【セントウルS】シヴァージは1分7秒台の決着なら本命候補 「前哨戦ハンター」ダノンスマッシュは今回買うべき?
山崎エリカ
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GⅠの前哨戦は全て優勝も本番では……
セントウルSは、芝1200m戦としては唯一のGII。サマースプリントシリーズの最終戦だが、スプリンターズSの意味合いも強く、一線級が出走してくることが多い。それもあって1番人気はここ8年連続で連対しており、あまり荒れていない。
今年の出走馬を見渡すと、昨年からGⅠの前哨戦は全て優勝しているものの、本番の高松宮記念、スプリンターズS、安田記念でことごとくドボン……のダノンスマッシュが1番人気濃厚。最近は、競馬記者やファンの間で「前哨戦は走るから」という認識になっているだけに、過剰人気となりそうだ。
しかし今春、それまでクラシックトライアルのチューリップ賞、ローズSを優勝し、一部で「前哨戦ハンター」と謳われたダノンファンタジーは、ヴィクトリアマイルの前哨戦である阪神牝馬Sで1番人気に支持されたものの、結果は5着に終わったことを忘れてはいけない。同馬に関しては、敗因として大幅馬体増が指摘されたが、そもそも実力不足(PP指数の能力値5位以下)という致命的な理由があった。
一方、ダノンスマッシュはここでは堂々の能力値1位。同馬がオーシャンSで記録した指数「-25」は、セイウンコウセイやミスターメロディなどのGⅠウイナーを差し置いて、ここではNo.1のもの。まともに走れば、当然ここでも勝ち負けになるが、GⅠでも通用する実力のがある以上、ここは叩き台に徹する可能性があることも視野に入れてもらいたい。
競走馬のピークは馬の個性や適性によるものもあるが、人為的なものがもっとも大きく、仕上げるか、仕上げないか、レースで楽を差せるか、負荷をかけるかで決まる。競馬が配当との戦いである以上、ダノンスマッシュの目標がここであることも視野に入れて、2〜3着に来る可能性が高い馬を本命にするのが好ましい。
能力値2〜5位の評価をまとめて紹介
【能力値2位 トゥラヴェスーラ】
前々走の福島テレビオープンでは、ややタフな馬場&ややハイペースを2番手の外から、ラスト1Fでしっかりと抜け出して完勝。前走の北九州記念は、モズスーパーフレアが玉砕逃げを打ったことで先行馬が総壊滅した中、中団の内目で控えたことで6着と上位着順を拾った。
トゥラヴェスーラは番手も差しもオッケーの自在脚質で、幅広い展開に対応できるのが魅力。このため大崩れしない。しかし、逆に言えば、突出した持久力や決め手がなく、最高値「-20」を記録した3走前の鞍馬S・クビ差2着時のように、平均ペースを先行して総合力を生かしてこその馬。ひと雨降って、1分7秒台半ばの決着なら連対圏内までチャンスがあるが、超高速馬場だと善戦止まりで終わる可能性もある。
【能力値3位タイ シヴァージ】
デビューからしばらくダートを使われていたが、芝の短距離路線の追い込みで開花。重馬場でかなり時計を要した北九州短距離Sでは、後方一気の追い込みを決めて勝利した。同レースは小倉芝1200m戦らしく、かなりのハイペースだっただけに、展開に恵まれての勝利だったのは明らかだ。
ただ、グランアレグリアと同じ上がり3Fを駆使した高松宮記念を含めて、近4走ともメンバー最速の上がり3Fを記録しているように、トップスピードの持続力が高い馬。現役スプリンターではグランアレグリアの次点の後半の速さを持っている。おそらく芝のキャリアが浅いことが盲点になっているだけで、北九州短距離Sのような競馬がベストではなく、グランアレグリアのように短距離では前の位置を取れたぶんだけ指数を伸ばしてくる可能性が高い。
シヴァージは二の脚が速いほうではないので、前に行くにも限界があるが、高速馬場を意識して早めに動いた場合が怖い。これまでの芝1200mの持ち時計は1分08秒0だが、1分7秒台の決着なら、ある程度後方からでも2着、3着には来られる可能性が高いと見ている。本命を視野に入れたい一頭だ。
【能力値3位タイ ラヴィングアンサー】
芝1400m戦の2勝クラス、3勝クラスを勝利した馬だが、芝1200m戦でリステッド競走を勝利。しかし、3走の春雷Sはややタフな馬場で逃げたライオンボスが後続に突かれてペースを引き上げたことで、前が崩れて差し、追い込み馬が台頭の流れに恵まれたもの。実際に同レースで殿一気でハナ差2着に浮上したマリアズハートがその後、函館スプリントS、UHB賞でともに9着に敗れている。
