【凱旋門賞】武豊・ジャパンで欧州最高峰に挑む 馬主キーファーズの「武豊率」は驚異の67%

SPAIA編集部

2020年凱旋門賞インフォグラフィックⒸSPAIA

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凱旋門賞に挑む武豊騎手

10月4日にパリロンシャン競馬場で行われるのは凱旋門賞(GⅠ・芝2400m)。凱旋門賞3勝目を目指すエネイブルや、英2冠牝馬ラヴが人気の中心と見られる。日本馬では昨年から海外を転戦し続けているディアドラが参戦。そして日本人騎手では唯一、武豊騎手が参戦する。

武豊騎手がコンビを組む馬は、その名も「ジャパン」。21年連続でアイルランドのチャンピオントレーナーに君臨する名調教師エイダン・オブライエン師の管理馬で、これまでにGⅠ2勝を挙げている一流馬だ。

このジャパンの権利を一部所有しているのが日本人オーナーのキーファーズ。代表の松島正昭氏は「武豊騎手で凱旋門賞を勝つ」ということを目標に、セレクトセールなどで高額馬を次々に購入しては武騎手に依頼する名物オーナーとして知られている。

今回の記事では、キーファーズの馬主参入から現在に至るまでの戦績から、その並々ならぬ「武豊愛」に迫ってみる。

初出走から丸2年は全て「武」騎手

キーファーズの中央競馬初出走は2014年7月(ミコラソン・2歳新馬)。もちろん鞍上は武豊で、7番人気の低評価ながら後方から追い込んで4着と健闘。翌15年1月に同じくミコラソンで待望の初勝利を挙げるが、このときの鞍上もやはり武豊だった。

以後、初出走から丸2年となる16年6月末まで、なんとキーファーズの馬に騎乗したのは武豊と、その弟の武幸四郎(現調教師)だけだった。16年の年末まででカウントすると62戦中47戦に武豊を起用。「武豊率」は76%というとんでもない数字になる。

キーファーズの武豊騎乗回数



最近は所有頭数が増えてきたこともあって以前ほど「全レースに武豊を」というスタンスではなくなったようだが、それでも通算の「武豊率」は67%。勝利数を見ても、中央競馬での通算34勝のうち実に29勝を武豊騎手で挙げている。ちなみに勝利数に占める「武豊率」は85%と、騎乗回数の割合を大幅に上回っている。チャンスのある馬はことさらに武豊騎手に集める傾向があるようだ。

億超えを次々に落札するも…

キーファーズの馬主業は、成績を見る限り必ずしも順風満帆ではなかった。

14年のセレクトセールにおいてラルク(父ディープインパクト×母ライラックスアンドレース。GⅠ3勝馬ラッキーライラックの半姉)を1億5660万円で購入したのを皮切りに、15年にはヴィニー(1億4580万円)、ジェニアル(1億7280万円)を落札。16年からもう一段金額が上がってカザン(2億5380万円)、17年キスラー(2億1060万円)、18年タイミングハート(2億520万円)と良血の高額馬を次々に購入している。(いずれも税込価格)

しかし、上記の億超え6頭の中で一番稼いだラルクですら中央競馬では1000万下(現2勝クラス)での2着が最高実績。総賞金も3335万円止まり。カザンに至っては5戦して5着以内にすら入ることができず、総賞金0万円で地方に移籍している。

中央競馬への参入から約4年間は高額落札馬以外でもこれといった活躍馬が出ておらず、間違いなく相当な額の赤字だろう。それでも良血馬を購入して武豊騎手に騎乗依頼するというスタンスを崩さなかったキーファーズは2018年7月に転機を迎える。

海外重賞制覇から上向きに

2018年、7月1日に所有馬チカノワールが勝利すると、翌週にもプリュスが武豊を背に勝利。連勝の勢いそのままに7月22日にはジェニアルをフランスのGⅢメシドール賞に出走させた。

ジェニアルは日本で500万下(現1勝クラス)を勝ったものの昇級後は2戦連続の5着。1000万下で頭打ちになった馬が海外重賞に出走すること自体、非常に珍しいことだが、母がディアヌ賞(仏オークス)を勝ったサラフィナという血統背景に根拠を持っての挑戦だった。

レースはもちろん武豊が騎乗。前半はゆったりとした流れの中を馬なりで逃げる形に。欧州特有の早い仕掛けに惑わされなかった好判断でゴール前までしぶとく脚を残し、一度は並ばれた2着馬を振り切って優勝。驚きの重賞制覇を成し遂げた。

これを機に運気が上向いてきたのか、秋にはジェニアルの弟にあたるゴータイミングが新馬戦を快勝。翌年のラジオNIKKEI賞で3着に入り、国内では初の重賞馬券圏内に。そして同年秋にはマイラプソディがデビューから3連勝で京都2歳Sを制し、ついに国内の重賞初制覇となった。そして冒頭で触れたように、今週の日曜にはいよいよ凱旋門賞に挑む。

思えば東日本大震災の直後、連日暗いニュースが流れる中でヴィクトワールピサがドバイワールドC制覇の偉業を達成し、競馬ファンに大きな希望を与えたこともあった。ウィルスとの戦いが続く中で行われる今年の凱旋門賞。これまで日本馬・日本人騎手を跳ね返し続けてきた重い扉をこじ開けるのは、案外こういう年なのかもしれない。ディアドラ陣営、ジャパン陣営に改めてエールを送りたい。

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