【紫苑S】ウインマイティーに不安点あり 参考レースから読み解く各馬の「潜在能力」

坂上明大

2020年紫苑S インフォグラフィックⒸSPAIA

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ハイペースの我慢比べ

2000年に施行されて以降、2015年まで秋華賞では1着1回3着2回と結果の不振が続いていた紫苑S組。それが2016年のGⅢ格上後は、16年1着ヴィブロスや17年1着ディアドラなど本レースをステップに秋華賞で上位争いする馬が続出している。秋華賞を占ううえでも、紫苑S組の実績を精査することは欠かせない。

※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。

【フローラS】
週中に多少の雨が降ったが、本レース時には平均~速めの馬場状態。Aコースは前年10月以来、約6ヵ月ぶりの使用。好走馬の直線平均進路は内ラチから5.2頭目だが、勝ち馬に限ると4.3頭目、連対馬は4.5頭目と内からの好走馬が続出した。ペースは58.6-60.1とこの時期の牝馬にはかなり厳しいラップ。風の影響も大きかっただろうが、タフさが求められるレースとなった。

2着馬ホウオウピースフルは終始行きたがる面を見せ、直線は進路取りにも苦労。ラスト1Fの失速度も低く、高いパフォーマンスを見せた2着であった。ただ、強風のタイミングを馬群でやり過ごした点は味方しており、やや評価が難しい一頭だ。

4着馬ショウナンハレルヤは終始外々を回る競馬。内外が反対であれば、上位馬との差はもっと詰まっていただろう。

5着馬スカイグルーヴは馬体重14キロ減でギリギリ。加えて、控えて折り合いがつかず。エピファネイア産駒はこうなると厳しい。立て直して、ストレスの少ない競馬なら巻き返し濃厚。

7着馬レッドルレーヴは積極策から直線で一時先頭に立つも、ラスト1Fで失速。積極的に乗り過ぎたか。

地力が問われた3歳牝馬頂上決戦

2020年オークス トラックバイアスインフォグラフィックⒸSPAIA


【オークス】
週中に40mmを超える雨が降ったうえに日照時間がほぼなかったが、日曜日の朝には含水率13%強まで回復。10R、11Rと上がり3F33秒台前半の時計も出ており、軽めの馬場コンディションでの競馬となった。内外、前後の差も感じられず、全馬が自身の力を発揮できる条件であった。

3着馬ウインマイティーは先団ラチ沿いで脚を溜めて、残り400m過ぎでは一時先頭に立つ。GⅠで3着の実績は当然地力があってこそだが、完璧なレースぶりと上がり3Fの内訳を見ると、上位2頭との比較では着差以上の力差を感じた。また、ゴールドシップ産駒でやや非力な面があるだけに、直線に急坂のある中山に替わる点も課題といえるだろう。

5着馬マジックキャッスルは後方待機から直線に賭ける競馬。残り400m過ぎでデアリングタクトに寄られて進路がなくなり、やや脚を余しての5着であった。上がり1Fはデアリングタクトに次ぐ好タイムだったが、後方一辺倒な脚質だけに今回も展開次第といったところか。

6着馬チェーンオブラブは出遅れて最後方から。上がり3Fはマジックキャッスルと同じ33秒4だが、内訳を見ると本馬は脚を使い切った形。マジックキャッスルとの比較ではやや劣り、不器用な馬だけに中山替わりもプラスとはいえないか。

8着馬ホウオウピースフルは力み気味の追走もこの馬としては許容範囲。直線は終始ふらつきながらで伸びそうで伸びなかった。ただ、中山替わりは大幅プラスだろう。

10着馬マルターズディオサは外枠もこたえただろうが、伸びずバテずで流れ込むレースだった。

雨馬場でパフォーマンスアップ

執筆時点で土曜日は一日雨予報。直線急坂の内回り2000m、かつ力のいる馬場ならホウオウピースフルに妙味あり。母がトライマイベスト=El Gran Senorの4×3のパワー血統で、同馬の仔のパワー資質は半兄ブラストワンピースが証明済みだ。穴馬候補は超良血馬ラヴユーライヴと道悪巧者ミスニューヨークの2頭。

◎ホウオウピースフル
☆ラヴユーライヴ
☆ミスニューヨーク

ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者40000人強)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、走法、ラップなどからサラブレッドの本質を追求することが生きがい。

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