【新潟記念】人気以上に能力が高いのはゴールドギア 差し馬有利の新潟コースで3歳馬ワーケアは人気に応えられるか?

山崎エリカ

新潟記念PP指数

ⒸSPAIA

過去7年は平均ペースで決着

新潟記念は距離2000mでありながら、ワンターンコースで行われる。芝2000mでワンターンコースなのは、当然、ストレートが日本一長い新潟だけ。最後の直線は569mと長く、トップスピードの質の高い馬ならば、最後方から強襲が可能。このため前半ペースがそれほど上がらない。

また、ブラストワンピースが制した一昨年のように、前半ペースが遅かった場合には、3コーナーの下り坂を利して逃げ馬が後続との差を広げにかかるため、そこでペースアップすることが多い。こうした理由から過去7年とも平均ペースで決着しているのが、このレースの特徴だ。

今回は有力視されている馬が差し、追い込み馬。そのうえ逃げ馬がウインガナドル1頭のみとなると楽に逃げて、想像以上に見せ場を作れそうな気もしてくる。本来は前に行ってこそのジナンボーがスタートを決められなかった場合には、ウインガナドルは向こう正面である程度リードを広げそうだ。しかし、今年は例年以上に馬場の内が悪く、過去10年でもっとも時計を要していることを考えると、外差し馬を有力視するのがベストだろう。

1番人気が濃厚のワーケアの評価は?

新潟記念PP指数インフォグラフィック


先々週の札幌記念では、クラシック路線で全く良いところがなかった休養明けの3歳馬ブラックホールが4番人気に支持された。確かに大きな伸びしろが見込めない古馬よりも、成長期の3歳馬のほうが変わり身が見込める。また、人の心理として将来性に期待したくなる気持ちは理解できるが、実力の裏付けがない。

一昨年に3歳馬のブラストワンピースが優勝しているが、同馬はデビューから3連勝しており、日本ダービーでは外から被されて、進路を失う不利があった馬。あわやダービー馬になっていた可能性もあった馬だけに、それとワーケアを比べた場合には明らかに見劣る。

ただし、デビュー2戦目のアイビーSで指数「-14」は立派。また、同日の富士Sを制したノームコアと0.1秒差の上がり3F33秒3を記録していることから、トップスピードの質が高い馬と言える。日本ダービーでは休養明けだったにせよ、最短距離を立ち回ってラスト1Fで甘くなった辺りからも、中距離で末脚を生かす競馬がベストではないだろうか。実力の裏付けがない人気の3歳馬は嫌ってこそ配当妙味だが、外差し馬場の芝2000mという条件は向くだけに、押さえる価値はありそうだ。

能力値1位はアイスバブルとブラヴァス

アイスバブルは2年連続で目黒記念2着となり、ここでは能力値1位タイ。同馬は芝2000mの重賞で2戦して2度とも掲示板にすら載れていないように、芝2500mがベスト。それもアルゼンチン共和国杯のようなスローペースではなく、ダービー直後のレースで騎手が高揚し、激流になることが多い目黒記念のペースが合っている。

今年の目黒記念も、やや出遅れて後方からジリジリ伸びたキングオブコージが優勝しているように激流。つまり、キングオブコージの一列前にいたアイスバブルも展開に恵まれたと言える。外差し馬場は悪くないが、この馬に優る末脚が使える馬がいることや、今回は秋を見据えた始動戦であることから、ここは狙い下げたい。

また充実一途のブラヴァスもアイスバブルと並ぶ能力値1位タイ。前走の七夕賞はタフな重馬場で、同馬よりも一頭内から皐月賞のゴールドシップのように追い込んだクレッシェンドラヴには敗れはしたものの、積極的な競馬での2着好走は悪くない。

ただ、七夕賞は馬場状態の良い、直線の外目を通せていたのは確か。鞍上の福永騎手はレース当日に馬場を歩くので、内中外のトラックバイアスが生じた場合に一番伸びるところを走らせてくることが多い騎手。外差し馬場は持って来いの条件だが、ステイヤー色の強い馬なので、もっと距離があるか力のいる馬場のほうが向いている。前々走の新潟大賞点のように伸びずバテずで善戦までの可能性が高い。

