【函館スプリントS】これぞユタカマジック!リズム感を取り戻したダイアトニック

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函館と札幌の違いに注目
いち早くサマーシリーズの開幕を告げる北海道競馬。函館と札幌はどちらも寒冷地であることから洋芝のみで競馬が行われる。洋芝適性は夏競馬攻略のひとつのカギだが、さらに踏み込めば函館と札幌の違いにも注目したい。
札幌はコースに占める曲線部(コーナー)の割合が高く、円形に近い。1200m戦で注目される前半600mは3角中間点ぐらい、コーナーにかかるため速いラップが刻まれにくい。函館は札幌よりやや小さいコースではあるが、形は楕円形。1200m戦でのコーナー割合は札幌より低く、前半600mは3角入口ぐらいで迎える。
自然と速いラップは出やすくなるが、函館は向正面終わりにかけてのぼり坂になっており、スタート直後の先行争いは予想外にキツい。札幌の前半33秒台と函館の前半33秒台、単純な比較は難しいが、そうハイラップが出にくいコースレイアウトであることを考慮すると札幌のハイペースに価値がありそうだ。
2020年サマーシリーズ開幕戦函館スプリントSは前半600m33秒4。荒天に見舞われないこともあり、絶好の馬場状態、それを考慮するとハイラップではなかった。大外枠に入ったダイメイフジが好発を利してやや強引にハナに行き、ラチ沿いを目指したことでハイラップの印象もあるが、記録的にはそうとはいえなかった。
勝ったダイアトニックはスタートを決めた武豊騎手が右手綱を操作し、迷うことなく取りたい位置をとった。外からダイメイフジが来ると待っていたかのようにさっと譲り、自身は背後の番手に収まる。同馬にしてはあまりにスムーズなレースだった。思えば昨秋は大外一気でスワンSを制し、春は不利を与え、降着、不利を受けてブレーキと極端な競馬や不運なシーンが多かった。
そんな戦歴をかき消すようなリズム感ある競馬で勝利したことは大きい。だがこれで1200mの頂点へと考えるのは慎重でありたい。というのも逃げたダイメイフジが2着に残ったように流れは先行優位、理想的すぎる競馬もハイラップとは呼べない流れのなかでものだけにスプリント戦線の超Aランクに入るとできるかどうかわからない。
当然、この一戦でそうした競馬を取得した可能性もあり、今後も武豊騎手とのコンビが継続されるか否かも含めて注視したいところだ。
後方大外から差を詰めたシヴァージ
2着ダイメイフジは、春にダート2戦目の名鉄杯を逃げて圧勝するなどつかみどころが難しい。この日も大外枠から強引にハナまで行ったことが好走要因だったように揉まれない競馬が理想だが、相手次第なところもあり毎回達成できる保証はない。狙いどころは極めて難しい馬だ。
3着はダイアトニックの背後に控え、インコースを意識したジョーマンデリン。先行優位、イン優位な馬場を味方につけた印象がある。不発だった4着フィアーノロマーノ、5着シヴァージ、6着ライトオンキューは見直したい。特に5着シヴァージは流れに乗れず後方から4角はかなり外を回して最後まで脚を使った。4角のロスを考えれば2着以下とは互角の評価もできる。
函館が超高速馬場だった17年ジューヌエコール1分6秒8には及ばないが、勝ち時計1分7秒5は18年セイウンコウセイ1分7秒6と同等。そのセイウンコウセイは高松宮記念勝ち馬で、同レース19年2着もある歴戦のスプリンター。除外馬が複数出た昨年とは異なり、サマーシリーズの起点としては十分評価できるレースだった。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

