【ラジオNIKKEI賞】お見事ロングショット!それを引き出した発馬後の攻防とは

勝木淳

2020年ラジオNIKKEI賞インフォグラフィックⒸSPAIA

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発馬後直後の攻防

2020年ラジオNIKKEI賞インフォグラフィックⒸSPAIA


2020年ラジオNIKKEI賞はトップハンデ54キロ。例年出走がある春の重賞出走組がコンドゥクシオン1頭のみ。同馬は青葉賞12着で54キロ止まり。1勝クラス勝ち直後の馬が9頭と大半を占める組み合わせ、やや小粒と言わざるを得ない。

バビットは当日落馬負傷の団野大成騎手から内田博幸騎手への乗り替わりで勝利。若手からベテランへのスイッチ。レース後に団野騎手を思いやり、励ます言葉にベテランらしい優しさを感じた。

その内田騎手は「スタートがいいのに下げる必要はない」と迷わず先手。この判断が結果としてすべてだった。バビットは好発を決めたものの直後に左にヨレて3着ディープキングと接触、瞬時に右手綱を引いて馬を矯正、ラチ沿いをキープさせたことでハナを奪えた。

戦前から逃げて勝った馬が複数出走、前が速い、淀みのない流れが予想されたが、そういうときこそすんなり隊列は決まるもの。ましてキャリアが浅い3歳同士の対戦、逃げた馬が次も逃げるとは限らない。展開を読むのは難しい。

最内枠のバビットが内田騎手の対処によってすんなりハナを主張したことでほかは控え、2角で12秒6とひと息入った。先週はどうにもチグハグな騎乗が多かったレーン騎手のグレイトオーサーが落ち着いた流れを嫌って前に動いたときに突っ張ってラップをあげたにもかかわらず、残り800m11秒9-11秒9-11秒6-12秒3、見事なロングショット。馬場を考慮してもこのラップで5馬身差、スタミナはかなりありそうだ。

控えた先行勢は3角からのペースアップに呼応できた馬のみが上位に残る形となり2着パンサラッサだけが最後まで粘れた。ロングスパートにつぶされた組の間を縫ってきたのが発馬直後にバビットにぶつけられ下がった3着ディープキング。

好発であれば先行していた可能性もあり、災い転じてなんとやらである。外を回った組は4着パラスアテナ、5着ルリアン、6着サクラトゥジュールと伸びきれなかった。コーナーで加速するようなラップでは外を通るのはロスが大きすぎた。

飛躍の秋へ、団野騎手とともに

バビットの父ナカヤマフェスタは今年と同様に道悪の宝塚記念(10年)を8人気1着、同年凱旋門賞は2着、スタミナ寄りの馬場への適性は高い。母父タイキシャトルもまた道悪血統。この先も馬場悪化の際は忘れないでおきたい。

福島2000mで未勝利勝ち、新潟外回り1800mで2勝目、そして福島1800mで重賞と問われる適性が異なる舞台での3連勝は地味ながら高く評価したい。その一方、発馬後のように左へ張るクセがあるようで、ゴール前手綱を緩めるとバビットは外へ流れていった。ゴールドシップなどクセ馬への騎乗が多いベテランだからこそという面もあった。

メンバーがそろう中央場所でどこまで通用するか楽しみである。気が早いが菊花賞が渋馬場になった際は惑星馬として注意が必要だろう。そのとき鞍上にはだれがいるのか。この馬をよく知り、この馬に合う強気な騎乗が信条の団野騎手、ケガの具合が心配だ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

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