人気以上に能力があるゴールドギア

能力値3位はゴールドギアだ。この馬は1000万下の身で函館記念に挑戦した時こそ10着と崩れたが、それ以外はほとんど崩れていない。また函館記念を除く、昨年以降の自己条件では10戦中8戦でメンバー最速の上がり3Fを記録。残り2戦でもメンバー2位の上がり3Fを使っている。それも前走の目黒記念は直線の最内で進路を失い、待たされる不利があって上がり3F2位。

ゴールドギアは近4走とも出遅れているように、高確率で出遅れる馬。そこを考えると距離は長いほうがいいが、ストレートが長いコースの芝2000m戦なら、出遅れも容易に挽回できるので、大きな影響はないはず。人気のわりに実力があり、条件も悪くないだけに、一考の価値はありそうだ。

その他の能力値上位馬

次いでサトノダムゼル、ジナンボー、アールスターが揃って能力値4位。その中でもっとも注目すべきは、昨年のこのレースの2着馬ジナンボーだろう。昨年は先行して、後のGⅠでも活躍した勝ち馬ユーキャンスマイルにしぶとく食らいついてのクビ差。今年は昨年のよりも相手がやや弱化しているだけに、その時の指数「-22」で走れれば勝ち負けに持ち込める。

また、ジナンボーは後方からレースを運んだ昨秋のジャパンCが9着、前走の七夕賞でも9着だったのに対して、先行した小倉大賞典は3着、新潟大賞典では4着に好走しているように、前に行って持久力を生かしてこその馬。今回は昨年よりもいくらかでも前が楽になりそうなメンバー構成だが、スタートを決められるかどうかが課題。

前走の七夕賞のように、出遅れたらアウトに近いだけにそこは鞍上次第。騎乗するのが、先週の新潟2歳Sで一頭だけ馬場の悪い最内を走らせるなど、絶賛低迷中のM.デムーロ騎手というのは気になる。現時点では本命候補の一頭だが、M.デムーロ騎手自体が、出遅れ率が高い騎手でもあるので、今週も乗れていないようなら他の人気薄馬を本命にする可能性もある。

その他、サトノダムゼルはこれまで6戦4勝、2着1回で、唯一の大敗は2勝馬の身で秋華賞に挑戦した時だけ。完全には底を見せ切っていないが、前走の佐渡Sは最内枠から最短距離を立ち回っての勝利であり、あまり強調材料がない。また、長期休養明けでPP指数の最高値を記録した後の一戦となるだけに、反動が出る可能性も十分。ここは軽視したい。

さらに前走の小倉記念で初重賞制覇を果たし、タツゴウゲキの再現を狙うアールスターも軽視。小倉記念が行われた小倉1週目は超絶高速馬場で、同馬はハイペースの中団の内々をロスなく立ち回っての優勝。鞍上が上手く乗っての優勝だけに、前走以上の競馬は望みづらい。

今回の伏兵馬、大穴馬は?

大穴候補としては、昨年暮れのサンタクロースSで後の新潟大賞典3着馬プレシャスブルー、そして前記のアールスターを撃破して勝利したインビジブルレイズがお薦め。サンタクロースSではスタート後に躓いて後手を踏んだものの、立て直して中団の外目から向こう上面で位置を押し上げての完勝。その次走のリステッド競走・白富士Sでも上々の指数で完勝。

また休養明けの前々走新潟大賞典も、外々からロスの大きい競馬になったことを考えると、5着でも悪くない。不良馬場だった前走のエプソムCは見せ場のない17着大敗も、立て直されての今回は変わり身が見込める。一昨年のブラストワンピースのように、上手く外目に出せれば面白いだろう。

さらにミスディレクションとエクレアスパークルが競り合って先行馬が総壊滅した昨秋の垂水S(3勝クラス)で、中団の外から直線早め先頭に立ち、2着馬に1馬身半差をつけて勝利したアイスストームもチャンスがありそうだ。同馬が垂水Sで記録した指数は、重賞でも通用するもの。その後の中日新聞杯では3着、メイSでも優勝と走れているように基調の低下はなく、差し馬向きの展開になれば一発がありそう。同馬も不良馬場の前走・エプソムCは大敗いているが、立て直された効果が期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ブラヴァスの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

おすすめ記事