【みやこS】セカンドキャリアで結果を出したクリンチャー 今後の可能性は?

ⒸSPAIA
先行策で活路を開く
11月8日に行われたみやこS。2人気ベストタッチダウンやワイドファラオ、ナムラカメタローの4歳馬が全滅。勝利した6歳クリンチャーはダート転向後初のうれしい重賞制覇、4歳時に凱旋門賞にも挑戦した馬が6歳になり、ダート路線へ矛先を変え、かつ重賞を勝った。セカンドチャンスを与えられ、さらに結果を出す。さすがは人間の世界の先を行く馬の世界である。一度や二度の挫折によって生きる可能性を閉ざされるべきではなく、その後に別の選択肢があり、出直せる世界でありたい。クリンチャーの勝利はそういった意味で感慨深いものだ。
ダート転向後のクリンチャーは前半ゆったり入り、後半に強引にでも動いてスタミナ勝負に持ち込む形が自身のスタイル。そのため主導権を握れずにどうしても他力本願、前が作るペースに左右され差して届かずという惜敗を繰り返してきた。川田将雅騎手はそんなクリンチャーを発馬から気合をつけて先行させることに成功。まずはこれが勝因。
ベストタッチダウンが作る緩みない流れ
先手を奪ったベストタッチダウンは最初の正面直線の攻防でけん制を入れ、先行の可能性があった内枠ワイドファラオらを制したものの、外のエアアルマスに番手から張りつかれた。1、2角では12秒7とラップを落とせたが、向正面から再び加速、12.1-11.9と息が入らなかった。残り1000m標識あたりで武豊騎手がのぞき込むように後続を確認、エアアルマスやクリンチャーが楽に追走している様子をみて早めに突き放そうという作戦だったか。
1000m通過1分0秒5はハイペースではなかったが、息の入れにくい流れを作ることになった。春に続き重賞で大敗したベストタッチダウンはこのレベルのメンバー相手に道中からスピードで突き放すような競馬ができなかった。オープン特別で相手次第にはなるが、あっさり巻き返すこともあるだろう。
息を入れにくい流れはクリンチャーの望むところとなった。ペースのアップダウンを器用にできないタイプで、後半800m12.0-12.2-12.0-13.2と一定のペースで流れたことにより自身の強みを思う存分発揮できた。芝で菊花賞2着、阪神大賞典、天皇賞(春)3着と3000m超のレースで結果を出したスタミナは衰えていなかった。今回先行して結果が出たことで、今後は中央のダートでハイペースを先行するという形ができる。これはGⅠに向けて大きい。チャンピオンズCが厳しい流れになるようであれば、好機はまだまだある。
課題を抱える上位好走馬
2着は4人気ヒストリーメイカー。ここ2戦は地方のダートで苦戦を強いられていたが、2戦2勝の得意舞台阪神ダートで息を吹き返した。道中はクリンチャーの背後をとり、徹底的にマーク。この作戦も功を奏した印象だが、クリンチャーを脅かすような場面はなく、時計を要した最後の200mは脚色が同じになってしまった。阪神コースだったことも大きかったようで今後は別の競馬場で再度好走できるかがカギとなる。
最後方待機のエイコーンが4着エアアルマスを最後に捕らえて3着。厳しい流れを見越しての待機策が当たった。シリウスSの回顧でも最内から苦しい競馬をしながら最後まで伸びた点を強調したが、再び9人気3着と激走した。高倉稜騎手と手が合うようで、地味ながらここ2走人気以上に走っており、充実期にあるようだ。メンバー次第では上位人気に押されてしまうので、そうなった際の取捨選択に悩むだろう。自力で流れを作れるタイプでなくダートでは特に買いどころが難しい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
《関連記事》
【エリザベス女王杯】5歳馬不振でラッキーライラック、ノームコアに黄色信号 当日まで覚えておきたいデータとは
【武蔵野S】「関西馬3着内28頭」「前走1400m6勝」「前走1着馬6勝」など 覚えておきたいデータ
【福島記念】超がつく難解なローカル重賞 攻略のヒントとなるデータは?
