オープン入り請負ジョッキーは?重賞戦線への登竜門 東大HCが「準オープン」を徹底検証

東大ホースメンクラブ

準オープンに役立つデータインフォグラフィックⒸSPAIA

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「オープン入り請負人」の3人

夏競馬ラストウィークとなる今週。土曜は函館新馬を楽々逃げ切ったピンクカメハメハや白毛馬ソダシが出走する札幌2歳S、日曜は前走の未勝利戦を圧勝したモントライゼが初重賞制覇を狙う小倉2歳Sにサマー2000シリーズ最終戦となる新潟記念が予定されている。

そんな最終週の隠れた見どころは3勝クラスのレースが多く設定されていること。1週に5レースもの施行を数えるのは年間を通してもかなりのレアケースだ。今週のコラムテーマは「準オープン」。条件戦の最終関門を突破し重賞戦線へと飛躍を目指す馬たちについて、過去5年の3勝クラス(旧1600万下)のデータを概観しながら分析する(使用するデータは2015年9月5日~2020年8月29日)。

過去5年の3勝クラス 騎手別成績ⒸSPAIA

過去5年の3勝クラス 騎手別成績インフォグラフィック



騎手別成績では回収率の面で推奨できる3人のジョッキーをピックアップ。

まずは単回収率120%を誇る田辺裕信騎手だ。芝・ダートともに複勝率33%台と成績に偏りがなく、単回がともにプラス域。大穴を除いてまんべんなく馬券圏内に好走させており、8番人気以内に限ると【29-20-32-122】複勝率39.9%まで上昇、さらに単回は145%と妙味も増す。3連系の馬券でも十分威力があるが、単系の馬券でこそ狙いたいジョッキーだ。

横山典弘騎手は前走勝ち馬(昇級戦となる馬)の成績がずば抜けてよく、該当馬は【11-3-4-13】勝率35.5%・複勝率58.1%を記録。クラスの壁をいともたやすく突破させており、軽視すると痛い目に遭う。また切れ味自慢の馬に騎乗した際の安定感は天下一品で、前走上がり3位以内の馬では【17-8-12-48】勝率20.0%・複勝率43.5%。単回は227%にまで達している。こちらも「オープン入り請負人」とでも呼びたくなる勝負強さだ。

和田竜二騎手はダートで【12-18-13-97】、複勝率30.7%と真価を発揮するタイプで、単回136%・複回102%は一流の数字。さらに強調できるのは前走も和田竜騎手が騎乗していた場合で、該当するケースでは【5-6-4-20】。フェブラリーSで4着に健闘したワンダーリーデルや8歳にしてリステッド競走のジュライSを勝ったウインユニファイドなどをオープン馬へと導いており、単回は332%と驚異的な数値を叩き出す。

オルフェーヴルの仔が条件戦の階段を駆け上がる

過去5年の3勝クラス 種牡馬別成績ⒸSPAIA

種牡馬別に見ると好走率・回収率ともに優秀な馬はほとんどいないが、その数少ない例外に該当するのがロードカナロア産駒。複勝率3割をキープしながら単回155%と、このクラスでは中心に据えるべき種牡馬だ。

GⅠ級の産駒には長い距離をこなすタイプもいるが、条件戦をコツコツ勝ち上がった産駒たちには父の距離適性が色濃く出ているのか、芝での15勝のうち11勝を1200m~1600mで挙げている。血がもたらすスピード能力が活きる条件で馬券に組み入れたいところ。

ロードカナロアの父であるキングカメハメハも出走数が段違いに多い中で息子と遜色ない連対率をマーク。前走からの距離短縮がいい方向に働くことが多く、特に芝では【11-11-5-63】、複勝率30.0%に達する。

出走数は少ないものの、オルフェーヴル産駒は全体の単回135%もさることながら、実に半数近い出走馬が馬券になるという圧倒的な好走率を誇っている。芝では【6-3-8-15】勝率18.8%・複勝率53.1%・単回244%と特に好調。2勝クラスを突破できた産駒に関しては準オープンの壁を意識する必要はないようだ。

またダート戦では【13-7-2-34】と35.7%の高い連対率を誇るシニスターミニスター産駒に注視しておきたい。

「ゴドルフィン」×「芝の3勝クラス」×「前走と同騎手」がアツい

最後にいくつか気になるデータをチェックしていく。

「昇級組」と「同クラス組」の評価について、昇級組がいきなり好勝負になっているのが1600m戦。芝では単回112%を記録しており、複勝率も33.0%と各距離区分の中で上位の数字を残している。そのうち前走5番人気以内に支持されていた馬は【23-21-13-93】で4割に迫る複勝率を記録し、単回も136%までアップする。

反対に、同クラス組に馬券妙味があるのは1200m戦で、単回は105%と上々の数字。中でも小倉1200mは前走同クラス組が147%と、既存勢力がおいしい馬券を演出してくれる舞台だ。

馬主別で成績がいいのはサンデーレーシングとゴドルフィン。両者とも芝で好走率が高い点が特徴だ。サンデーレーシングは馬齢別成績でこれといった差がなく、3歳馬はもちろん6歳・7歳といった高齢馬でも期待が持てる。

「ゴドルフィン」×「芝の3勝クラス」についてのデータを掘り下げてみると、前走と同騎手を配して臨む場合が【6-4-4-15】複勝率48.3%と優秀で、単回368%はなかなか見られないレベル。今週の出走馬では土曜の小倉メインにエントリーするコンパウンダーがこのデータに該当する。

また「ゴドルフィン」×「芝の3勝クラス」に「中4週以上」のゆとりあるローテで出走、という条件を加えた場合、複勝率3割超&単回169%。こちらもかなり強調できるデータといえるだろう。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」でも予想を公開中。

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