【秋華賞予想】狙うは「器用さのある差し馬」 紫苑S組のパラスアテナ、マジックキャッスルに注目

三木俊幸

2020年秋華賞馬場適性チャートⒸSPAIA

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雨の影響からか外差し馬場

無敗の3冠牝馬誕生なるか──。今年の秋華賞(GⅠ・芝2000m)の注目はその一点に集まっていると言ってもいいだろう。期待を一身に背負うデアリングタクトは、春の桜花賞とオークスを見る限り、能力が抜けている。そこで今回は、一矢報いたいライバル勢の中からこの舞台に適性の高い馬を探すべく、馬場適性の観点から分析していく。

クッション値



まずは先週末の京都競馬場の馬場について振り返っていこう。水曜日に4.5mm、木曜日に31.5mm、金曜日に33.0mmの雨が降り、金曜日の時点でのクッション値は7.8で「やや軟らかめ」。その後も雨が続き、土曜日の朝に測定されたクッション値は7.2まで低下した。不良でスタートしたものの、後半に重に回復、日曜日の朝には稍重まで順調に乾き、クッション値も9.4と「標準」の数値となっていた。

京都芝時計と上がり



タイム面では、土曜日に行われた1600mの2歳新馬戦が1:36.6で決着。勝ったアールドヴィーヴルの上がりは34.9と、不良馬場とはいえ開幕週だったこともあり、想定したほど時計はかかっていなかった。稍重となった日曜日の京都大賞典は前半1000mの通過が1:00.4のMペース、勝ちタイムは2:25.6と標準的で、1〜3着馬の上がりは34.5、34.3、34.4だった。

京都芝通過順



続いて3着以内に好走した馬の通過順位を見ると37.5%が4角3番手以内と、ある程度先行有利の傾向は見られた。その一方で、4角で中団より後ろにいた馬も41.7%。渋った馬場の影響があったにせよ、差しもまずまず決まっている。特に日曜日、直線で外を通った馬の好走が目立っていたことは頭に入れておきたい。

穴候補は紫苑Sの惜敗馬

ここからは注目馬の適性について馬場適性チャートを用いて詳しく見ていく。 縦軸は高速馬場を得意とするスピード型か時計のかかる馬場に強いパワー型かを示す指標、横軸は上がりの速い馬場に強い瞬発力タイプか上がりのかかる馬場を得意とする持続力タイプのどちらに分類できるかを表している。

秋華賞馬場適性チャート



今週の土曜日は雨予報。秋華賞当日は天候が回復しそうだが、先週の日曜日より少し速い程度の馬場になると想定している。ある程度の持ち時計と上がりタイムの実績があり、「内回りコースに対応できる器用さがある差し馬」を狙うのが面白そうだ。

【デアリングタクト】
オークスでは中団より後ろを追走、直線で進路が開けてからの末脚はさすがといった内容だった。道悪適性は桜花賞で証明済み、京都の内回りコースも何ら問題ないだろう。超高速馬場にはならないこと、先週は外差しが決まる馬場だったということを踏まえると、どっしりと構えて乗っても3冠達成は濃厚だと考える。

【リアアメリア】
阪神JF、桜花賞とマイルGⅠでは結果を残せなかったが、2走前のオークスでは4着と巻き返し。前走のローズSでも勝利していることからも2000m以上の距離があっているようだ。オークスまでは差す競馬だったが、ローズSでは2番手で折り合うレースができており、その経験は今回プラスに働くだろう。ただし、器用さのあるタイプではなく、本質的には外回り向きで馬場も乾いてほしい。

【ウインマリリン】
オークスはフローラSと同様、好位追走から最内を突いた見事な立ち回りだった。切れる脚はないが器用さがあるタイプということで京都の2000mは合っているようにも感じるが、中間に一頓挫があってひと叩きできなかったことを踏まえると、押さえまで。

【ウインマイティー】
オークスは見せ場を作ったものの、最後に交わされて3着。前走の紫苑Sはスタートで後手を踏んで後方からのレースとなり、6着に終わった。しかし2着馬とは0.1秒差、今回スタートを決めれば十分巻き返しは可能。速い上がりが使えるタイプではないので、少しでも上がりがかかるタフな馬場になってほしい。

【マジックキャッスル】
オークスは直線で不利がありながら、上がり33.4を使って5着と見せ場は作った。前走の紫苑Sは得意とは言えない馬場条件で、いつもより前目の8番手追走から流れに乗ってレースを進め、僅差の4着という内容は評価できる。前走馬体重が422kgと小柄な牝馬なだけに、輸送による馬体減が心配ではあるが、馬場条件は好転するので高く評価したい。

【パラスアテナ】
紫苑Sでは勝ち馬から1.1/4馬身差をつけられたが、終始外を回った分の差だと考えていい。器用さのあるタイプで、京都の内回りコースも合っていると考える。稍重で結果を残しているが、3走前のカーネーションCは1:45.9、上がり33.3を使って2着馬に0.3秒差をつけて勝利しており、高速馬場の瞬発力勝負になっても問題なし。穴として面白い存在だ。

▽秋華賞予想▽
◎デアリングタクト
○パラスアテナ
▲マジックキャッスル
△リアアメリア
×ウインマイティー
×ウインマリリン

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。

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