【天皇賞(秋)】「牝馬」「前走1番人気」「安田記念組」のアーモンドアイ視界良好 穴候補も牝馬

門田光生

2020年天皇賞(秋)データインフォグラフィックⒸSPAIA

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今年は古馬の戦い

菊花賞は見ごたえのあるレースだった。ルメール騎手騎乗のアリストテレスがスタート直後からコントレイルを徹底マークし、「馬場のいい外へ絶対に出させない」という鉄の意志を感じた道中。結果的に最後の最後まで苦しめた。馬の能力に自信がないとできない作戦。久しぶりの騎乗だったが、レース前はやれる手ごたえをつかんでいたのかもしれない。

もう一つのキーポイントは和田竜騎手騎乗のディープボンド(コントレイルと同馬主)。ずっとコントレイルの斜め前を走っていたが、もしかしたら道中はコントレイルが折り合うための壁役に、そして最後に馬場のいい外へ進路を譲る作戦だったのではないか。

あくまで推測でしかないが、実際に直線入り口でこの2頭がきれいに内外入れ替わっている。欧州ではよく見られるチームプレー。もしこれが予定通りだとすれば、任務を遂行し、さらに寸前まで馬券圏内に粘っていたディープボンドの力も相当なものと思われる。

今週のGIは東京競馬場で行われる第162回天皇賞(秋)。出走してくれば有力候補になったであろう3歳馬サリオスの名前がなく、登録馬は全て4歳以上。文字通り古馬による中距離路線の頂点を争う一戦となった。

昨年は出走していた2頭の牝馬が1、3着。はたして傾向的にも牝馬が強いレースなのか、また多数出走するディープインパクト産駒の成績はどうなのか。今回も2010~2019年までの過去10回のレースデータを基にして検証していきたい。

近年は牝馬優勢

年齢別



今年の出走馬は全て4~6歳となっている。最も勝ち馬を出している世代は5歳馬で6頭が該当。連対馬だと4歳世代の10頭が最多。この2世代で勝ち馬10頭、連対馬は18頭となっており、ほかの世代に対して優位に立っている。

3歳世代も2頭が連対しているが、今回は出走馬がおらず、6歳以上に関しては連対すらしていない。

性別

注目の性別だが、牡馬・セン馬8勝(16連対)に対して牝馬は2勝(4連対)。一見、牡馬・セン馬が圧倒しているようだが、これは牡馬・セン馬の出走馬が多いため。牝馬の勝率15.4%、連対率30.8%は、牡馬・セン馬のそれぞれ5.2%、10.3%を大きく上回る。

同じ中距離の牝馬限定GIエリザベス女王杯ではなく、あえてここに使ってくる馬はそれなりの勝算があってのこと、というわけだろう。

前走着順より人気を重視

前走着順



前走人気



秋華賞や菊花賞は、前走で好走というのがほぼ必須条件だったが、古馬レースの天皇賞(秋)はどうだろうか。前走3着以内に入った馬は13連対。まずまずの成績といえるが、6着以下からも6頭が連対して巻き返しに成功している。前走で1秒以上負けた馬も3連対しており、前走で大敗したからといって大きく評価を落とす必要はなさそうだ。

前走着順より強いデータが出ているのは前走人気。1番人気に支持されていた馬は【7-4-2-18】で勝率22.6%、連対率33.5%とかなり高い数字。このレースでは前走着順より前走1番人気のデータを重視したい。

前走レース



天皇賞(秋)の前哨戦といえば毎日王冠と京都大賞典が頭に思い浮かぶが、この2レースは明暗が分かれている。毎日王冠はここ10年で6頭の連対馬を輩出。6頭というのは少ないように見えるが、前哨戦としては最も多い数字である。

一方の京都大賞典は2015年の優勝馬ラブリーデイ以外は全て着外。ちなみに、2000~2009年の10年間は連対数1位が毎日王冠で、2位は京都大賞典だった。どうやら時代は変わってしまったようだ。

