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【函館2歳S】前走函館芝1200【9-8-6-55】は罠だった 10人気リンゴアメが激走したレースを振り返る

2020/07/20 06:00
SPAIA編集部
2020年函館2歳S結果インフォグラフィック

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前走函館芝1200【9-8-6-55】という罠

データから競馬予想をはじき出すというサイトだからこそ指摘するが、傾向とは見つけたときにウラが出るもの。“来た、来た、来た、来ない”、この来ないにいつ張るのか、ウラのつきどころ、タイミングの読みこそ博才というもの。ギャンブルはそのウラつきが決まったときに快感を得られるものだが、それは翻せばデータや傾向が外れることになるわけだ。

函館2歳Sは傾向が明瞭だった。過去10年間で前走が函館芝1200mだった馬は【9-8-6-55】。10回中9回は函館芝1200mだった馬が勝ち、2着は8回、3着は6回もあった。まず函館芝1200mを狙え!は鉄則というもの。新馬は函館芝1200m、2歳レコード勝ち、後続に0秒9差の逃げ切り、派手な初陣、鉄則の函館芝1200mとあってモンファボリに疑う要素は皆無に等しい。終わってみればなんとやらだが、13着大敗を事前に予想できた人は少なかろう。

その少数派、ひとまず博才ありと称えたい。たとえそこを読めたとして、ほかに狙いをつけるときに前走函館芝1200m【9-8-6-55】を無視できた人はどれほどいるのだろう。結果は前走が函館芝1000m(過去10年【1-0-1-13】)だったリンゴアメが勝ち、2着は前走函館ダート1000m(過去10年【0-0-0-14】)のルーチェドーロ。

傾向からは非常に厳しい枠連7-7決着だった。リンゴアメは傾向から嫌われた10人気だが、ルーチェドーロは4人気。ファンの嗅覚は鋭い。データは頼りになる指標ではあるが、己のギャンブラーとしての嗅覚、第六感的なものをさらに磨きたいものだ。

好走馬たちの可能性

レースは前半600m33秒5―後半600m36秒3の前傾ラップだったが、モンファボリは新馬で自ら33秒7を刻み逃げ切っただけに自身のスピードが通用しなかったわけではなく、前半から抑える競馬を試みた結果だった。2ハロン目から10秒5-11秒1というラップで前に壁が作れず、馬が頭をあげて嫌がるような素振りをみせ、鞍上とケンカしてしまった。これが悪いというより、つねに全速で走らせるのではなく将来を考えての戦略。こんな作戦に出るのではと読みたいところだった。まだまだキャリアは2戦目、見限るのは早かろう。

前傾ラップでバテない強みを生かせたのがリンゴアメとルーチェドーロだった。前者はスタートでもたつきながらも外枠の馬の動きに合わせてリカバー、外の4番手で負荷なく流れに乗った。コーナリングも含めレース中はかなり若さをのぞかせており、完成度の高さで勝ったわけではなく、将来性も十分ある。早熟ではなさそうだ。

2着ルーチェドーロは道中では逃げたフォドラの直後、4角でフォドラより早く鞍上の手が激しく動きながらもそれをきっちり捕らえた。コーナリングも手ごたえも明らかに小回り向きでも1200m向きでもなさそうだ。同馬の父、新種牡馬マクフィは地方も含めダートの短距離で結果を出しているが、自身は英国2000ギニー、ジャック・ル・マロワ賞を勝ったマイラータイプ、短距離オンリーではないだろう。

3着ラヴケリーは際どい争いを制して3着。前走が函館芝1200m出走馬だが、逃げた前走に対して今回は後方に置かれる形。馬群を縫って最後までよく差を詰めた。福島での落馬事故で心配した団野大成騎手だが、その勢いいまだ変わらず。この夏、追いかけたい若手ジョッキーだ。馬は産駒デビュー2年目のカレンブラックヒルの血だけにこちらも短距離で終わる馬ではない。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『 築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。 YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

2020年函館2歳S位置取りインフォグラフィック

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