【京都大賞典予想】17頭中11頭が休養明けで波乱の条件は整った 本命候補は昨年の3着馬シルヴァンシャー
山崎エリカ
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なぜ京都大賞典は荒れるのか
昨年の京都大賞典(GⅡ・芝2400m)は、11番人気トレッドノータス→6番人気ダンビュライト→5番人気シルヴァンシャーで決着し、3連単181万1410円の超高配当決着となった。その他にも、2013年にも断然1番人気に支持されたゴールドシップが5着に敗れ、11番人気のヒットザターゲットが優勝。3連単361万9290円の目玉が飛び出す、ウルトラ高配当で決着している。
なぜ、京都大賞典は荒れるのか——。それはこのレースが天皇賞・秋やジャパンCの前哨戦で、実績馬が休養明けで挑んでくることが多いからだ。先週のスプリンターズSを快勝したグランアレグリアのように、短距離ならばスピードで押し切れる場合もある。しかし、距離が長くなるとスタミナの比重が大きくなり、スピードだけで押し切るのは困難になる。
近年は育成技術が進化し、フィエールマンのように休養明けでも長丁場をこなせる馬もいる一方、同じ「1着」でも指数を下げてしまっている場合も多い。また休養明けのスタミナ不足をカバーするため、パフォーマプロミスのように、本来の距離適性よりも短い距離を使うことで結果を出す場合もあるが、そのパターンはそれほど多くない。今年の宝塚記念のグローリーヴェイズのように、負けてしまうのが通常なのだ。
また昨年は、ダンビュライトが逃げて2着に粘ったが、他に逃げて馬券に絡んだ馬は、2003年のタップダンスシチーまで遡らないといない。これは京都芝2400mが逃げ馬に厳しいのではなく、ペースの緩急が付きやすい条件では、逃げ切るのは厳しいということを示している。
まとめると、京都大賞典は「レースを順調に使われている馬のほうが有利」であり、同じ休養明け、同じような実力ならば、「逃げ、先行馬よりも差し馬」を狙ったほうがいいだろう。
しかし今回ように17頭中11頭が休養明けとなると、前記条件ばかりでは、結論を出すのは難しい。「本来の距離適性よりも、今回の距離が短い馬狙う」のもひとつの手段だが、前走調整過程で余力を残し、レースで負けた「能力はあるが、前走で凡走している馬」を狙うことをオススメしたい。
能力値1位はキセキ
【能力値1位 キセキ】
前走の宝塚記念では、見事に復活して2着。指数も一昨年のジャパンCでアーモンドアイの2着となった時と同等で立派だった。ただし、宝塚記念は前夜から朝にかけての降雨や直前のゲリラ豪雨の影響を受けて道悪。トーセンスーリヤがオーバーペースで逃げたこともあり、大半の馬がバテる消耗度の高いレースになった。
上位入線馬は大きなダメージが残っている危険性があり、キセキはかつて極悪馬場の菊花賞を制した後、しばらくスランプになったこともある。能力面から軽視できないが、宝塚記念から3ヵ月ちょっとの間にどこまで疲労が抜けているか問題で、今回に関しては半信半疑だ。
【能力値2位 キングオブコージ】
デビューからマイル以下のレースを主体に使われていたが、今年1月に芝2000mの1勝クラスを勝利して以降、距離を延ばして本格化。前々走の湾岸Sでは、3勝クラスながらオープン級の指数で快勝し、勢いに乗って目黒記念も優勝した。近2走の走りがここで再現できれば、当然ながら通用するだろう。
ただし、目黒記念はやや出負けして、最内の後方4番手でレースを進めた。日本ダービー後のレースは、騎手の昂揚感で緩みないペースになることが多く、今年の目黒記念も例に漏れず、前に行った4頭は14着以下に大敗。このように展開がハマって好走、PP指数最高値を記録した後にはスランプに陥ることがある。休養させたことで、ある程度は疲れが取れているにせよ、過大評価はできない。
【能力値3位 ステイフーリッシュ】
トップクラス相手では決め手不足だが、AJCC2着、京都記念3着、目黒記念3着、そして前走オールカマー3着と、先行して安定した走りを見せている。前走はこの馬向きのタフな馬場で能力全開が期待されたが、伸びずバテずの結果。スローペースだっただけに、「もっと積極的なレースをしていれば……」という声もあったが、この馬としてはおおよその能力は出している。
今回は1Fの距離延長となるが、緩みないペースの目黒記念でも先行して3着と善戦しているように、距離が延びるのは悪くない。馬場悪化で他馬が決め手を削がれるぶん、この馬には好材料となるだろう。仮に京都の芝が開幕週らしい高速馬場だったとしても、積極的にポジションを取れば問題ないはず。ただ今回はかなりレース間隔を詰めての続戦だけに、体調面がどうか?
