【エリザベス女王杯】ラッキーライラックなど上位人気馬に死角あり! 最有力は「末脚型」のノームコア

山崎エリカ

2020年エリザベス女王杯PP指数インフォグラフィック

ⒸSPAIA

近年はスローペース化が顕著

近年は牝馬の大型化や育成・調教の進化、瞬発力が生かせる高速馬場(加速力勝負ほど、牝馬の斤量2kg減が生きる)の影響により、牝馬の超一線級は牡馬一線級と互角、あるいはそれ以上に戦えるようになった。それらが目指すのは、当然、牡馬相手の王道のGⅠ路線であり、このためエリザベス女王杯のメンバーの質が低下している。

また、同時にスローペース化が顕著で、ここ4年は中盤まで脚をタメて、3コーナーの下り坂でスピードに乗せての後半勝負となっている。つまり、クロコスミアが1〜2番手から3年連続でこのレース2着に好走したのは、展開に恵まれた面が大きい。逆に差し切るには近2年の優勝馬リスグラシューやラッキーライラックのように、メンバー最速クラスで上がってこれる脚力がないと難しいものがある。

今年のエリザベス女王杯は、京都ではなく、宝塚記念と同じ阪神芝2200mで開催される。阪神芝2200mは、スタート後の下り坂があって加速がつきやすく、最初の1コーナーまでの距離が約525mと長い。平坦スタートで最初の1コーナーまでの距離が約397mの京都芝2200mと比べると、ペースが上がりやすいコース形態になっている。

しかし、今開催の阪神芝コースはロングラン開催を意識してクッション値が高く設定されており、例年のこの時期の京都開催と比べると、はるかに高速馬場だ。そのうえ逃げ馬不在のメンバー構成で、逃げても悪くない実力馬はウラヌスチャームくらい。しかし、同馬はテンが遅いうえに外枠。メトロポリタンSのように奇襲攻撃でも仕掛けないと難しいだろう。今年もスローペースになる可能性が高い。

1番人気は昨年の覇者ラッキーライラックが濃厚

2020年エリザベス女王杯PP指数インフォグラフィック


ラッキーライラックは昨年のエリザベス女王杯の覇者で、今春の大阪杯でも牡馬を撃破して優勝した実績馬だ。近2走の成績が悪く、能力値では5位以下となってしまったが、高い能力の持ち主であることは言うまでもない。

前々走の宝塚記念では勝ちに行った結果、激流に飲み込まれての6着に敗退。その敗戦を糧に前進が期待された札幌記念でも、2番手から直線で早め先頭に立ったものの、最後に止まって3着に失速した。先行しても大きく崩れない強さはあるが、エリザベス女王杯と大阪杯では末脚を生かす競馬で優勝しているように、本質は末脚型なのだ。

今回で末脚を生かす競馬ならば反撃が期待できるが、外枠のルメール騎手だけに、先週のアルゼンチン共和国杯のオーソリティと同様に、ロスを嫌ってある程度は勝ちに行くと見ている。そう考えると、中心視するのは怖いものがある。

能力値1位はノームコア

ノームコアは緩みない流れとなった昨年のヴィクトリアマイルの覇者で、今年も同レースで3着、安田記念で4着と善戦している。この実績だけ見ると、マイラーのイメージが強いが、芝2000mの前走、札幌記念では牡馬やラッキーライラックを撃破して優勝した。

もともと紫苑Sで圧勝した実績があるが、昨年のヴィクトリアマイルで出遅れ、展開に恵まれて優勝したことでマイル路線を使われるようになった。ただ、マイル戦だと出負けしてポジションが悪くなることから、本質的には楽にポジションを取って行ける中距離のほうが向くと思っていた。

しかし、札幌記念は予想以上に走れたのも事実。それはおそらく成長分だろう。半妹のクロノジェネシスと同様に晩成型の面があり、エンジンが掛ってから長く伸びるあたりもそっくり。

本質的には芝2200mでも問題ないと見ているが、スタミナが不足する休養明けで、1Fの距離延長というのは不安材料だ。ただ、相手がそこまで強くなく、この馬以上の死角を抱えているので、最有力候補としたい。

能力値2〜4位は古馬、3歳馬ソフトフルートが能力値5位タイ

【能力値2位 サラキア】
小倉日経オープン、府中牝馬Sとこれまでにない圧倒的なパフォーマンスで連勝。それまでは流れが厳しくなると終いが甘くなる面があったが、前半で無理をさせずに末脚を生かす競馬ができるようになったことが好結果につながっている。近2走と同様に、今回も末脚を生かす競馬をしてくると見ている。

ただし、前走の府中牝馬Sは、後半のレースになるにつれてどんどん時計が掛かって行く重馬場の中、トロワゼトワルが大逃げを打ったことで前が苦しくなり、先行した1〜3番人気馬が失速しまったのは確か。また、その3頭ともスタミナが不足する休養明けでもあった。2着のシャドウディーヴァに3馬身差をつけて圧勝していることは立派だが、現状では前走以上は望みづらい。

【能力値3位 センテリュオ】
前走のオールカマーは、強敵カレンブーケドールを撃破して重賞初制覇を達成と一見、申し分のないようにも見える。しかし、前半5Fが64.3と極端に遅かったものの、カレンブーケドールが3コーナーから動いたことで一気にペースアップ。後半5F目から11.6-11.9-11.5-11.5-12.2と一気に速くなった。つまり、センテリュオは先行勢が早仕掛けしてラスト1Fで失速したところを差したというレース内容。

