3分でわかる JRAの馬場指標「クッション値とは?」 基準値は畳より少し硬い反発力

三木俊幸

クッション値インフォグラフィックⒸSPAIA

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良馬場でも芝の種類によって数値は異なる

JRAでは芝コースの状態を示す指標として「馬場状態」「含水率」を公表しているが、2020年9月11日からは新たに「クッション値」を公表する。そこで、クッション値とはどのようなものなのか、またどのようにして測定されるのかなど詳しく解説していく。

まずクッション値とは、その名のとおり馬場のクッション性を数値で表したものであり、競走馬が走行時に馬場に着地した際の反発力を数値化したものである。数値が高いと馬場の反発力が高く、硬い馬場だということができる。また含水率とも密接な関係にあり、含水率が高くなればなるほどクッション値は低くなる。

計測には、ゴルフ場やサッカー場、ラグビー場などで使用されている簡易型硬度測定器のクレッグハンマーを使用。2.25kgの重りを45cmの高さから自由落下させ、馬場に衝突した際の衝撃加速度を測定する。1箇所につき4回連続で重りを落下させ、4回目の数値がその箇所の測定値となる。コースの内柵から2〜3mの間の場所を測定範囲とし、ゴール前と4コーナーおよびその間の各ハロン地点で、各地点の平均値が公表される。

JRAでは競馬場ごとに芝草の種類が異なるため、クッション値の傾向にも違いが出ることが予想されている。札幌競馬場や函館競馬場のように洋芝を使用している場合、地下部に細い根が密集したマット層を作り、保水量も多いためクッション値は低くなる傾向にあるという。

一方で、夏場から秋にかけてのその他の開催では野芝のみが使用されており、野芝の地表付近を這うように広がるほふく茎は洋芝のマット層に比べて保水量が少ない。そのため、同じ良馬場でも野芝の競馬場では、洋芝より高い数値が出る傾向にあるという点は頭に入れておきたい。

クッション値の標準は8〜10

では、クッション値の基準はどうなっているのだろうか。

JRAの発表によると、クッション値は「8〜10を標準」とし、「10〜12がやや硬め」、「12以上が硬め」で数値が高くなるほど水分量は少なく乾燥気味。反対に「7〜8がやや軟らかめ」、「7以下が軟らかめ」と数値が低くなるほど湿潤気味の馬場となる。

2019年にJRAがイギリス、フランス、香港、オーストラリア、アメリカの主要競馬場でクッション値を測定したところ、概ね「7〜10」の範囲内という結果が見られた。一般的にJRAの馬場は高速馬場で硬いと言われることも多いが、果たして良馬場でどれくらいの数値が計測されるのか注目だ。

畳が7、体育マットは5

クッション値インフォグラフィックⒸSPAIA



路盤が硬い場所としてあげられるのは、石灰ダスト舗装がされた学校の校庭や公園。クッション値は63と競馬場の標準値の約8倍硬く、それより柔らかい陸上競技用のゴムチップ舗装でもクッション値22と約2.5倍の反発力がある。

競馬場と同じ天然芝のクッション値を見ると、野球場が10、サッカー場が9。身近なものでは畳が7で基準値より少し軟らかめ、体育マットが5という数値で水分をふくんだ軟らかめの馬場に該当すると思えば、イメージしやすいだろう。また、競走馬が調教で使用しているコースでは、脚元への負荷が掛かりにくいとされるニューポリトラックが7、ウッドチップコースが4となっている。

実際に取材で競馬場の芝コースを歩くと、開催序盤はエアレーションやシャタリングによって、フカフカした馬場となっているが、開催が進んだコースの内ラチ沿いに行くと硬くボコボコした全く違う状態となっていることを実感する。

そうした違いをデータから理解できるという面においても、クッション値が公表されるメリットは大きい。当面は数値の推移を注意深く見ていく必要があるが、予想するうえでも新たなファクターとなっていくことだろう。

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。

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