【中京記念】ポイントはミッキーブリランテ 大波乱の中京記念を振り返る

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馬場の回復時期が短い阪神
17頭立て以上のレースで最低人気馬が重賞を制したのは、89年エリザベス女王杯サンドピアリス以来2頭目。最近では16頭立ての最低人気コパノリッキーが勝った14年フェブラリーSが記憶に新しいところながら、滅多にあることではない。
18頭立て18人気のメイケイダイハードが勝利した中京記念、的中した人には賞賛しかないが、ほとんどの人が外したレースだけに自身の反省と慰めとともに回顧する。
出走馬でこの1年間で重賞を勝った馬はトロワゼトワル1頭(19年9月京成杯AH)。1人気は前走NHKマイルC3着の3歳ギルデッドミラー。過去10年阪神芝1600m、3勝クラス~GⅢまでのハンデ戦を調べると、3歳は【0-0-0-5】。昨年の中京記念は3歳馬がワンツーだったが中京競馬場での記録。阪神での記録を調べると3歳はデータ上で厳しかった。中京記念は1人気が3歳馬だったところから波乱の臭いがあった。それを嗅ぎつけられなかったことを反省したい。
阪神の芝コースも梅雨時の連続開催で想像以上に痛んだ。当日こそ良馬場だったが、すでにインコースは芝がはげており、ひと昔前の芝コースのように土ぼこりが舞う状態。例年、真冬と夏、晩秋が休みになる阪神、夏場以外は芝の育成が進まない季節とあってその維持が難しいとされる阪神の芝は雨が多い梅雨の影響を大きく受けた。
この日の芝のレースは、勝ち馬の父がスクリーンヒーロー、オルフェーヴル、ワールドエース、ワークフォース、ディープブリランテ。ディープインパクト産駒は2、3着が多く、サンデー系でもパワー型、道悪でよさが出るような血統ばかり。良馬場でも上がり時計がかなりかかる馬場だった。
ミッキーブリランテに合わせた伏兵陣
内枠から先手を奪ったトロワゼトワルはリバティハイツのマークもあり、自身のストロングポイントである緩めない逃げを展開。前半800m45秒8-後半800m46秒9。馬群は縦長にならず、先行集団の大きな塊と後方集団という二つに分かれる形となり、先行勢にとって息を入れにくい流れとなった。
3角手前にあたる600~800mが11秒8、800~1000mが11秒7、わずかながらコーナーでペースが落ちるも、1000~1200mが11秒3。4角手前でペースアップ。これは中団にいたミッキーブリランテが外を強気に動いて3番手まで押し上げた動きによるもの。同馬は直前のレースを勝ったアバルラータと同じディープブリランテ産駒。馬場が合うと判断した福永祐一騎手が馬のよさを発揮しようと早めに動き、直線入り口では馬なりの手ごたえで先頭。押し切りを狙った。
結果的にはこの動きが先行集団には決定的な打撃となった。外からのまくり、早めのペースアップにトロワゼトワル以下は末脚を失った。そして、ミッキーブリランテの動きに合わせた待機組に展開が回ってきた。メイケイダイハードの酒井学騎手はミッキーブリランテを見ながら競馬ができたとコメント。同馬は道中ではミッキーブリランテの背後に潜み、その仕掛けからひと呼吸遅らせて動いた。
ミッキーブリランテは自身のよさを発揮、強い競馬をしたものの、かっこうの目標となってしまった。メイケイダイハードの流れに応じた競馬は人気薄の気楽さゆえではあるが、臨機応変な競馬でエスコートした酒井学騎手はマーメイドS(サマーセント)に続く重賞制覇。やはりハンデ重賞では目を離せない。
2着ラセットはさらに後ろでメイケイダイハードを目標に動き、その外に併せにいったが、ゴール前で右ステッキに過剰に反応。最後までまっすぐ走れなかったことが痛かった。
3着エントシャイデンは1、2着馬とは対照的に外枠から最後はインを突いてきた。直線で狭くなるシーンがあり、わずかに踏み遅れたのはもったいなかったが、馬場の悪い部分を通って伸びてきた点は評価したい。馬場状態次第ではまだまだ儲ける機会はありそうだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
