【プロキオンS】サンライズノヴァ覚醒!キーワードは「久々の阪神開催」

勝木淳

2020年プロキオンS位置取りⒸSPAIA

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勝負を決した4角射程圏

そもそも夏に施行されるレースになぜ冬の大三角のひとつプロキオンなのか。96年ダート路線整備の一環で誕生したプロキオンSは距離1400mこそ変わらないが、施行時期が現在とは大きく異なる。

当時は2回阪神4週目、春開催の掉尾を飾っていた。00年に3回阪神に移行、その後7月施行になり、12年第17回から中京競馬場に舞台を移した。阪神施行のダートオープン競走は冬の大三角をつかさどるシリウス、ベデルギウス、プロキオンの名がつけられているが、寒い時期に南東の空を彩る冬の大三角が夏施行のレース名になっているのはその変遷にあった。

今年は京都改修に伴う日程変更によって舞台は中京から阪神に変更されたが、歴史的には久々に阪神に帰ってきたといっていい。

勝ったサンライズノヴァが最後に阪神を走ったのは17年若葉S、それは芝のレースであり、ダートとなると2歳12月の樅の木賞3着(1着サンライズソア、2着シロニイ)以来、こちらもプロキオンS同様に久々の阪神だった。左回り専門、59キロから5番人気と人気を落としたのは無理もない。

最後の右回り出走は17年師走S、2年半以上左回りのみでコーナリングなど不安視された。内枠から一旦下げるのはいつもの通り。とにかく気難しい馬で揉まれればアウト、ばらける後方から終い一気が常套手段。この日も松若風馬騎手がその特徴を踏まえ、道中は後方の外、不安だった3、4角のコーナリングでスムーズに前へ押し上げ、先行集団を射程圏に入れて直線を迎えた時点で勝負はあった。

ラプタスが作るペースは前半600m34秒3で重賞としてはやや遅いぐらい。4角でラプタス、トップウイナーの外に早めに並んだ実績馬ヤマニンアンプリメが3着に残る展開は前優位。サンライズノヴァがコーナーでの押し上げに苦労するようであれば勝てなかった。まだまだ隠し持った能力を秘めていた。

斤量59キロは武蔵野S5着とさすがに苦しいのではとみられたが、あの3、4角の押し上げをみれば無駄な心配だった。ダートの一流馬はこの程度の斤量ではへこたれない。サンライズノヴァも3歳ユニコーンS制覇から4歳武蔵野S、5歳南部杯とオープン特別を使いながら地道に力をつけ、59キロ克服はダート馬として完成の域に達した証明だろう。

東京専門というキャラもこれで脱出、1600m以下のダート戦線をまだまだ引っ張る存在だ。

次走以降に期待したい、ラプタス

2着エアスピネルは初ダートで一発回答の形。芝重賞3勝、マイルチャンピオンシップ2着の実績馬が歴戦の疲れから1年も休養してのダート戦出走はハードルが高いミッションだったが、これをクリアしたとなると可能性が広がる。

ただし道中は外を追走するヤマニンアンプリメの後ろという理想的な位置、まず下がってこない実績馬、ペース感覚に秀でた武豊騎手の後ろにいれば仕掛けは正確であり、下がってこないので過度に砂をかけられることもない。出来すぎな予感もあるので、次走以降も慎重に検討したいところ。

見直したいのは7着に敗れたラプタス。1400mの地方交流重賞を連勝、初のJRAダート重賞もスタートからハナを奪い、スピードで負けなかった。さすがにトップウイナーやヤマニンアンプリメら直後に控えた組に楽をさせてもらえず、たえずプレッシャーをかけられる形になり、4角で早めに来られて自分のペースでスパートする機会を失ってしまった。

この経験を糧に好位組の押し上げに対して突っ張って抵抗するような強さを身につけたいところ。まだまだキャリアはたった11戦、悲観することはなにもない。

2020年プロキオンS位置取りⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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