【能力値4位 パフォーマプロミス】
2018年に日経新春杯やアルゼンチン共和国杯勝ちの実績があり、昨年は天皇賞・春で3着と善戦したステイヤーだ。前走は芝2000mの鳴尾記念で重賞3勝目を挙げたが、これは最内枠を利して最短距離を立ち回ったもの。
また今夏の阪神開幕日は例年のような超高速馬場ではなく、標準に近い高速馬場だったために、ややスピード不足の馬でも対応しやすかったので、前走からの距離延長は問題ない。
ただし、1年1ヵ月もの長期休養明けでこの馬のPP指数の最高値に近い走りをしてしまうと、ダメージが大きいだろう。今回もレース間隔を十分にあけて、再度の激走を狙うが、長期休養明けで激走レベルの走りをすると容易に疲れが抜けず、立て直しきれていないことも多い。
【能力値5位 バイオスパーク】
昨秋に休養明けながら嵯峨野特別を勝利。その次走は二走ボケで大きく成績を下げたが、以降は指数を徐々に上昇させながら、安定した走りを見せている。特に前走の函館記念は、連続開催最終日の函館らしく時計が掛かった中、前半5F58秒8のオーバーペースを先行して3着とレース内容が濃い。
今回は今年6月以降休養している馬がほとんどだけに、それらの馬たちが不発に終わるようなら、順調に使われている強みを生かして上位に食い込むシーンがあっても不思議ない。
PP指数の最高値が最も高い馬は?
PP指数の最高値が最も高いのは、グローリーヴェイズ。2019年天皇賞・春でフィエールマンと大接戦を演じた、4走前の指数がメンバー中で最も高い。ドバイ出走が叶わずに、ぶっつけ本番で挑んだ前走の宝塚記念は、出遅れて後方からとなり、促がしても前に行けず17着大敗。2走前の香港ヴァーズでも、ラッキーライラックを3馬身突き放す圧倒的なパフォーマンスを見せていただけに、宝塚記念は物足りない。
ただし、宝塚記念は例年馬場が悪化することもあり、過去10年では大阪杯以降に出走していなかった馬は全て馬券圏外に敗れている。7ヵ月の休養明けだったことを踏まえると、情状酌量の余地がある。今回はおそらく前走時よりも馬場が良く、休養期間も3ヵ月と短いだけに、前走よりも好走する可能性が高いと見ている。
本命候補馬は?
本命候補として、4走前の境港特別で2勝クラスとしてはかなり優秀な指数を記録したシルヴァンシャーを取り上げる。同レースで2着に降した相手は、のちにオーストラリアでGⅠ・コーフィールドCを優勝するまでに出世したメールドグラース。シルヴァンシャーが最後方の外から早めに位置を上げて勝ちに行ったところを、メールドグラースが内から必死に抵抗したレースだったが、内容はシルヴァンシャーのほうが明らかに上で、着差以上に強かった。
その後は順調さを欠きながらも、昨秋の京都大賞典では3着と好走。前走の天皇賞・春は7ヵ月の長期休養明けで距離も長すぎたために14着と大敗したが、無理をしていないので疲れは残っておらず、持久力の底上げが見込めるだろう。素質の高さは4走前に証明済みだけに、秘めていた能力が開化することに期待する。
穴馬候補は?
冒頭でも触れたように、やや実力が足りないと感じたとしても、夏場を順調に使われている馬たちを穴馬候補としたい。
該当馬は京橋特別、博多Sと先行策で連勝を収めてきたカセドラルベル。だいぶ改善されてきたもののスタートが遅く、内枠であまりペースが上がらなかった場合は包まれる危険性もあった。しかし、今回は幸いにも中枠。まだ8戦のみとキャリアが浅い馬だけに、さらなる成長力も見込める。
他では、超絶スローペースとなったアルゼンチン共和国杯で、後方追走から内を突いてメンバー最速の上がりで2着と好走したタイセイトレイルが怖い。昨年の京都大賞典を勝利したトレッドノータスや2014年に6番人気で2着と好走したタマモホットプレイなど、前走・丹頂S組は今回よりも長い距離を使われていた優位性を生かして、しぶとさを見せることが度々ある。
あとは宝塚記念からの直行になるが、昨年の2着馬ダンビュライトも穴馬候補に加えたい。前走の宝塚記念は先行馬にとても厳しいレースだっただけに、9着大敗も仕方のないところ。今年も昨年同様に何が何でも逃げたい馬が不在で、すんなり行けた時には強さを発揮するタイプなので、内枠を引き当てた今回は不気味さがある。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)キセキの前走指数「-219 は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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