【アイビスSD】久々の芝でも勝機あり 快速牝馬が「千直」巧者をねじ伏せる

東大ホースメンクラブ

2020年アイビスサマーダッシュインフォグラフィック

ⒸSPAIA

極限のスピード勝負

7月26日(日)に新潟競馬場で行われるアイビスサマーダッシュ(GⅢ・直線芝1000m)。夏の新潟開催の幕開けを告げる伝統の一戦に、今年も快速馬18頭が顔をそろえた。昨年の覇者であり、現役屈指の「千直」巧者と謳われるライオンボスが人気の中心と目される一方で、前走のCBC賞で鮮やかに復活を遂げたラブカンプーにも注目が集まるが、栄冠を手にするのはどの馬か。今週もデータを踏まえて検討していこう。

はじめに、当該レースにおける過去10年の傾向を分析する。

過去10年のアイビスサマーダッシュ 1〜3着馬の2F目の通過順位



じっくり脚を溜める間もなくゴールを迎える電撃の5F戦という印象を裏切ることなく、連対馬した馬のうち4分の3は残り3Fの地点で3番手以内の位置につけていた。例外としては2017年に「千直マスター」西田雄一郎騎手に導かれ、後方一気を決めたラインミーティアなどもいるが、やはり「スタートの上手さ」と「行き脚の良さ」が基本的な評価軸だ。

逃げ馬有利という点について言えば、前走1000~1200m戦で逃げていた馬は【5-4-1-13】で複勝回収率97%を記録している。当然人気になりやすいわけだが、2018年ナインテイルズ(8番人気3着)や2010年ケイティラブ(8番人気1着)などの伏兵の台頭例もあるため、人気を落としている該当馬には注意を払いたい。

8枠は問答無用で「買い」

続いて、過去3年の枠番別成績を見てみよう。

過去3年の新潟芝1000m枠番別成績



「千直は馬場の良い外枠」というのはかなり人口に膾炙した格言であるが、実際にデータを見ても8枠の成績は圧巻の一言。勝率・連対率・複勝率の全項目で他を凌駕しており、単複の回収率も100%超。8枠は問答無用で「買い」だ。一方で1枠、2枠の苦戦も際立っており、内枠を引いてしまった馬は大幅に評価を下げたい。

開幕週ということで本来であれば時計の出やすい軽い馬場が想定されるが、執筆時点では日曜は降雨が予想されている。今年は例年に比べても湿気の多い日が続いており、渋った馬場への対応も一つカギとなりそうだ。過去の実績を踏まえつつ、先行力とパワーを兼ね備えた馬から馬券を組み立てたい。

千直の舞台なら久々の芝でも

本命には、約2年ぶりの芝のレースとなるゴールドクイーンを推奨したい。3歳時には逃げて葵Sを制した実績もあるこの馬。それ以来芝では勝利を挙げることができず、最近はダートを主戦場としてきたが、スピードを存分に活かせる千直の舞台なら久々の芝でも期待は持てるだろう。前走、さきたま杯の8着はスタートで大きく躓いて全く自分の競馬ができなかったもので、能力自体は今回のメンバーでも劣っていない。流れに乗って先行できれば勝機もあるだろう。

人気が予想されるライオンボスは対抗とする。何といってもこのコースでは連を外したことがない現役屈指の千直巧者。前走の韋駄天Sは2着馬にアタマ差まで迫られたが、一頭だけ57.5kgを背負っていたことを踏まえれば貫録の内容と言ってよい。そうしたことからも、今回の別定57kgという条件は恵まれたものだろう。連覇がかかる立場だが、好条件がそろっているので、これ以上低い評価にはできない。

3番手評価はダイメイプリンセス。一昨年の本レース、昨年の北九州記念を制しており、実績ではこの馬が頭ひとつ抜けている印象。冬場と比べて夏場のパフォーマンスが高い典型的な「夏馬」であり、前走3着からの良化は十分に見込める。実績と適性の両方を考えれば、当然軽視することはできない。

4番手が韋駄天S2着のジョーカナチャン。OPクラス初戦となった昨秋のルミエールオータムダッシュでは10着に大敗したものの、着実に力をつけてきた印象。ハンデ差こそあったがライオンボスに食い下がってのアタマ差2着は実力の証明だろう。今回もハナ候補の一頭であるし、確実に押さえておきたい。

その他、昨秋にライオンボスを下した経験のあるレジーナフォルテ、さらには韋駄天Sで上がり最速を記録したナランフレグ、コース経験と穴での好走例が豊富なミキノドラマーも大外枠をゲットしただけに侮れない。これらに加え、外枠勢を中心にアユツリオヤジ、モンペルデュ、クールティアラまで押さえておくことにする。CBC賞で復活を遂げたラブカンプーは、やはり斤量56kgがネック。前走はうまくハマりすぎた感もあるし、今回は不利な1枠を引いたことも踏まえて「消し」としたい。

▽アイビスSD予想▽
◎ゴールドクイーン
○ライオンボス
▲ダイメイプリンセス
△ジョーカナチャン
×レジーナフォルテ
×ナランフレグ
×ミキノドラマー
×アユツリオヤジ
×モンペルデュ
×クールティアラ

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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