【神戸新聞杯】コントレイル完勝 理想的すぎた前哨戦を分析

勝木淳

2020年神戸新聞杯インフォグラフィックⒸSPAIA

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ポイントは前半の位置取りと4角出口

2人気グランデマーレの単勝オッズは最終的に19.9倍。コントレイルの単勝オッズは1.1倍。無敗の三冠馬を目指す同馬が秋緒戦の神戸新聞杯をどう勝つのか、優先出走権の残り二枠をどの馬が手にするのか、焦点はこのふたつだった。

ダービー以来のコントレイルは馬体重増減なしの460キロ。当時と変わらぬ雰囲気でパドックに姿を見せた。皐月賞で経験済みのフルゲートの1枠。当時は最初の正面直線で前に行かずに後方から進めたが、今回はスタートを決め、馬に行く気がありながらあえて積極的に前には行かず、一旦押さえて馬群に入れた。

中京芝2200mの1周目正面直線部分は長い。行ける余裕はありながら、馬群に入れたのは福永祐一騎手のなにかしらの意図を感じる。本番は800mの距離延長、菊花賞の最初の1000mは速くなり、中盤の1000mでペースが落ちる。レースの最初は馬群で我慢できることが重要。父ディープインパクトでさえ菊花賞の最初の3、4角で引っかかる素振りを見せた。

もちろん力があれば勝てるわけだが、理想は速くなる最初の1000mで他馬に釣られず馬群で我慢、いやリラックスできること。前半は落ち着くようにという意図があったのではなかろうか。

1、2角でラチ沿いを回りながら向正面では1列外に動いた。前半で少し動いて最後の進路取りに余裕を持たせた。空いたインコースにイロゴトシが入り、3列隊列の真ん中に入ってもコントレイルは動じない。4角のコーナリングを利用しつつ前にできた壁の外に持ち出すと、その外にいたのは同馬主のディープボンド。完ぺきだった。

きれいにスペースができた最後の直線。気合をつけつつ、右にやや行きたがるのを矯正するような手綱操作と見せムチ2回。理想的な形で消耗少なく前哨戦をクリア。最後の一冠を想定した課題もこなし、いよいよ無敗の三冠馬に向けて視界良好となった。

菊花賞へ向けて前進しそうな馬とは

2着ヴェルトライゼンデはダービーとは一変して待機策を選択。熱発でセントライト記念予定をスライドした影響が懸念されたが、無理をしなかったのか、あえて待機策を選択したのか。

コントレイルを意識せずに自分のリズムを重視した形のように思える。ここ一番、狙いを定めた池添謙一騎手は怖い。菊花賞で打倒コントレイルを考えているにちがいなく、何かこの待機策には意図があるのではないか。最後は強引にでも外に持ち出して末脚を伸ばし、2馬身差の2着。

相手は気合をつけた程度なので力差を感じずにはいられないものの、池添騎手は白旗をあげてはいない。サリオスが中距離路線を歩む以上、打倒コントレイル一番手としての意地をみせてほしい。

3着ロバートソンキーは14人気単勝万馬券、前走1勝クラス2着からの権利獲得は大きかった。こちらはコントレイルをしっかり意識して競馬を展開、道中は直後の外、最後の直線はコントレイルが抜けてできた進路をなぞるように抜け出してきた。伊藤工真騎手のナイスプレーだった。遅咲きのステイヤー的な臭いを漂わせるレース内容でちょっと面白い存在になりそう。初勝利はダービー前日の5月30日、キャリア4戦目でGⅡ3着は立派。既成勢力との対戦は今回がはじめて、そこで結果を出した以上、本番で軽視はできまい。

4着ディープボンドはダービー5着馬。歯がゆい成績が続くが、先行勢総崩れのなか、4角3番手外から4着に粘りきったのは能力の証。こちらも距離延長の本番でさらに前進が期待できるステイヤータイプだ。

5着ターキッシュパレスも不良馬場の新潟で2勝クラスを勝ったスタミナタイプ。スピードが足りないため現状では馬場に恵まれないと厳しいが、裏を返せばこの馬向きのスピードが殺される馬場になればどこかで一発は十分ある。

2020年神戸新聞杯インフォグラフィックⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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