【関屋記念】改修後初の1分33秒台決着!サトノアーサーの勝因は新潟の馬場状態にあり

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1、2着馬が通ったグリーンベルト
新潟が日本一長い直線を持つ競馬場として生まれ変わった01年以来、関屋記念は時計の速い決着が続いてきた。1分33秒台の決着はなく、もっとも遅いタイムは10年レッツゴーキリシマが逃げ切った1分32秒9。前後半800mが48秒2-44秒7の超スローペースだったことが響いた遅い時計だった。
今年はそれを更新、馬場改修以来はじめての33秒台決着、1分33秒1だった。前後半800m46秒3-46秒8、トロワゼトワルが大外枠から平均的なペースで引っ張りながら、後半が前半を下回るという新潟マイルとしては珍しいラップ構成となった。
このコースは前半がある程度のペースで流れても後半の時計は早くなり、全体時計が自然と早くなる。ちょっといつもと違うのはどこなのか。パトロールビデオを見ればわかるが、新潟の向正面から外回り3、4角は全体的にかなり馬場が悪そうだ。馬が走ると埃ではなく、土の塊が飛ぶ場面が多かった。
先週の不良馬場での競馬の影響にくわえ、最終的に良馬場になったとはいえ、この日は前夜の雨によってやや重スタート。例年以上に新潟の芝は痛みが早く、それが時計に影響したのではないか。
トロワゼトワルが通ったラチ沿い一頭分はそれでも馬場悪化が進んでおらず、グリーベルトのように見えた。勝ったサトノアーサーもスタートで後手を踏み、17番手追走も3、4角ではトロワゼトワルと同じところを通っていた。荒れ馬場を走りながら外を回った先行勢は最後に止まり、トロワゼトワルが振り切ろうとしたところに追い込んだサトノアーサー。そういった競馬だった。
サトノアーサーは不良馬場のエプソムCは負けたが、昨年は重馬場の同レースを勝った道悪巧者、雨の影響が残り、適度に荒れた馬場は願ってもない条件だった。戸崎圭太騎手らしく前半は馬任せに走らせ、ラチ沿いのきれいな部分を通りロスを抑えた結果、最後の直線では先行勢の加速にもついていき、進路ができる瞬間を待つ余裕もあった。プロディガルサンの外にスペースができると一気に末脚を発揮した。
逃げ馬に味方し、差し馬に利があった流れ
2着トロワゼトワルは中京記念でハイペースを誘発した逃げ馬だが、今回はいつものように前半はラップを落とさないマイペースな走り、後続の仕掛けが遅れる新潟外回りを味方につけ、直線に向いて残り600mから11秒3-11秒6とスパート、先行勢を振り切った。
残り600~200mのラップが逆であれば先行勢も残り目はあったが、先にペースをあげられては追い上げる組には辛かった。瞬時のギアチェンジができないといくら時計がかかるとはいえ新潟の芝では厳しい。逃げ馬に味方し、差し馬に有利なラップであったことを考慮すると、4角2番手から残り100mまで食らいついたミラアイトーンは強い競馬をしたといえる。
3着アンドラステは道中ラチ沿いの馬場のいいところを通り、最後まで差を詰めた。競馬の形としては悪くなかったが、進路もきれいに開けたことなどを考えると、ちょっと物足りない。これまでマイル戦では3着以下なしの【3-0-1-0】ではあるもののベストは1800mあたりの道中でひとためするような競馬ではなかろうか。
パトロールでは3、4角から最後の直線にかけてバランスを崩す馬が何頭か見られ、やはり思った以上に新潟の芝は痛んでいる。これは来週以降の馬券検討において頭に入れておきたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