ラヴィングアンサーも本質的に芝1200mでは忙しく、芝1400mがベストの馬。特に芝1400mの前走・朱鷺Sでは、かなり後方からレースをしているだけに、芝1200mの今回では置かれる可能性が高い。3走前のようによほど前が崩れるような展開にならない限り、苦しいだろう。
【能力値5位 クライムメジャー】
長らくマイル戦を使われていたが、前々走から芝1200m戦を使われるようになって成績が再上昇した馬。前走の北九州記念は4着と、トゥラヴェスーラに先着した。ただし、前走は前記したように、モズスーパーフレアがオーバーペースで逃げたことで、展開に恵まれたもの。
また、前々走の福島テレビオープンでは6着に失速しているように、先行すると終いが甘くなる面がある。北九州記念のように、展開の後押しがあれば重賞で通用する実力はあるが、展開に恵まれて最高値を記録した直後の一戦となると、再度の好走が難しいだろう。余力がない可能性が高い。
GⅠ勝ちの実績馬セイウンコウセイとミスターメロティの評価は?
セイウンコウセイは、2017年の高松宮記念の優勝馬であり、昨春の高松宮記念の2着馬である。同馬は始動戦となった今年のシルクロードSでは逃げたモズスーパーフレアを突いて息を入れさせず、最後の直線でも先に動いて、馬場の良い外に出させないようにするなど、幸騎手らしい恐ろしい競馬をしている。結果、モズスーパーフレアと共倒れとなり、追い込み馬台頭の流れを演出した。
また、内田博騎手に乗り替わった前々走の京王杯SCは、逃げ馬不在を利して大外枠から逃げたダノンスマッシュの番手から。強い馬が逃げたので他馬は競り掛けられず、前残りが決まった。全盛期と比べてスピード面での衰えを見せているだけに、シルクロードSのように時計が掛かるか、ロスなく立ち回れればチャンスがある。内目の枠を引いた今回は一考の価値はある。
ミスターメロディは、昨年の高松宮記念の優勝馬である。近走はダート1200m戦とマイル戦を使われ、そこで物足りない競馬をしたことで、再び栄冠の地に戻って来た。馬が低迷しているというよりも、陣営が迷走しているようにも見えるのだが、今回が真価を問われることになるだろう。
中京芝1200mはベストの条件ではあるが、昨年の高松宮記念は内枠の利を生かして、速い流れを先行策から前の開いたスペースを埋めて行く競馬。直線ドン詰まりも覚悟した人気薄の立ち入りでのレースぶりだった。
案の定、4コーナーでは前にいた幸騎手のセイウンコウセイが4コーナーで先に動いてひとつ外に出して進路を失いかけたが、膨らんだおかげで、うまく進路が確保できての優勝。強かったのは勝ちに行ったセイウンコウセイのほうで、あまり褒められた内容ではなかった。
しかし、昨秋のスプリンターズSでは、外枠からロスを作りながら速い流れを勝ちに行って4着を死守しているように実力はある。つまり、GⅡなら通用する実力はあるということ。ここは変わり身を警戒して損はないだろう。
今回の穴馬は?
穴馬としては、ミスターメロディと並んで能力値6位になるタイセイアベニールがお薦めだ。同馬は3走前の鞍馬Sでは、上がり3F32秒6の鬼脚で追い込んでトゥラヴェスーラを撃破。これは決して展開に恵まれたわけではない。
近2走のCBC賞と北九州記念は、流れが速かったこともあり、置かれないように追走に脚を使ったことが末脚不発に繋がった。開幕週だろうと、前半でしっかりと脚をタメて後半に特化したレースをすれば、一発が期待できる。
トップスピードの持続力はシヴァージに見劣るが、瞬間スピードはタイセイアベニールのほうが上。毎度人気になっては馬群に沈む3歳馬よりも、リターンの大きいこの馬のほうが買う価値があるだろう。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ダノンスマッシュの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8 速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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