【天皇賞(秋)】名牝クロノジェネシス、アーモンドアイに黄色信号 当日まで覚えておきたいデータ
勝木淳
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枠番、東西別成績
登録馬12頭。重賞タイトルホルダー11頭、唯一の重賞未勝利馬ジナンボーも前走はGⅢ2着、少数ながら精鋭が集う天皇賞(秋)、注目は前年覇者アーモンドアイと宝塚記念を圧勝したクロノジェネシスの4、5歳女王対決。
この2頭、天皇賞(秋)で勝つのはどちらか、はたまたそれ以外の馬なのか。様々なデータを駆使して紐解いていく。なおデータは過去10年間のものを使用する。
2角奥にやや無理して引き込んだスタート地点からはじまる東京芝2000mは、かつて外枠絶対不利だった。馬場改修で改善されたものの、外枠は依然厳しく、7枠【0-2-2-22】、8枠【0-0-2-25】と過去10年勝ち馬は出ていない。
複勝率はそれぞれ15.4%、7.4%なので外枠に入った馬は割り引いて考えたい。ただし決して内枠が有利なわけではなく、外枠割引と覚えておきたい。
今年の登録馬は美浦7頭、栗東5頭で東が西を上回ったが、全体的に中距離路線はことさら西高東低が続く。
関西馬の層は厚く、天皇賞(秋)も過去10年の出走馬は美浦62頭、栗東106頭、数で関西馬が圧倒している。しかし、確率でいうと美浦【4-4-4-50】勝率6.5%、複勝率19.4%、栗東【6-6-6-88】勝率5.7%、複勝率17%でほぼ互角。わずかながら関東馬の好走確率が高い。
直近5年間で3勝(16年モーリス、18年レイデオロ、19年アーモンドアイ)と関東馬の好走が顕著。連覇を狙うアーモンドアイを含め、登録数で関西馬より多い関東馬の攻勢は今年も続くだろうか。
もう少し美浦所属について突っ込んでみる。トップ10のなかで天皇賞(秋)に管理馬を登録した関東の調教師は、堀宣行【1-2-0-9】(ジナンボー)、国枝栄【1-0-0-0】(アーモンドアイ)のふたり。
国枝師は過去10年で出走がアーモンドアイのみというのも意外だが、凡走なしは狙ったレースを確実にものにする同師らしいデータともいえる。
クロノジェネシス、アーモンドアイにとって気になるデータとは
今年の天皇賞(秋)を攻略する上で重要になりそうなデータが年齢別だ。
6歳以上は、過去10年で3着1回のみで不振(キセキ、ウインブライト、カデナ、ダイワキャグニー)。3歳馬のエントリーはないので、注目は4歳【4-6-4-30】と5歳【6-2-4-36】になる。クロノジェネシスとアーモンドアイが該当するデータなのでしっかり掘り下げたい。
まず4歳馬。前走クラス別成績からGⅠ組【2-3-2-8】が優勢。下からあがってきた馬ではなく、春にGIへ出走するぐらいの実績馬であることが条件となりそう。またGⅠ組はGⅡ組【2-3-2-20】とは字面では互角も確率では上。
つまり休み明けでステップレースを使う組よりGⅠからGⅠへというトレンドローテでここに出走する馬の好走率が高い。(クロノジェネシス、ダノンキングリー)
主要ローテの毎日王冠は【1-2-2-7】勝率8.3%、複勝率41.7%。複勝圏内には来るが、勝ち切るケースは少ない。4歳で毎日王冠から天皇賞(秋)を勝ったのは、13年ジャスタウェイが最後だ。
安田記念【1-2-0-2】が目立ち、宝塚記念も【1-1-1-5】と悪くはなく、クロノジェネシスに減点はないものの、4歳なら安田記念(7着)から出走するダノンキングリーを加点したい。マイルGⅠに2回出走しているが、適性は春の戦歴から1800m前後の中距離型。むしろ天皇賞(秋)こそ狙うべきではなかろうか。
過去10年前走GⅠを勝った馬の天皇賞(秋)出走というのは例がない。昨年のアーモンドアイは安田記念3着。クロノジェネシスは過去10年でみると、前例なき挑戦である。
2000年まで対象を広げると05年スズカマンボ、07年アドマイヤムーンの2頭がいるが、天皇賞(秋)は13、6着と惨敗。しかもこの2頭、いずれも春最終戦のGⅠが雨の影響から時計を要する中長距離戦だった。そこを勝ち、時計が出やすい東京の天皇賞(秋)で凡走というのはある意味理にかなっており、そう考えるとクロノジェネシスも似たパターンといえば似たパターンだ。
前項で評価したダノンキングリーは前走6~9着【0-0-1-2】に該当し、これも加点しにくい。
同じデータを5歳でみると、前走GⅠ組【1-2-1-9】、前走GⅡ組【5-0-3-24】と4歳とは逆転傾向でステップレースを使った馬が強く、直行ローテの信頼度は下がる。ひとつ年を取ることで、休み明けから能力全開となりにくくなるという可能性はある。
複勝率は3割を超えているので、走らないわけではないが、休み明けでGⅠを勝ち切るという芸当は5歳馬には難しくなっているかもしれない。
毎日王冠【2-0-2-8】、京都大賞典【1-0-0-2】、札幌記念【2-0-1-7】とステップレースが当然上位にくるが、アーモンドアイ以外の登録5歳馬は前走天皇賞(春)のフィエールマン、前走宝塚記念のブラストワンピース、前走安田記念のダノンプレミアムなどGⅠ直行ローテばかり。前走非GⅠ出走組のスカーレットカラーとジナンボーは前走GⅢでちょっと厳しい。
天皇賞(秋)連覇といえば02、03年シンボリクリスエスのみだが、同馬は3、4歳で達成。過去4、5歳で天皇賞(秋)連覇を狙ったウオッカ、ブエナビスタの名牝2頭はいずれも5歳時は敗戦。
5歳秋に牝馬が天皇賞(秋)を勝つのは難しく、1986年以降5歳牝馬は【1-1-2-15】。勝ったのは05年ヘヴンリーロマンスのみ。これまで競馬の常識を打破してきたアーモンドアイ、果たして新たな歴史の扉をこじ開けられるだろうか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
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