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【平安S】歴戦の猛者たちが見せた1ハロン11秒7の攻防とは

2020/05/25 15:22
勝木淳
2020年平安S位置取りインフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

既成勢力VS新興勢力

ドバイWC中止の影響もあってか、帝王賞の前哨戦である平安SにGⅠ馬オメガパフュームとゴールドドリームがそろって出走した。特にゴールドドリームは、JRAのレースではフェブラリーSとチャンピオンズCに限られ、GⅠ以外のレースへ出走するのは約3年半ぶりだった。

この2強に加え京都で重賞勝ちがあるヴェンジェンス、マーチSでタイトルを獲得したスワーヴアラミスが実績上位組。だが、最終的にそれらを押しのけて1番人気に支持されたのは、ロードレガリスだった。

新興勢力の活躍が目立つ平安Sではあるが、2020年はやはり格が違いすぎた。勝ったのはオメガパフューム、2着ヴェンジェンス、3着ゴールドドリームと既成勢力が新興勢力を跳ねのけたのだ。

スマハマがペースを落として逃げる流れを先行したヴェンジェンスとゴールドドリーム、それをきっちりマークしたオメガパフューム。並びを考えてもオメガパフュームにはこれ以上ない形となった。

4角手前から外に出すと、大外を馬なりでひとマクリして勝負を決めた。スマハマが早めに脱落したこともあったが、残り400~200mは11秒7。ダート戦とは思えないラップに新興勢力らは対応できず、前で流れに乗ったヴェンジェンスもここで脚を使い切った印象だった。

その区間を大外から馬なりで乗り切ったオメガパフュームは、ダート2000m前後では対抗馬が見当たらない。ゴールドドリームもこの11秒7という瞬発的なラップにもたついた。それでもゴールまできっちり走ったのは流石だが、もたついた分、前にいたヴェンジェンスを捕らえられなかった。11秒台などという高速ラップが刻まれない大井ならば、2着にあがる力はあるだろう。

騎手の移動制限がかかり、主戦騎手がそれぞれ乗れない中ではあったが、オメガパフュームの北村友一騎手は、相手をゴールドドリームとヴェンジェンスに見定めての競馬。彼らしい戦略力の高さを示した。

リズムを崩した2頭

心配は昨秋からすっかりリズムを崩したスマハマだろう。名鉄杯で1800m1分47秒6というレコードをたたき出したスピード型だけに、昨秋みやこSで逃げ争いに巻き込まれ、早々に脱落したダメージが残っているかもしれない。どちらかというと精神的なもののようなので、この休養で解消したかと思いきや、後続が動くとまったく抵抗できなかった。

距離を意識したことや、みやこSの大敗などが本来のスピードを殺してしまっているとさえ感じる。ペースを落としても後続の仕掛けが早まるだけのダート戦、本来の後続を置き去りにするような競馬で活路を見出したいところだろう。

同じく10着大敗のロードレガリスも、再転入後4連勝とは明らかにリズムが異なっていた。前半から手応えが悪く、池添騎手が終始手綱を動かし追走に手いっぱい。重賞とはいえ、そこまで厳しい流れではなかっただけに早々に脱落したのは、なにか他に原因がなければいいが……。スマハマ同様に一度リズムを崩すと立ち直るには時間がかかるかもしれない。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』にて記事を執筆。YouTubeチャンネル『ザ・グレート・カツキの競馬大好きチャンネル』にその化身が出演している。

2020年平安S位置取りインフォグラフィックⒸSPAIA