また、前々走のマーメイドSでも2着だったが、逃げたナルハヤに終始サマーセントがプレッシャーをかけたことで、牝馬限定戦としては速い流れになり、3〜4コーナーの最内、最短距離を通ったセンテリュオは展開に恵まれている。

レースを順調に使われていればここも展開次第でチャンスがあったが、休養明けの前走で展開に恵まれて最高値を記録した後の一戦となると、反動が出る危険性がある。

【能力値4位 ウラヌスチャーム】
前走の新潟牝馬Sは、かなり時計の掛かる馬場では各馬が馬場の悪い内を避けてペースを落とす中で、内からスルスルと馬なりで押し上げて3コーナー先頭、最短距離の競馬で7馬身半差をつけて楽勝。自慢のスタミナを存分に生かしたレースぶりだった。

しかし、前走は二の脚が遅く、追走に苦労している面があっただけに、超高速馬場の阪神となると、置かれて位置取りが悪くなり過ぎることが予想される。

【能力値5位 サトノガーネット】
前々走の小倉記念では逃げ馬が淡々と飛ばしたことで、展開に恵まれて久々に重賞2着と好走。前走の新潟記念でも中団馬群の後方からレースを運んで、直線で馬場の良い大外。序盤ですぐに外ラチ沿いまで持って行ったことで、後半3F31.9という強烈な末脚で伸びて4着と善戦した。

末脚型のサトノガーネットが重賞で好走しているのは、展開に恵まれた時と外差し馬場の時。今回は内外フラットな馬場で、展開にも恵まれない可能性が高いが、ペースが速くなれば当然チャンスがある。

【能力値5位 ソフトフルート】
前々走の夕月特別では、後方から直線の最内を突いて4馬身差の独走。2勝クラスとしては破格の指数での勝利で、夏の間に大きく成長したことを感じさせた。

前走の秋華賞は、休養明け好走の反動が出る可能性もあると見ていたが、秋華賞は前後半5Fが59.4-61.2のかなりのハイペースを出負けして、最後方からの競馬になったことで3着と好走。4コーナーで大外を回してはいるが、展開上は恵まれた面があったのは否めない。

前走のような競馬では勝ち負けまでは難しいだろう。ただし、スタートに定評のある福永騎手を配してきた辺りから、スタートを決めて中団くらいの位置を取ってくる可能性はある。

【能力値5位 ラヴズオンリーユ】
昨年のエリザベス女王杯では休養明けながら3着と好走し、底知れぬ能力を感じさせる走りをした。しかし、今年に入ってからは期待されたほどの走りができていない。

距離が短いヴィクトリアマイル7着はともかく、前走の府中牝馬Sでは5着に凡退。結果的には休養明けで太目だったために早仕掛けが応えて、息切れしてしまったための敗戦と言えるのだが、3歳時の実績を考えるとやや不甲斐ないレースぶりではあった。今回は前進して当然の素質馬ではあるが。思いの他、成長力が見せられていない点がネック。

穴馬は、展開に恵まれた場合の先行馬が中心

【ウインマイティー】
ここ2戦は、紫苑Sが6着、秋華賞が9着と敗れているが、ともにスタートが悪く、オークス3着となった時のように持ち味の持久力を生かす競馬ができていない。やや指数不足は否めないが、楽に先行して全てが上手く行った場合には一発ある。スローペースが想定されるここは一考する価値がある。

【ウインマリリン】
デビュー4戦目でフローラSを制し、オークスでも正攻法の競馬で2着。休養明けの前走、秋華賞は外枠から出して行く競馬で15着大敗を喫したが、先行馬総崩れだっただけに、度外視しても良いだろう。

今回はひと叩きされての上昇が見込める。この馬も前に行ける馬だけに、うまく行けばウインマイティーと同様の可能性は感じるのだが、やや指数不足の面は否めない。

【エスポワール】
重馬場で行われた昨夏のシンガポールターフクラブ賞では、先行して4馬身差の圧勝と2勝クラスとしてはかなり優秀な指数で勝利した。その時の指数はソフトフルートの夕月特別と同等のものである。また、その後はターコイズSでも正攻法の競馬で2着と好走しており、ここでも能力面で大きくヒケを取らない。

この馬は末脚を生かす競馬よりも、先行して持久力を生かす競馬をした方が良いタイプ。しかし、近3走はそういう競馬ができておらず、能力を出し切れていないので、うまく前でレースを運べれば、ここで一変する可能性はある。

【リアアメリア】
デビュー2戦目のアルテミスSを優勝し、オークスでは4着と好走した実績馬。休養明けの前々走のローズSでは秘めたスタミナを生かして、先行することで快勝した。前走の秋華賞13着は、オーバーペースに巻き込まれたことと、休養明けで好走した反動もあったことが敗因だと考える。

今回は巻き返しが期待されるところではあるが、前走で少し負け過ぎてしまった点と、今年のローズSは指数面からはあまり強調できない点が不安でもある。

【リュヌルージュ】
4走前の中山牝馬Sでは、降雪でタフな馬場状態を外枠から勝ちに行く競馬で2着とかなり強いレースぶりだった。前走の七夕賞は外枠から馬場の悪い内に入っていき、チグハグな競馬となって敗退したが、そのわりには大きく負けていない。3歳馬たちが思ったほど巻き返せず、今回のレースのハードルが下がった場合にはひょっとしたらとは思わせる馬だ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)デアリングタクトの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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