他の前走で取り上げたいのは安田記念。【1-2-0-3】と出走頭数は少ないながらも、連対率5割は特筆すべき数字。ここ5年以内に範囲を狭めると【1-2-0-1】とさらに確率が上がる。今年はアーモンドアイとダノン2騎がここから参戦。確率的に3頭のうちどれか1頭は絡みそうだが、さて。

ちなみに、前走がオープンかGⅢを使っていて馬券に絡んだ馬はいない。

シンプルに牝馬上位で

登録の段階で12頭だったので、その時点でフルゲート割れが確定。競馬は見るにしろ、馬券にしろ、多頭数の方が絶対に面白いので残念なのだが、出走する半分以上がGI馬勝ち馬。「量より質」での熱戦を期待しよう。

今回のキーポイントデータは「4、5歳」「牝馬」「前走1番人気」そして「安田記念」となる。

「牝馬」という時点でアーモンドアイ、クロノジェネシス、スカーレットカラーの3頭に絞れる。このうち、スカーレットカラーは前走が「3着以内なし」のGⅢ経由なので脱落。クロノジェネシスは「前走1番人気」「前走が安田記念」に該当せず、逆にその両方を満たしているアーモンドアイの方が上となる。

アーモンドアイは安田記念を1番人気で負け、秋初戦でここに挑んでくるという昨年と同じパターン。近3走で1勝はこの馬にしては物足りないのも事実。ただ、有馬記念の原稿でも書いたが、あのレースは負ける要素が十分にあったと思うし、前走の勝ち馬グランアレグリアもまた、続くスプリンターズSの勝ちっぷりからマイル以下なら怪物級と感じた人も少なくないはずだ。よって、昨年と同等の評価をしていいだろう。

同じく安田記念から挑むのはダノンキングリーとダノンプレミアム。安田記念から連対した3頭はいずれも「前走2番人気以内」だったのだが、この2頭は5、4番人気でそこから外れている。また、ディープインパクト産駒はなぜかこのレースの勝率がよくない。頭で狙うのは難しそうだ。

前走1番人気で、年齢制限に引っかかっていないフィエールマンはどうか。天皇賞(春)組はサンプルが少なく過去5頭だけ。最高着順は2011年ペルーサの3着。通常、天皇賞(春)から直行というローテーションは、中間に何かあった場合が多いと考えられる。

フィエールマンはラジオNIKKEI賞から菊花賞を勝つという離れ業を成し遂げた馬で久々は関係ないニュータイプだが、今回に関しては予定していたオールカマーを回避するというアクシデントが発生している。これまでのように狙っての一戦でないのなら、これも押さえるか迷うところ。

ブラストワンピースは年齢をクリアしているが、特に加点も減点もない。ところでこの天皇賞(秋)だが、ここ10年で9頭の種牡馬が勝ち馬を出しているという、父系混戦のレースでもある。ブラストワンピースの父ハービンジャーは勝ち馬に名を連ねておらず、今年も違う種牡馬から優勝馬が出ると考えるなら面白い1頭といえる。

今年の登録馬でここ10年勝ち馬を出していない父を持つのは、ほかにウインブライト(父ステイゴールド)、キセキ(父ルーラーシップ)、クロノジェネシス(父バゴ)、スカーレットカラー(父ヴィクトワールピサ)が該当する。

結論だが、今回はアーモンドアイの連覇達成が濃厚とみたい。相手も同じく牝馬のクロノジェネシス。次いでブラストワンピース、ダノン2騎、フィエールマンの順となるのだが、ここで取り上げたいのはスカーレットカラー。GⅢ経由ということで本命候補からは消したが、牝馬で前走1番人気、さらにここ10年で勝ち馬を出していない父系と加点要素が多い。大穴候補として加えておく。

◎アーモンドアイ
〇クロノジェネシス
▲スカーレットカラー
△ブラストワンピース

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
1990年以降、天皇賞(秋)が12頭立て以下になったのは一度だけ。サイレンススズカが競走中止した、1998年以来のことです。あれから22年。強いと感じた馬こそいても、あの馬より速いと感じた馬は1頭もいません。



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