最内枠のこの馬は4番枠のカツジが逃げ、3番ロケット、2番アドマイヤマーズの直後からの競馬となり、また、3コーナーで前が下がって来たために包まれ、馬場の良い外に出せなかったのも敗因のひとつ。巻き返しがあっても不思議ない。
【能力値5位 ラウダシオン】
今春のNHKマイルCでは、逃げたレシステンシアに2番手からプレッシャーを掛けながらレースを運んで、ラスト2Fで並びかけ、最後は突き放した。あれは、朝日杯フーチュチティSでサリオスに完敗だった頃のラウダシオンではない。
この秋の始動戦の前走、富士Sでも自己最高指数で2着と好走し、上昇一途を見せつけたが、前へ行ったスマイルカナとシーズンズギフトが後続を大きく引き離したことで、3番手ながら実質差しの競馬をしている。ヴァンドギャルドよりもレース内容は良かったが、あまり強調材料がないのも事実。
マイルCSの穴馬は?
【レシステンシア】
昨年の阪神ジュベナイルFでは、前半4F45.5-後半4F47.2の超絶ハイペースで逃げ、2着馬に5馬身差と圧巻の内容を見せた。同馬が同レースで記録した指数は、コントレイルが優勝した東京スポーツ杯2歳Sと同じ「-20」。これは古馬準オープンレベルのもので、2歳馬でこの走りができるのは稀有。少し成長すれば古馬の一線級が相手でも太刀打ちできる。
この馬は逃げにこだわるタイプではないが、優れた持久力を生かしてある程度行き切り、後続に脚を使わせてこそのタイプ。桜花賞ではスマイルカナがハナを奪って逃げ、重馬場で前半4F46.5-後半49.6と阪神ジュベナイルF以上の激流に持ち込んだが、2着を死守した。
今回はこの馬を最も知り尽くしている北村友騎手に乗り替わるだけに、阪神ジュベナイルFに近いペースでレースを運ぶ可能性が高い。今の阪神の超高速馬場ならば、前半4F45秒台でレースを運んでも、後半4F46秒台で上がって来れるだろう。
前走のNHKマイルCは消耗戦となった桜花賞の疲れが出たようで、ペースをセーブしながらの競馬。2番手のラウダシオンに終始プレッシャーをかけられたが、我慢の競馬で崩れなかったのも基礎能力の高さを示すもの。その後に骨折が判明し、休養を余儀なくされたが、全治3ヵ月の診断をここまで待って出走してくるのだから、仕上がりに抜かりはないだろう。同型手薄のここは本命視してみたい。
【ベステンダンク】
障害レースを2戦した後の2018年の米子Sで一変、同レースでは前半4F46秒0-後半45秒1の平均ペースで逃げて5馬身差の圧勝を飾った。その時の指数が「-24」とここでも連対できるレベルのもの。同馬も持久力を生かして前に行ってこその馬で、昨夏の小倉日経オープンでも逃げて2着に好走している。
また、同馬は今年8歳だがインディチャンプが制した今春のマイラーズCでも2番手から2着と好走しているように、衰えてはいない。さらに今回は前走で芝1400mのスワンSを使ったことで、レースの流れに乗りやすく、楽に前のポジションが取れると見ている。展開の後押しもありそうなだけに、一考する価値はあるだろう。
【ペルシアンナイト】
マイル~中距離の常連。マイルでは、2017年のマイルCSの覇者で、2018年のマイルCSでは2着、昨年は3着の実績がある。同馬はマイルよりも中距離指向が強く、自身の最高値は2018年の大阪杯2着時。年齢とともに追走力が衰え、より中距離指向が強くなった印象を受ける。
2018年の安田記念で10着、今年に安田記念では9着と凡退しているように1分31秒台の好時計決着になってくると厳しいものがあるが、日曜日は雨が降るとのこと。
前走の富士Sは、前半4F45.4-後半48.0の超絶ハイペースを出遅れして後方からのレースとなったり、馬場の悪いところを通らされたりと、実力
負けとは言い難いだけに、ここで前進があっても不思議ない。
【スカーレットカラー】
昨年の府中牝馬Sでは、かなり強烈な末脚を発揮して勝利した。この馬は今年緒戦の阪神牝馬Sでも上がり最速で2着。前々走のクイーンSでは直線で前が壁になって脚を使えたのはほんのわずかだったが、一瞬の加速力には異様な凄みがあった。まともならば突き抜けていたろう。
休養明けの前走・天皇賞(秋)は距離が長く、この馬本来の末脚を使うことができなかったが、マイルなら展開次第でこの馬の末脚が生かされるだろう。また、前走の馬体重14kg増は太かっただけに、絞れての上積みが見込める。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)グランアレグリアの前走指数「-24」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.4秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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