【新潟記念】勝ち時計平凡も異例の馬場状態と上がり600ｍ33秒1を記憶すべし

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ジナンボーの奇襲

ゴール前の攻防はまるで最終レースの直線競馬のごとく外ラチ沿いに馬群が固まった。観客がいればさぞド迫力だっただろうと思わずにはいられない。2年前の新潟記念もブラストワンピースが同じようなところを通って勝利した。あの年は当日こそ晴天だったが、前日土曜日は雨に祟られ、馬場が一気に悪化した。

今年は8月9日に不良馬場で終日競馬が行われてから、水はけ抜群の新潟の芝は徐々に傷んでいった。外ラチ近くを走ったブラヴァスとサンレイポケットが1、3着、進路どりは外ラチ沿いがベストだったということだろう。

勝ち時計1分59秒9は馬場改修後では05年ヤマニンアラバスタが記録した2分0秒1に次ぐ遅い記録。傷んだ馬場、外ラチ沿いまで広がった攻防など考えておかねばならない要因は多く、レベルが低いと安易には断じられない。

ウインガナドルが単騎で引っ張る流れは12.8－11.5－12.5－12.4－12.7で、前半1000ｍ61秒9。約8割が直線部分で占める新潟芝外回り2000ｍらしく、長い向正面ではペースは一向にあがらなかった。後続も向正面の荒れた内側を避けるように、馬場の真ん中に馬群が密集。外枠のブラヴァスは、やや折り合いに苦労していた。

注目は2着のジナンボーだ。スタートから枠なりに、1頭だけ馬群から離れた内ラチ沿いを走っていた。あえて馬群に入れないようにという作戦だったか、荒れた内側を終始走らせるタフな競馬になった。遅い流れのなか、1頭だったことで折り合いはギリギリの状態。向正面の終わり800－1000ｍで12秒7とペースダウンしたところで、コーナリングを利して内側から先頭。インを通ることで13秒0と、ペースを上げずに4角へ突入。

そこから11秒9と一気にギアチェンジしたことで、ウインガナドル以下好位勢は加速に対応できなかった。最後は懸命に馬場の真ん中まで持ち出し、状態がいいコースを目指したものの、ベストはブラヴァスが通った外ラチ沿い。終始馬場の悪いところを通りながら、頭差2着は価値がある。

昨年の新潟記念に続き2着、平坦、左回り、直線が長い新潟はジナンボーにとってベストな条件だった。これまでやや買いにくい馬だったが、適性をつかんだことで次走以降はジナンボーとは付き合いやすくなったのではなかろうか。

本格化気配が漂うブラヴァス

勝ったブラヴァスは、夏の新潟リーディングを獲得した福永祐一騎手がしっかり馬場を読んだ確信的な騎乗が光った。ジナンボーが作った残り800ｍから11.9－10.8－10.7の加速ラップにも手ごたえ十分で対応。七夕賞2着とは、まったく異なる適性で結果を出したあたりに本格化の気配が漂う。母ヴィルシーナも4、5歳でGⅠ連覇しただけにサマー2000シリーズチャンピオンとして挑む秋のGⅠが楽しみだ。

3着サンレイポケットは、これまでレース全体の上がり600ｍ34～35秒台の競馬を得意とするタイプだけに、スローペースからレース上がり33秒1に対応できたのは収穫。自身の記録は全体で2位の32秒4だった。

1位はサトノガーネットの31秒9。4角18番手から外ラチ沿いに飛び込み一気に伸びた。カデナに押し込められ、サンレイポケットが外にヨレ気味だったこともいくらか影響したか。

1人気10着大敗のワーケアはやや不可解。外目の枠から直線まで不利は見当たらず、進路も悪くなかった。馬自身の反応がイマイチだったようで、古馬の早い上がりに対応できなかった。

惜しかったのは7人気5着のサトノダムゼル。3勝クラスを勝ちあがったばかりだったが、2戦2勝の新潟、重馬場3勝の悪路への適性が最高にかみ合った。一旦はいい手ごたえで抜け出し先頭に立つシーンがあったが、併せる相手が近くにおらず、最後は馬が遊んでしまったか。

結果的にはスローペースの上がりの競馬となったわけだが、ここまで傷んだ馬場でもレース全体の上がり600ｍは33秒1。全体時計よりこの記録を評価し、頭に留めておきたいところ。秋の中距離戦線は東京が中心、上がり600ｍタイムが早くなるレースばかりだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』（中央競馬ピーアール・センター）にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。