【オールカマー】大混戦の後半1000m勝負 追い込み決めたセンテリュオの勝因とは

勝木淳

2020年オールカマーインフォグラフィックⒸSPAIA

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読みにくい中山の馬場状態

秋の中距離戦の始動戦オールカマーは前走宝塚記念組が不在。フィエールマンの回避により前走GⅠ組は天皇賞(春)3着ミッキースワローと2年前の菊花賞以来となるオウケンムーンの2頭のみ。例年よりメンバーレベルが一段下がったレースとなった。

9頭立てながら単勝オッズ一桁台は5頭もいる上位混戦、一方で9頭立てでも単勝万馬券が2頭もおり、上下差のあるメンバー構成でもあった。勝ったのは5頭いた単勝オッズ一桁台のなかでもっとも高い5人気センテリュオ。簡単そうで当たらない馬券的な難易度の高いレースだった。

混戦のメンバーに輪をかけて予想を難しくしたのは中山の馬場だった。台風の影響から中間は毎日雨が降った中山の馬場は先週以上に重く、2勝クラスのマイル戦木更津特別は1分35秒7。その決まり手は番手抜け出し、2着は後方からの追い込み、3着は中団からの差しとバラバラ。

ここ最近の中山ではこうしたバラバラな脚質で決まることが多い。追い込みに先行、中団ではつかみどころがない。昨年の同週に2勝クラスのマイル戦が組まれていたが、こちらは1分32秒9、勝ったのは逃げた馬、2着は番手にいた馬といわゆる「いったいった」の競馬に最後追い込み馬が届かずに3着。今秋の中山は同じ競馬場なのかと疑いたくなるほど、馬場がまったく異なる。

木更津特別は前後半800m48秒9-46秒8、前半スローのわりに後半は46秒8とそれなりに時計を要した。残り1000mから11秒台のラップが続き、坂下からゴールまでの最後の200mでラップが落ちた。この最後の200mで時計がかなりかかるラップ構成は、急坂がある中山ならでは。

開催で目立つのは残り1000mからの加速ラップ。先週のセントライト記念も残り1000m勝負だった。オールカマーでは前半でジェネラーレウーノが13秒台を3度も刻む超スローペースで進み、後半1000mは11.6-11.9-11.5-11.5-12.2と早めのペースアップ。逃げ馬がペースをあげて突き放すというより、全体的に3角ぐらいから早めに押し上げてきて逃げ馬が抵抗するためにペースをあげている印象だ。

残り1000mから仕掛ければ、最後に待つ急坂で先行集団は自然と苦しくなる。前半3番手から3角で2番手にあがりジェネラーレウーノにプレッシャーをかけたカレンブーケドールが抜け出しながら、最後にセンテリュオに捕まったのは致し方ない。ドバイ遠征が中止になり、体調が整わなかった春を思えば上々の結果ながら、重賞勝利をまたも逃したのは痛かった。

一方、勝ったセンテリュオは自らが記録した上がり600m最速が35秒3だったマーメイドS2着と同じく、スローでも34秒5を要する馬場を味方につけた。残り1000mから周囲が仕掛けていく競馬で、欲を出さずに馬のリズムを重視。後方からやや遅れて仕掛けた点も勝因ではないか。スローで最後の600m33秒台といった瞬発力勝負だと着順を落とす傾向があり、今後も馬場状態次第だろう。

ただ、たとえ馬場が向かなくても安定して掲示板ぐらいに来る今年は充実期。勝っても人気になりにくいタイプで、馬場状態を見極めて狙えばおいしい馬券になりそうだ。

次走以降も狙いたい馬とは

3着ステイフーリッシュは直線で伸びを欠きそうになりながらも3着確保。後ろが伸びなかったからともとれるが、休み明けらしくやや前半から反応の悪い走り。後半1000mからのスパート勝負でも早い段階から手ごたえが悪かった。失速もやむなしといった状態で3着にしっかり粘りこんだのは力がある証。こちらも叩いた次は変わり身がありそうだ。

4着クレッシェンドラヴは、馬場が自身にとって願ってもない状態だっただけに残念。七夕賞とは一転して先行策をとったのが裏目に出ただろうか。スローを見越して早めの競馬をした作戦は悪くなかったが、クレッシェンドラヴにとって先行して早めのペースアップに対応する競馬は合わなかったかもしれない。

同馬は前半ゆったり入って上がり時計がかかる流れを後方から動く競馬がベスト。しかし、どうしても他力本願になってしまう分、成績は安定しない。陣営にとって歯がゆさは続くかもしれないが、もっとも力を出す競馬に徹すればまだまだチャンスはあるだろう。

1人気ミッキースワローは5着。休み明けでも走れる戦績だが、この日は反応が悪く、勝負所では後ろから来たセンテリュオにあっさり交わされた。本質は叩き良化型なのだろう。下半期は得意の中山に適鞍が少なく今後は苦しいところだが、天皇賞(春)3着で走れる条件の幅を広げている可能性があり、ステイヤー寄りの競馬になりやすい有馬記念で思わぬ好走があってもよさそうだ。

2020年オールカマーインフォグラフィックⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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