【マーメイドS】レース分析から見える「道悪適性」と「人気馬の弱点」
坂上明大
ⒸSPAIA
「格上挑戦馬のワンツー決着!THE マーメイドS!」
牝馬限定ハンデ戦、阪神芝2000m(内回り)という特異条件2点から適性が重視され、格上挑戦馬が平気で好走してしまうのがマーメイドS。参考レース分析から有力馬の長所と短所を整理する。
【2019年マーメイドS】
前々日に30mmを超える雨が降り、レース当日も良馬場発表ながらも限りなく稍重に近い渋った馬場。内外の渋り具合は雨が上がって時間が経っているためフラットだったが、前日に内目が使われている分、外目の方が状態は良かったよう。ペースは59.8-60.5の前傾0.7秒。牝馬限定戦にしてはかなり厳しい流れで、馬場のタフさと相まって「外差し有利」の競馬となった。上がり3F上位馬が上位を独占したことからもその傾向はよくわかる。
勝ち馬サラスはスタート直後に挟まれたこともあり、最後方からの競馬。3角で外に出して追い出しを開始し、ゴール直前で2着馬を差し切った。荒れ馬場に滅法強いステイゴールド系オルフェーヴル産駒とあって渋った馬場はプラスに働いただろうし、母父Tapitの影響の強いワンペースのストライド走法だけに持続力が活きる展開も合っていた。加えて、51キロの軽ハンデ、外差し有利の展開と馬場も大きな味方に。多くの追い風があったことは否めない。ただ、今年も雨馬場が予想されるだけに、馬場の恩恵は受けられそうだ。
4着馬センテリュオもスタート直後に寄られて後方から。道中はサラスの目の前で運び、直線はスムーズに外へ。ただ、ラストはサラスに置いていかれて4着。伸びそうで伸びないやや勝ち味に遅いタイプで、後方一気で差し切れるような馬ではない。エリザベス女王杯のような好位差しがベストだ。
「後方待機勢はノーチャンス」
【エリザベス女王杯】
連続開催の後半で内目も痛み始めており、外差しも決まるトラックバイアス。ただ、本レースは62.8-58.5の後傾4.3秒の超スローペース。圧倒的先行馬有利の競馬で、前半1000mを通過するころには既に半数以上の馬が勝ち目のないポジション取りとなった。
4着馬センテリュオはスタートは速くなかったが、2角で押し上げて3番手追走。上がり3Fはオークス馬ラブズオンリーユーと同程度。ポジション取りの利は大きいが、パフォーマンスは決して低くない。好位差しの形ならこれくらいやれる素質がある。
レイホーロマンスとミスマンマミーアは後方待機でノーチャンス。レイホーロマンスの位置では上がり3F32秒2、ミスマンマミーアの位置では上がり3F31秒8の末脚を使わないと勝てない計算だから、展開に泣いた面は大きいだろう。特にレイホーロマンスにおいては上がりのかかる競馬に強いタイプでもあり、このような上がり勝負では分が悪い。道悪なら18年中山牝馬S3着(9番人気)や20年愛知杯3着(11番人気)のような激走もあるだろう。
「個別ラップを要チェック!」
【福島牝馬S】
レース当日は外差しが目立ったが、翌日は逃げも内差しも決まっており、馬場差はフラットとみていいだろう。ペースは34.8-36.6-35.4の中弛み気味のラップで逃げ&差し馬有利の形だが、仕掛け遅れの馬が多く、一概に差し馬は展開が恵まれたとするのは危険な一戦だ。
2着馬リープフラウミルヒは追い出し開始が残り400mからで、それは個別ラップから読み取れる。瞬発力勝負では分が悪く、条件戦では勝ち切れない競馬が続いたが、中速持続力勝負なら重賞でも十分やれるところを証明した。
6着馬レッドアネモスは1角で挟まれる不利を受け、4角でもスムーズさを欠く形。直線に入っても外に出すのに苦労し、まともに追えたのはラスト1Fのみ。巻き返し濃厚の1頭だ。ただ、ヴィクトワールピサ産駒の牝馬は道悪を苦手とする馬が多いだけに……。
7着馬フィリアプーラは直線入り口で外に張り気味でやや減速したが、ラスト1Fもリープフラウミルヒやレッドアネモスに劣る時計。高い評価はできない。8着馬リュヌルージュと9着馬マルシュロレーヌは見せ場のない競馬だった。
土曜阪神は一日中強めの雨予報で、日曜のマーメイドSにも多分に影響を与えそうだ。道悪ならレイホーロマンスの激走に期待する。リープフラウミルヒの前走は格上挑戦ながら別定戦54キロでの好走。フロック視は危険だ。前々走好内容、道悪巧者のミスマンマミーアにも注目。
◎レイホーロマンス
○リープフラウミルヒ
▲ミスマンマミーア
ライタープロフィール
坂上明大
元競馬専門紙トラックマン。『YouTubeチャンネル 競馬オタク(チャンネル登録者40000人弱)』主宰。著書『血統のトリセツ』。血統や馬体、走法、ラップなどから目の前のサラブレッドの本質を追求することが趣味。
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