【関屋記念】再びの雨で外差しが決まる馬場を期待 本命は「新潟外回り+道悪」を味方にできるグルーヴィット

三木俊幸

関屋記念馬場適性分布図ⒸSPAIA

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今年は過去10年のデータが役に立たない?

659mと日本一長い直線を使って、激しい攻防が繰り広げられるサマーマイルシリーズの第3戦、関屋記念(GⅢ・芝1600m)。過去10年中5回は3番人気以内の馬が勝利しているが、4〜6番人気の馬が毎年3着以内に入っており、馬券的には少し難しい印象もある。

そんなレースについて、今週も馬場適性の観点から分析・予想を行っていくにあたり、まずは過去10年の傾向から振り返っていこう。

過去10年の関屋記念の結果

過去10年はいずれも良馬場で行われ、勝ちタイムは1:31.5〜1:32.9と高速決着となっている。また3着以内に入った馬の26.7%が32秒台の上がりを使っており、33秒台の上がりを使った馬まで対象を広げると、その数は80.0%に及ぶ。多くの人が持っているイメージの通り、瞬発力が必要なレース傾向にあると言える。

脚質を見ると、直線が長いコース形態にも関わらず、逃げ・先行馬が6勝と半数以上を占めていたのは意外だった。しかし3着以内というデータでは逃げ・先行馬が46.7%、差し・追込馬が53.3%とほぼ互角となっている。

1着馬の75%が内から3〜5頭目を通る

しかし、今週末も再び雨予報。雨量が多くなって馬場が悪化した場合に参考になりそうなのが先週末の8月8日(土)と9日(日)に行われたレースの結果だ。途中、雨が止んだ時間もあったが、激しく降る時間も多く、最終的には不良まで悪化した。

そこで今回と同じ、外回りコースを使用した8レースの結果から、馬場傾向について分析する。

8月8日、9日の新潟芝外回りの勝ちタイムと上がり

日曜日の3Rに行われた1600mの3歳未勝利戦で1:36.0、勝利したブラインドデートが34.7、3番手追走から2着となったジャストポケットが35.8という上がりを使っていた。また10Rの2000mの信濃川特別では1着ターキッシュパレスの上がりは36.6と掛かっていたものの、2:01.8というタイムは不良という発表ほど悪くないものであった。

新潟芝外回りの通過順位

続いて脚質について見てみると、8レース中7レースで4角5番手以内だった馬が勝利。馬券圏内に好走した24頭にまで対象を広げても半数の12頭が4角5番手以内だった。しかし不良でのレースとなった日曜日は、道中後方を追走していた馬の好走もあり、馬場悪化の影響があった。

新潟芝外回りの直線で通ったコース

最後に、直線の長い外回りコースでは馬群が横に広がることが多いため、道悪馬場の中で各馬が内ラチ沿いから何頭目のコースを通って伸びてきたのかということについても調べてみた。

なお、日曜日の6Rに行われた2歳新馬は、内ラチ沿い1頭分を空けて走っていたので+1、10Rの信濃川特別は内から2頭分のスペースを空けていたので+2を補正値として加えている。

その結果、勝ち馬の75.0%が内から3〜5頭目を通っており、ロスの少ないレースをしていた。映像では、雨の影響で馬場の内側が荒れ始めているように見えたものの、実際には見た目ほど悪くなっていなかったのだろう。

だが、通過順位のところでも触れたように日曜日のレースで2、3着に入った差し馬は内から8頭目が2頭、内から10頭目が1頭とかなり外を回って伸びてきていた。

今週も再び雨が降って馬場が荒れることを踏まえると、雨量次第で先週の日曜日と同様に外を通っても馬券圏内に好走できる馬が増えてくるのではないかと考える。先行馬を軽視するところまでは行かないが、道悪適性の高い差し馬がいれば狙ってみたい。

左回り・道悪の重賞では[1,0,1,1]のグルーヴィット

ここからは注目馬の適性について詳しく見ていく。馬場適性分布図の縦軸は高速馬場を得意とするスピード型か時計の掛かる馬場に強いパワー型かを示す指標、横軸は上がりの速い馬場に強い瞬発力タイプか上がりの掛かる馬場を得意とする持続力タイプのどちらに分類できるかを表している。

関屋記念馬場適性分布図ⒸSPAIA

また各馬の配置は、ベストパフォーマンスを発揮できる舞台設定を表したものであり、今回に関しては道悪適性も考慮している。

【プリモシーン】
一昨年の関屋記念の勝ち馬で、昨年のヴィクトリアマイルでも2着となっているように高速決着で差しが決まる舞台に強い。6走前の中京記念では、稍重という発表以上にタフな馬場で実質トップハンデの55.5kgを背負って3着となっているので、道悪が全くダメではないものの、あまり強気には推せない。

【サトノアーサー】
33秒台の上がりでは切れ負けするので、程よく上がりが掛かる馬場を得意としている。道悪でも好走実績はあるが、飛びが大きいタイプなので、前走のような不良馬場になってしまうと厳しそう。レース当日の馬場状態を見極めてから取捨選択したい。

【クリノガウディー】
稍重ながらタフな馬場だった昨年の中京記念で2着、2走前の高松宮記念では4着に降着となったが1位で入線するなど、道悪適性は高い。前走のCBC賞はハンデ58kg、加えて前残りの馬場で直線で進路が狭くなる場面もあった。実績あるマイル戦と道悪適性の高さからも、巻き返しに期待したい。

【グルーヴィット】
この馬が昨年の中京記念の1着馬。2走前の高松宮記念は直線で外にいたシヴァージと何度も馬体がぶつかりながらも、怯むことなく上がり33.2を使って勝ち馬と0.3秒差であれば評価できる。前走は先行したが、差す競馬でも結果を残している。昨年のNHKマイルCや京成杯オータムHのように良馬場の高速馬場では厳しいが、道悪の新潟・外回りという舞台であれば適性は高い。

【アンドラステ】
前走のエプソムCは4着と初めて馬券圏外に敗れたが、能力は重賞でも通用することを証明した。マイル戦の持ちタイムは1:33.4と高速決着になった時の不安もあるが、今回も道悪になりそうなので押さえておきたい。

【アストラエンブレム】
新潟芝1600mは3戦3勝とパーフェクトな成績。道悪も[0,3,1,2]と勝ちこそないものの、こなしている。持ちタイムが1:33.1(4着)なので、過去10年のような高速馬場に対応できるかという心配はあったが、雨予報なのでその心配はいらないだろう。脚質に自在性がある点も好感が持てる。

【エントシャイデン】
5走前の六甲Sで久々に3着となり、復活の兆しを見せる。4走前の谷川岳Sからは、リラックス効果を与えるとも言われているコンプレッションフードを装着したことでゲートの駐立が安定。京王杯SC以外は全て馬券圏内に好走している。不良まで悪化すると厳しいかもしれないが、少し時計が掛かる馬場が合っているので、多少の雨であればマイナスにはならないだろう。

▽関屋記念予想▽
◎グルーヴィット
○クリノガウディー
▲アストラエンブレム
△アンドラステ
×サトノアーサー
☆エントシャイデン

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬だけでなく、国内外の競馬場で取材活動を行っている。

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