【マイルCS】グランアレグリア不動も、そろそろ一発あるぞ 富士ステークス、スワンステークス組
勝木淳
ⒸSPAIA
マイル実績十分な3歳勢
秋のベストマイラー決定戦・マイルCSは近年大きな転換期を迎えている。かつては、外国産馬を中心に「マイラー」というジャンルは確実に存在していた。マイルCSも90年代から2000年代前半にかけてシンコウラヴリイ、タイキシャトル、アグネスデジタルといったマイラー色が強い外国産馬が名を連ねた。
ところが、外国産馬の優勝は11年エイシンアポロン以来途絶え、マイル路線自体もこの距離だからこそ強いという馬より、別カテゴリーで足りない馬たちへの救済的なカテゴリーとなりつつある。
そんなやや寂しい状況だったマイル路線に現れたグランアレグリアは、春の安田記念で女王アーモンドアイを完封、このレースに春秋マイルGⅠ制覇をかける。その可能性も含め過去10年のデータを基礎に傾向を分析する。
まず年齢別の成績を出すと、4歳が【4-6-3-23】勝率11.1%、複勝率36.1%でトップ。秋のGⅠは後半になるほどに5歳より4歳馬。5歳も【3-3-4-50】でまあまあ好走するものの、勝率5%、複勝率16.7%と確率は低下する。
4歳よりさらに若い3歳は【2-0-2-32】勝率5.6%、複勝率11.1%とそこまでではないが、17、18年と連勝(ペルシアンナイト、ステルヴィオ)したインパクトは大きい。今年の登録馬はサリオス、タイセイビジョン、ラウダシオン、レシステンシアとマイル重賞勝ち馬がそろっており、注意したい。
その3歳の好走パターンを前走レース別成績で探ると、毎日王冠や富士S、スワンSといった古馬重賞を経由していることがわかる。サリオス(毎日王冠)、タイセイビジョン、ラウダシオン(ともに富士S)は該当するが、前走NHKマイルCのレシステンシアはどうだろうか。
もっとも、前走NHKマイルC組は【0-0-0-1】(14年ホウライアキコ)。たった1頭なのでデータとしては評価しようがないが、古馬と対戦経験がある馬を上位にとるべきだろう。
主力世代を突っ込んでみると
グランアレグリアはデータ面の減点がない4歳。ほかにもアウィルアウェイ、アドマイヤマーズ、ヴァンドギャルドがスタンバイ。ここも掘り下げてみる。
こちらはGⅠ組が【2-1-2-2】勝率28.6%、複勝率71.4%で断然。前走がスプリンターズSだったグランアレグリア、アウィルアウェイをステップレース経由のアドマイヤマーズ、ヴァンドギャルドより上位とするべきだろうか。
しかしながらその前走GⅠ組の内訳、レース別成績をみると、天皇賞(秋)【1-1-2-1】と安田記念【1-0-0-1】のみでスプリンターズS経由の4歳馬は過去10年出走がない。
だが、アーモンドアイ同様にグランアレグリアも既存の概念を覆すフロンティア精神に富んだ馬。前例なき挑戦などなんなく突破しそうだ。
もう少し検討範囲を広げ、5歳も確認。前走クラス別ではGⅠ組【1-1-0-6】勝率12.5%、複勝率25%でトップだが、4歳と比較すると抜けてはおらず、GⅡ組【2-1-3-20】勝率7.7%、複勝率23.1%にも目を配っておきたい。
4歳とは対照的に天皇賞(秋)【0-0-0-3】や安田記念【0-0-0-1】からの好走はなく、スプリンターズS【1-1-0-1】のみ好走馬を出している。不思議なデータだが、スピードから衰えていくことを考慮すると、5歳になってスプリント戦では追走に苦労するなど力を出し切れなかった馬が、マイルに距離が延びることでスピード負けを克服、再浮上するということだろう。
5歳の好走パターンをたどる4歳グランアレグリア。実は前例はここにあった。スプリンターズSで後方一気を決めた同馬だがスプリント戦がベストではなく、適条件はGⅠ2勝のマイル。やはり主役は譲れない。
侮れない主要ステップ組
まとめとして世代に区切らず、全体の前走レース別成績を出す。
気になるのは主要ステップレースの富士S【3-4-1-43】勝率5.9%、複勝率15.7%、スワンS【1-4-1-33】勝率2.6%、複勝率15.4%が振るわず、反対に毎日王冠【2-0-2-18】、天皇賞(秋)【1-1-2-12】、そしてスプリンターズS【1-1-0-6】がいい。これは近年マイル路線が手薄になり、別路線からマイルに矛先を変えてくる馬が優勢というトレンドに重なる。
だがしかし、今年からGⅡに格上げした富士S、マイルCSが阪神になったことで「京都から京都」ではなく、「京都から阪神」となったスワンS。例年とは異なる変化があった主要ステップレース組は好走馬を出しそうな予感はある。
ということで、最後に両ステップレースの前走着順別成績を少し掘り下げる。傾向として富士S組は掲示板以上、スワンS組は3着以内から好走馬を送っていた。
富士S組の登録馬は全馬該当、特注は1着ヴァンドギャルド(4歳)、2着ラウダシオン(3歳、マイルGⅠ勝ち)、5着タイセイビジョン(3歳、当該舞台で重賞V)。スワンS組の登録馬はカツジ、アドマイヤマーズが該当。
グランアレグリア中心は揺るがないものの、データ的に影が薄くなった主要ステップレース経由の馬が穴を出す可能性は十分ある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
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