【函館スプリントS】ダイアトニック、フィアーノロマーノの評価は?レース分析から見える各馬の「潜在能力」

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「着差以上のパフォーマンス」
サマースプリントシリーズ第1戦「函館スプリントステークス」。例年、適距離に戻ってくる3歳スプリンターが狙いやすい重賞ではあるが、今年は3歳馬の出走がない。となると、古馬の力比較はより重要な判断材料になるだろう。今回はその中でも予想のキーになりそうな3レースを振り返る。
※記事内の個別ラップは筆者が独自に計測したものであり、公式発表の時計ではありません。
【京阪杯】
秋の京都開催最終週で内回りの4コーナーを中心に傷みが激しく、内が伸びないトラックバイアス。さらに快速馬モズスーパーフレアが引っ張る引き締まったラップで、34.2-34.6の前傾0.4秒。芝1200m重賞としては平均ペースに思えるが、前半に上り坂がある京都芝1200mとしてはやや速めで、過去10年の良馬場開催の京阪杯では最も前傾度も高かった。「外&差し有利」のレースとみて間違いない。
勝ち馬ライトオンキューは出遅れ気味のスタートからすぐさまリカバリーして中団のインへ。残り600m過ぎからスムーズに外に出せた点は大きいが、とはいえ4角は5頭分外とかなり距離ロスの大きい競馬。
加えて、比較的影響の少ない1200m戦とはいえ直線逆手前でもあり、0.3秒の着差以上に力差を見せつける勝ちっぷりであった。
「底見せぬ鬼脚!」
【シルクロードS】
この日は馬場の乾燥が激しく、同開催で最も含水率の低い馬場状態。Bコース替わり2日目で傷んだ内側は仮柵でカバーされ、例年なら内先行有利になるはずだが、インコースの好走馬はほとんど見られず。
また、このレースも快速馬モズスーパーフレアが引っ張る展開で、さらに33.9-35.1の前傾1.2秒と京阪杯以上に厳しいラップ。メンバー中上がり3F上位3頭が馬券圏内を独占したことからも分かる通り「外&差し有利」のレースであった。
2着馬エイティーンガールは五分のスタートも二の脚が遅く後方からの競馬。3~4角から勝ち馬アウィルアウェイの後を追う形は理想的だったが、直線は進路が空かずやや待たされる形。
ゴール前の勢いでは勝ち馬に勝っており、上がり3F11.1-11.2-11.2程度の個別ラップからもやや脚を余してのゴールだった。「外&差し有利」の展開から最上位の評価は逃げて4着に粘ったモズスーパーフレアだが、次点の評価は本馬に与えても問題ないだろう。ただ、ハンデ戦の53キロとやや斤量の恩恵を受けていた点は留意しておきたい。
「末脚はG1級!」

【高松宮記念】
前日夜から降った雨の影響で外伸びが目立ったが、徐々に回復を見せて、高松宮記念時には内目も回復傾向に。さらに逃げたモズアスコットでも34.2‐34.5の前傾0.3秒と過去10年で2番目に前傾度の低いペースだったが、2番手以降においては34.7‐34.0の後傾0.7秒という1200mG1としては超スローペースの流れ。先行馬有利とみて間違いない。
そんななか上がり3F11.1-11.1-11.0程度の豪脚で2着まで追い込んだグランアレグリアが次走の安田記念でアーモンドアイやインディチャンプらを抑えて大金星を挙げたわけだが、位置取りの差があるとはいえ、ほぼ同じ個別ラップで追い込んだのが5着馬シヴァージ。ダートでオープン入りしたほどパワーのある馬だけに力のいる馬場は合っていただろうが、それを差し引いてもグランアレグリア以外の上位馬との力差はそう感じない。芝1200m戦では全3戦で上がり3F最速を計時。末脚は一級品だ。
3着馬ダイアトニックはラチ沿いの4番手追走と展開ピッタリの競馬。ただ、直線でクリノガウディーから寄られる不利を受けた点は相当な痛手であり、それが無ければG1タイトルを掴んでいたかもしれない。先行勢では最上位の評価だ。ただ、後方待機勢や道悪を苦にした馬らを含めると、一概に高い評価を与えることはできないか。
本記事で挙げたシヴァージ、ライトオンキュー、エイティーンガールは高評価。ただ、本命はフィアーノロマーノに。阪急杯でダイアトニックを負かせた走りから地力はここでも見劣らず、ともにスプリンターであった両親の仔だけに初の1200m戦は不安よりも期待の方が大きい。穴は豪脚マリアズハート。
◎フィアーノロマーノ
○シヴァージ
▲ライトオンキュー
△エイティーンガール
△マリアズハート
ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者40000人弱)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、走法、ラップなどから目の前のサラブレッドの本質を追求することが趣味。
