【エプソムC】終日続いた騎手の馬場読み合戦!明暗わけたコース取りとは?
勝木淳

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ただひとり、インを狙い続けたレーン騎手

梅雨時にあたるエプソムCは過去10年では良馬場8回、稍重1回、重1回と雨の影響を受けることが少なく、上位人気堅実、伸び盛りの4歳馬8勝と比較的傾向がはっきりしたレースである。過去20年までさかのぼっても不良馬場は00年アメリカンボスのみだった。
土曜日も終日雨が降った東京の芝は連続開催後半ということもあり、悪化の一途をたどった。先行勢がコーナーを大回りし、はっきりとインコースを避ける競馬が印象に残った。インは伸びないという騎手たちの意識は自然と馬券を買う側にも伝わる。
そんななか、日曜日5R新馬戦でダミアン・レーン騎手はみんなが避けるガラ空きのインコースを突いて伸びてきた(結果は2着)。馬群が大回りする状況でインを通ればコーナーで一気に前との差を詰めることができる。ゴールドシップがワープしたといわれた皐月賞を想起させるレースぶりだった。
レーン騎手のイン強襲は8Rでもみられ、ジーナスイートで2着、10R芦ノ湖特別ではついにサトノフウジンでインから抜け出して勝利。おそらく多数の馬が不良まで悪化した馬場の外を通り続けることで、かえってインコースは温存、馬場の傷みが進んでいないのではと考えたのではなかろうか。
そのしたたかな馬場読みは他の騎手たちの意識を替えたのだろう。エプソムCは1番枠から終始インコースにこだわったソーグリッタリングが伸びて2着、大外枠からきっちりラチ沿いをとった逃げ馬トーラスジェミニが3着、勝ったダイワキャグニーは真後ろにつけていた。あれほど外を回っていたにも関わらずメインの重賞では外を回った組は不発に終わったわけだから競馬は不思議である。
甘く見すぎた東京巧者
勝ったダイワキャグニーの9人気はやや甘く見られた印象だ。東京芝1600~2000mで7勝のコース巧者。エプソムC過去10年で4歳8勝というデータもあり、6歳という年齢が嫌われた形だが、昨年5歳シーズンではメイS、オクトーバーSを勝ち、重馬場のジャパンCで先手をとって0秒7差6着、今年は金鯱賞3着と衰えなどなかった。
似た形態ながら求められる適性が異なる新潟大賞典14着が引き金となった人気急落であれば、ダイワキャグニーに謝らねばならない。当日馬体重-16キロは好走時の500キロ前後に絞った陣営の意欲のあらわれであり、サインだった。
例年1分45~46秒台の決着が多いエプソムCで勝ち時計1分47秒7は1秒半~2秒ほど時計を要した記録。であれば前半1000m59秒1は馬場を考えればかなり厳しいペースであり、最低人気のトーラスジェミニ3着は一見すると評価したいところだが、外を回った馬、控えた馬がそろって不発になった状況に恵まれたといえなくもない。3勝クラス勝ちは4人気だったが、2勝クラス勝ちは直前のレース15着から一変し13人気単勝万馬券だったムラ馬。
この好走をきっかけに上位人気に押されるだろう今後は取捨に迷う。2着ソーグリッタリングは昨秋のキャピタルSで東京の不良馬場を経験、デットーリ騎手が乗って1人気4着で道悪の巧拙を疑ってしまったが、オープン入り後は昇級初戦の1秒4負け以外は常に圏内突入を繰り返せす堅実派である。馬場を読み、柔軟に迷わずインを選択した藤井勘一郎騎手の好プレーだった。
敗戦組との付き合い方
最終的な1人気サトノアーサーはこの日馬場読みが冴えていたレーン騎手、馬も2年前に重のエプソムCを勝利と1人気もうなずける状況だった。レーン騎手は予行演習? 通りにインを意識した騎乗をしていたが、最後の直線でどうも馬が外に張り気味、もしかすると馬自身が2年前以上に悪化した馬場を避けていたかもしれない。
それほど悪い馬場だったということで、人気裏切ったピースワンパラディ、レイエンダあたりはこの結果をノーカウントと割り切る必要もありそうだ。今回のダイワキャグニーほど即人気落ちとはならないだろうが、良馬場でも嫌われるようであればかえって狙ってみたい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『
築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。
YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。
