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【キーンランドC】エイティーンガールが大外一気で快勝 UHB賞組とダイアトニック、明暗をわけたものとは

2020/08/31 12:07
勝木淳
キーンランドC結果インフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

勝ち時計1分10秒6が物語るもの

スプリンターズSへの優先出走権がかかるGⅠへのステップレース、キーンランドCは1人気ダイアトニックが15着敗退。原因はまちがいなく馬場だった。

過去10年キーンランドCはサマースプリントシリーズ転戦組、それも好走組が強く、アイビスSD、函館SS上位組の取捨選択が焦点となるわけだが、今年は過去に好走例が少ないUHB賞組が1、2着。前走重賞組は、サマーマイルシリーズから転戦してきたディメンシオンの3着のみ。アイビスSD、函館SS好走馬は掲示板にすら載れなかった。

いやはや競馬のデータは裏切りが多いとデータ派の嘆き声が聞こえてきそうだが、それは20%に満たないものが多く、確率30%なんてデータを見つけたら小躍りしたくなるような世界。天気予報における降水確率20%と聞けば、ほぼ降らないと判断される、その程度の世界観でしかないことを痛感。やはりデータに自身の感性をいかに乗せるかが大切で、キーンランドCでいえば終日降り続く雨によって朝から重馬場発表だったことを組み合わせなければいけなかった。

新潟開幕週、函館2週目に施行された両重賞ともにスピードが問われ、重馬場のキーンランドCに当てはまらないと気づく感性がほしかった。やや長くなった自戒はこのぐらいにして、当日の舞台設定(9R小樽特別1勝クラスの勝ち時計は1分11秒2、前半600m34秒4の乱ペースから差し決着)を重視すれば、勝ち時計が1分8秒台後半でないと好走できないライトオンキューの勝ち負けには行きついただろう。

同馬は終始枠なりから大外を追走、痛んだ内側を一歩も通らず、4角は馬なりで6頭分ぐらい外を回った。作戦としてはこれが正解で、手ごたえのよさも時計的に自身の得意ゾーンにあったことを表している。ただ人気だっただけに積極的に前を捕らえに行かなければならず、エイティーンガールの目標になってしまった。絶好の勝てる舞台設定で落としてしまったのは痛い。今後はわからないが、成績が安定しはじめ充実期を迎えているようなのでスプリンターズSも舞台設定次第で浮上しそうだ。

勝ったエイティーンガールは前走のUHB賞では意図的に前で競馬をし、揉まれこんだ経験が活きた。研究熱心な坂井瑠星騎手は前走を経て意図的に下げる競馬を選択、それが見事に的中した。馬自身もファイナルS1着は1分9秒5、シルクロードS2着は1分9秒0、好走ゾーンはライトオンキューと似ており、ライトオンキューに注目すればその先に見えてくる存在だった。このタイトルで戦法は明確に定まったので、今後はもっと付き合いやすくなるであろう。

負けすぎたダイアトニックは見限り厳禁

明暗をわけたダイアトニックだが、こちらの敗因は馬場と枠順だった。スタート直後から武豊騎手は終始馬場状態が悪い内側を避け、なんとか外に持ち出そうと苦心したものの、イベリスに弾かれ、そこを脱出した途端にダイメイフジに押し込められる形になり、ライトオンキューやエイティーンガールが通った進路にたどり着く前に馬が揉まれ、悪路を走ったことで嫌気が差したのではなかろうか。

マイルCS10着以外は崩れたことがない堅実派が15着。これはいくらなんでも負けすぎで、やや重ぐらいまでの時計勝負であれば巻き返す余地は大いにある。結果は掲示板を12番より外が独占した、いわゆる外枠祭りとなったわけだが、それを踏まえれば6着ビリーバーは4番枠から終始悪いインコースを通り、外を回った上位組に対して最短距離を通り差を詰めにかかっていた。

抜け出すまでの脚はなかったものの、つねに人気以上に走るタイプで今年に入って3勝クラス、オープンと1秒以内の競馬を繰り返しており、穴駆けの可能性は十分にあるので追いかけたいところだ。

キーンランドC結果インフォグラフィックⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。