【札幌記念】差しが届く馬場もCコース変わりで内ラチ沿い有利 昨年より手薄なメンバーならGⅠ馬の復活に期待

ⒸSPAIA
良馬場でも勝ちタイム2:00.1
毎年GⅠ級の馬が集まり、北海道の競馬ファンにとって特別なレースでもある札幌記念(GⅡ・芝2000m)。今年はフルゲートにはならないものの、大阪杯などGⅠ3勝のラッキーライラック、昨年のヴィクトリアマイルの勝ち馬ノームコアなどGⅠ馬3頭が顔を揃えた。
馬場傾向の観点からレースを分析するにあたり、過去10年のレース結果からどのようなキャラクターの馬が好走しているのか見ていこう。

函館競馬場での開催となった2013年を除くと、9年中7回が良馬場で行われている。2012年にフミノイマージンが1:58.7というタイムで勝利しているが、2011年と2017年は2:00.4、2019年は2:00.1と良馬場ながら遅いタイムでの決着になることも多い。
上がりも35秒以上かかることも多く、洋芝への適性が求められる。脚質面では馬券圏内に好走した27頭中のうち66.7%にあたる18頭が差し・追込脚質と差し有利の傾向が見られる。
3着内馬の46.7%が差し脚質
続いて、先週末の8月15日(土)と16日(日)に札幌競馬場の芝1800m以上の距離で争われた7レースの結果から馬場傾向を分析していく。

土曜日は天候が回復したものの、前日までに降った雨の影響が残り、稍重でのレースが続いたが、1800mのコスモス賞(2歳オープン)は1:50.0、上がり35.2でウインアグライアが勝利。タイム面からは馬場が悪化している印象は受けなかった。
また、良馬場に回復した日曜日に行われた2000mの藻岩山特別(2勝クラス)は2:01.9、勝ち馬シャフトオブライトが使った上がりは35.6と平均的なタイムの決着だった。

馬券圏内に好走した馬たちの通過順位を見ると、1着馬は全て4角3番手以内という結果だった。一見すると先行馬断然有利に見えるが、8頭立て以下のレースが4レースもあったので、それらを考慮すると実際は逃げ・先行馬が4勝、差し馬が3勝という内訳だったと言える。
3着以内に入った馬まで対象を広げると、差し脚質だった馬は47.6%、4角で前を射程圏に入れられるポジションにつけている必要はあるが、差しも届く馬場傾向にあったと分析できる。

差し馬が47.6%いたということは、ある程度外を回っても大丈夫なのかと思い、直線で内から何頭目のコースを走ったかについても調べてみたところ、想像とは少し違う結果が見えてきた。
先述したように少頭数のレースが多かったことも影響してなのか、馬券に絡んだ21頭全てが内から4頭目以内を通っており、61.9%にあたる13頭が最内または内から2頭目だった。
先週まではAコースが使用されていたが、今週からは内柵が3m外に移動してCコースとなる。そうしたことも踏まえて「1分59秒後半〜2分0秒前半の決着」「上がりは35秒前半」「差し馬も台頭可能」「内ラチ沿い有利」という条件下で好走できそうな馬を狙いたい。
昨年の札幌記念は0.3秒差の5着
ここからは注目馬の適性について詳しく見ていく。馬場適性分布図の縦軸は高速馬場を得意とするスピード型か時計の掛かる馬場に強いパワー型かを示す指標、横軸は上がりの速い馬場に強い瞬発力タイプか上がりの掛かる馬場を得意とする持続力タイプのどちらに分類できるかを表している。

【ラッキーライラック】
東京のような超高速馬場での上がり勝負になると分が悪いが、それより少し時計のかかる馬場での上がり決着になれば、エリザベス女王杯や大阪杯のように強さを発揮する。洋芝は初めてとなるが、稍重発表以上にタフな馬場だった前走の宝塚記念より条件が好転し、相手関係も楽になるので、上位に好走するだろう。
【ノームコア】
3歳時には右回り2000mの紫苑Sで勝利しているが、昨年のヴィクトリアマイルをはじめとした左回りの高速馬場での瞬発力勝負となった時のパフォーマンスからも、洋芝で上がりがかかる札幌2000mという条件が向いているとは言えない。能力は上位だが、不安要素の方が大きい。
【アドマイヤジャスタ】
前走の函館記念では15番人気の低評価を覆して勝利し、復活を印象づけた。切れる脚がないので、函館の洋芝とHペースになったことがプラスに作用した。今回は前走より速い上がりを求められるレースになる点が不安材料ではあるが、ペースが流れて上がりがかかれば、チャンスはあるだろう。
【ポンデザール】
札幌芝コースでは3戦3勝とパーフェクトな成績だが、その全てが芝2600mでのもの。加えてエリザベス女王杯、愛知杯、日経賞と重賞では後方からのレースとなり、スピード不足を露呈していることからも厳しいレースになりそうだ。
【トーセンスーリヤ】
2走前の新潟大賞典は1:58.6で勝利しているが、使った上がりは35.0と良馬場の新潟外回りだったにしては遅く、タフな馬場だった。洋芝コースでも[1,4,1,1]と結果を残しており、好位で我慢する競馬ができれば、馬券圏内に好走ができるだけの力は兼ね備えている。
【トーラスジェミニ】
前走の函館記念では前半1000mを58.8というハイペースで逃げ、上位には差し馬が台頭した中で4着に粘った。この内容は評価できるものであり、逃げればしぶといということを再認識させられた。おそらく今回も逃げることは可能なので、粘り込みに期待する。
【ペルシアンナイト】
近2走は結果を残せていないが、時計のかかる馬場だった5走前のマイルCSでは3着、4走前の香港マイルではノームコアとクビ差の5着と内容的には悪くない。昨年の札幌記念は勝ち馬と0.3秒差の5着、今年はそれよりレベルの低いメンバー構成なので、昨年と同じような馬場であれば十分勝負になると考える。
【カウディーリョ】
前走の函館記念では気難しい面を見せることはなかったが、馬群が密集する中でのレースを強いられた。直線では一瞬前が空いたものの、モタモタしている間にアドマイヤジャスタにフタをされたのも影響して7着に終わっている。得意の札幌コースでスムーズなレースができれば、巻き返しがあっても不思議ではない。
▽札幌記念予想▽
◎ペルシアンナイト
○ラッキーライラック
▲トーセンスーリヤ
△トーラスジェミニ
×カウディーリョ
×アドマイヤジャスタ
ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。
