今年の3歳は本当に弱いのか?条件戦では意外な好成績も
東大ホースメンクラブ
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不振が続く3歳世代
今週からいよいよ秋競馬の火蓋が切られる。数多の実力馬たちが覇を競うGⅠレースが目白押しだが、今年はさらにコントレイル・デアリングタクトによる史上初の同年度無敗牡牝三冠、アーモンドアイのGⅠ8勝がかかっており、歴史的瞬間を目撃する熱いシーズンに期待が高まる。
そんな秋GⅠの焦点の一つが3歳勢と古馬との対戦。前哨戦となる夏競馬ではNHKマイル3着馬のギルデットミラー、ダービー出走組のブラックホール、ワーケアが古馬重賞で着外に敗れるなど不振が続いているが、果たして今年の3歳馬は弱いのだろうか? 過去のデータを駆使して考察していく(使用するデータは1986年5月24日〜2020年9月6日)。
古馬重賞において3歳世代の先陣を切ったのは鳴尾記念のキメラヴェリテ。52kgの軽量とあって6番人気に支持されたものの、道中ポジションを下げる苦しい競馬で15着に大敗してしまった。続く中京記念でもNHKマイル3着馬ギルデッドミラーが堂々1番人気に推されたが6着、重賞戦線で上位を賑わせてきたプリンスリターンも14着に終わった。
以後新潟記念のワーケア(1番人気10着)まで8頭が古馬重賞に挑んだがいずれも着外と厳しい結果が続いている。
8月終了時点で3歳馬が古馬重賞で1頭も馬券にならなかったわけだが、同様のケースは実に2000年までさかのぼる。エアシャカールがクラシック二冠を達成し、アグネスフライトがダービーを勝った世代だが、その後古馬として平地GⅠを勝ったのはアグネスデジタルやタップダンスシチーなど4頭のみ。世代レベル全体としては高い評価は難しい。
コントレイルやサリオスといった最上位の馬と古馬の力関係はまだ不透明だが、上位クラスの馬については2000年のデータを念頭に疑問視した方がいいだろう。
条件戦・中長距離戦には光明も
重賞では苦戦が続く3歳馬だが、条件戦に目を向けると実は互角以上の戦いぶりを見せている。19年から降級制度が廃止された関係もあり、過去のデータと一概に比較できるものではないが、2020年の3歳馬は1986年以降でも勝率・連対率・複勝率全てでトップの成績を残している。
特に健闘しているのは2000m戦で【21-21-19-99】と複勝率38.1%。勝率が2割を超える2400m・2600mを加えた中長距離戦線は層の厚さを見せており、馬券で積極的に狙っていきたい。今後上級条件でも戦えそうな、楽しみが膨らむ勢力だ。
対照的に、重賞と同様に苦戦しているのが1200m・1600m戦。前者は複勝率24.8%、後者は複勝率25.6%と、降級制度があった時代の3歳馬と変わりない水準に落ちついている。特にマイル戦は回収率でも単複ともに50%以下と妙味にも乏しく、馬券の上では嫌いたい。
3歳世代を牽引するエピファネイア
今年の3歳馬を考える上で押さえておきたいのが新種牡馬成績。主な新種牡馬の対古馬戦での成績を確認していく。
新種牡馬の筆頭格に挙げられるのはエピファネイア。いきなり無敗の牝馬二冠馬デアリングタクトを出した実力は伊達ではなく、堂々の複勝率5割超えをマーク。2番人気以内では【8-5-2-3】と大半の出走馬が馬券になっており、古馬の壁を意識せずに馬券の軸に据えるべきだろう。
エピファネイアと並ぶ期待を背負い、2歳戦線では新種牡馬リーディングだったキズナは芝・ダート問わず安定した走りを披露。しかし勝ち馬は全頭が2番人気以内だったこともあり(3番人気以下は【0-5-6-36】)単勝回収率は50%にとどまっている。複勝率3割をキープしているゴールドシップも同様で穴党には推奨しにくい。
その他、アメリカのホープフルSを勝ったマジェスティックウォリアーは2020年3歳世代が日本供用後の初年度産駒となるが、ダートで【3-4-2-14】複勝率39.1%を記録。ベストウォーリアの父として日本競馬への適性の高さは証明済みだが、全体的な質の高さが目を引く。種付頭数が多かった馬で苦戦しているのはトゥザワールドと【0-1-0-17】のワールドエースぐらいで、現3歳世代でデビューした新種牡馬の産駒たちは条件戦を中心に古馬にも引けを取っていない。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。
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